警察署で殺人や強盗などの凶悪事件の捜査にあたるのが刑事一課です。
ことし4月、函館で道警では初めてとなる女性の刑事一課長が誕生しました。
休日もほぼないなど激務とされる役職に就いた女性刑事。
その奮闘と支える家族の姿を追いました。

【幼いころから憧れていた警察官に】。
山口智子警部(47)は、ことし4月に函館中央警察署の刑事一課長に就任しました。
殺人や強盗、放火など凶悪事件の捜査を執り仕切る立場の女性刑事一課長に就任したことについて「身が引き締まる思いで、緊張感があります」と話していました。
山口さんの父親も警察官で、自宅には父の功績をたたえる盾やトロフィーが数多く飾られていたといいます。
幼いころからその姿に憧れていた山口さんは短大を卒業後、父と同じ警察官の道を歩むことになり、最初に配属されたのは小樽警察署でした。
配属直後の平成6年、小樽市内で高齢者が殺害される事件が起きました。
まだ駆け出しで交番勤務だった山口さんも現場付近で犯行に使われた凶器を探すなど捜査に参加しました。
容疑者はまもなく逮捕され、この経験をきっかけに山口さんは刑事を志すようになります。
山口さんは「刑事の人たちがたくさんの証拠を見つけて犯人を逮捕するという流れを間近で見て、刑事はかっこいいと思いました」と当時のことを話していました。
【ようやく刑事に。男性社会のなか奮闘した日々】。
山口さんが刑事になったころ、職場には男性の刑事ばかりで、職場では男性刑事との扱いの差を感じる場面もあったといいます。
そのため、山口さんは男性用のネクタイをあえて着けて負けないよう気を張っていたといいます。
山口さんは「取り調べを担当するのは、やはり男性の刑事の方が多かったので男性に負けないようにネクタイを着けていました。男性はネクタイをしていたので、女性がネクタイを着けていても違和感はないと思っていました。男性よりも劣ると思われたら絶対に刑事室には入れてはもらえないと思ったので仕事の原動力になりました」と話していました。
しかし山口さんは、ある時に見た目だけ男性と同じにしても意味がないと思い、それまで着けていたネクタイを外すことになります。
山口さんは「自分がただ単に未熟だから、いろんな事を任せてもらえないという事に気が付きました」と話していました。
山口さんは今では20人の部下を抱え日々の事件捜査を指揮しています。
また後輩からは同じ女性警察官として、あこがれの存在として見られています。
山口さんの後輩の木幡江梨奈さんは「山口課長はすごくかっこいいです。現場から逃げる事もなく、最前線に立って仕事をしたりするところを同性として尊敬しています」と話していました。
【1人娘の存在が心の支えに】。
休日もほぼ出勤するなど多忙な毎日を過ごす山口さん。
その支えになっているのが長女の存在です。
山口さんはシングルマザーとして両親の手を借りながら長女を育ててきました。
山口さんが函館に赴任になり、これまで20年近く一緒に暮らした長女は実家に預けて今は離ればなれで暮らしています。
長女が小さいころから仕事が忙しく一緒に過ごす時間が少ない中、長女と交わす手紙のやりとりがその時間を埋め合わせてきました。
手紙には「ままへ。いつもありがとう。どろぼうつかまえて早く帰ってきてね」などと書かれています。
山口さんは「娘が字が書けるようになってから、頻繁に手紙をもらっています。私が普段家にいないので、手紙でコミュニケーションを図っています」と話していました。
【娘の手紙をお守りに取り調べに臨む】。
山口さんには刑事になって忘れられない出来事があります。
10年前、当初から捜査に関わっていた重要事件の容疑者の取り調べを担当していた時のことです。
偶然にもこの日は母の日。
長女は山口さんに母の日のプレゼントと手紙を渡すことを楽しみにしていたといいます。
しかし急きょ取り調べの連絡が入り出勤することに。
長女は出かける前に1通の手紙を渡してくれました。
その手紙には「きょうは母の日です。ママのことがとても大好きです」と書いてありました。
山口さんはその手紙をお守りとして持ったまま取り調べに臨みました。
山口さんは「取り調べの時もその手紙をずっとポケットに入れていました。事件の犯人を逮捕し終わって、一段落した時にまた手紙を見て、よかったなと思いました」と話していました。
1人娘を心の支えにして道警初の女性刑事一課長となった山口さんは凶悪事件の解決に向けてきょうも捜査の指揮を執ります。
山口さんは「警察の仕事でこれまで女性では昇任することが難しいところもあったかもしれませんが、私がうまくいけばもっと女性の活躍の場が広がっていくのかなという思いもありますので気を引き締めて頑張ります」と意気込んでいました。