1984年(昭和59年)9月21日にリリースされた大沢誉志幸5枚目のシングル。
大沢誉志幸を代表するヒット曲となった。(1999年以降は大澤誉志幸名義で活動)

作詞:銀色夏生
作曲:大沢誉志幸 
編曲:大村雅朗

同年発売のアルバム『CONFUSION』からの2番目のシングルカット曲。シングル・バージョンとアルバム・バージョンはアレンジが若干異なる。アルバムの曲目掲載では、『そして僕は、途方に暮れる』という、読点が入っているタイトル表記になっている。
大沢によると、元々この曲は『凍てついたラリー』というタイトルで、他の歌手へ提供する目的で作られた。
しかしながら、いずれもこの曲を歌う気配が一向に無く、その度に大沢の元へこの曲が戻され、最終的には『CONFUSION』のレコーディングの際、プロデューサーの木崎賢治に「今空いている曲は無いか」と尋ねられて、この曲を引き出し、銀色夏生の詞と組み合わせて、大沢自身が歌うことになった。

淡々としたリズムとメロディー。最後まで派手な展開もなければ、ゴージャスなアレンジもない。当時流行りの転調を繰り返すドラマティックさや、華やかさもない。そうした煌びやかな曲とは一線を画し、真逆の “セピア色の世界” を描いたこの曲。一見、“地味な曲” ともいえる。

タイトルの妙、歌詞のインパクト、曲の美しさ、大沢のせつない歌声… そのすべてが、理屈を通り越していた。大沢のソウルフルな歌声とかすれた低音ボイスが、歌詞のせつなさをいっそう深くさせる。大沢の歌声は、別れを決めて出て行く女性と、静かに見送る男性の物語の語り部のようでもある。

 見慣れない服を着た
 君が今 出ていった
 髪形を整え
 テーブルの上も そのままに

愛する人が去って行く瞬間だ。「見慣れない服」とは、昨日まで良く知っていた人が突然、見知らぬ他人のようになってしまった事を現しているのだろう。
「テーブルの上もそのままに」も、いつもなら出かける前にはテーブルをきちんと片付けていたのに、今日はもう、そうする必要がなくなったという事。愛する人は、二度と自分のもとに帰って来ない。

今思えば、僕といる事で彼女は悲しんだり傷ついたりしていたのだな。そして今、君が傷つかずにすむ場所を見つけたのなら、そこで安心して生きて行けばいい。
別れとは意外にも突然訪れるもの。それは、自分は別れる気などないから、相手もそうに違いないという思い込みから生まれる。
実は相手は心の中で別れを考えていて、ずっと前から準備をしていた。そしてある日突然別れを切り出す。その結果別れを切り出された方は、まさに寝耳に水。突然の出来事に途方に暮れてしまう。

 君の選んだことだから
 きっと 大丈夫さ
 君が心に決めたことだから
 そして僕は 途方に暮れる

銀色夏生の歌詞の世界を、大沢がエモーショナルなメロディで表現したこの曲は、人が途方に暮れる瞬間を写真のように映し出した、銀色夏生の写真詩集の音楽バージョンと言える作品だ。

#そして僕は途方に暮れる
#浅見れいな