女は同じ物語 山本周五郎 【月イチ周五郎4】声:オザキユタカ

女は同じ物語。山本集郎。 まあ諦めるんだな。しょうがない。安永の 娘をもらうんだ とりえモンがその息子に言った。 どんな娘でも結婚してしまえば同じような ものだ。娘のうちは色々違うように見える 。ある意味では確かに違うところもあるが 、ある意味では女は全て同じようなものだ 。お前の母さんと枝田島のおばさんを比べ てみろ。私を初めはお母さんよりも枝田島 のいや、まあいい とりえ門は言った。 とにかく私の意見はこれだけだ。 カジ龍門は2130国の上大ガロである。 年は47歳、妻の沢は42歳になり、1人 息子の高一郎は26歳であった。 カジ家では奥の飯使いを7人使っていた。 これは3月から3月まで1年の行気味習い でジ下の不裕な消化とか金剛の王子の娘 たちのうち家事夫人によって厳重に選ばれ たものが上がるのであった。 その年の5月カジ夫婦人は夫に向かって 新しい駒遣いの中の世野という娘を高一郎 の事女にすると言った。 もは少し驚いた。 未婚の息子に事女をつけるというのは部け の習慣としては新式の方であるし、従来の 妻の主義からすればむしろよしありであっ た。 しかしとりえ門は言った。 それは安永の方へ聞こえるとちょっと具合 が悪くはないかね。 どうしてですか? 無論そんなことはないでしょうがとりえ門 は言った。 一郎はもう26であるし、赤い娘のに身の 回りのせをさせていると毎日その何か 間違いでも 沢女はああと夫を睨んだ。 あなたはすぐそういうことをお考えに なさるのねと彼女は言った。きっとあなた はいつもそんな風な目で事女たちを眺めて いらっしゃるんでしょ。若い飯使いなどが ちょっと流しめ遅れでもするとあなたは もうすぐ伸ぼせやがって 話を元に戻そうとりえ門は言った。 何かそれには訳けがあるんですか?私が 主彩もなく何かするとお思いですか?それ も分かった。 さんは女嫌いだと言い張っていますと沢女 は言った。 安つなさんという言い付けがあるのに女は 嫌いだと言って未だに結婚しようとはし ません。これは私たちがあまり片苦しく 育てたからだと思います。 そういうことですかな?そういうことで かって 後を聞きましょうと龍衛門は言った。どう か話の腰を折らないでください。そうし ましょう。それでつまりと沢女は言った。 一口に申し でもつけておけば交差ももう26ですから 女に興味を持つようになるかもしれない でしょう。いくら堅苦しく育っても男は やはり男でございますからね。 龍門は心の中でこれは感覚なるものだと 呟いた。 何かおっしゃいまして?いや、別に とりえ門が言った。後を聞きましょう。後 をですって。それでおしまいですか? 分からないふりをなさるのね。いや、 わかるよとりえ門は言った。しかしですね 。もしも高一郎がその事女に興味を持って 間違いでも起こした場合は 沢女はまあと夫を睨んだ。 あなたはすぐそういうことを想像なさい ますのねと彼女は言った。こさんはあなた とは違います。はあ。そうですか。そう ですとも。こさんは順で大しくってそれで 女嫌いなんですからね。と彼女は言った。 それともあなたは反対だとでもおっしゃる んですか?とんでもない。お前の意見に 反対だなんてなすったことがないと おっしゃるのね。そうよと沢女は言った。 そうして何かあればみんな私の責任に なさるのよ。あなたはそういう方なんです から。 そのどうして生事を閉めるんですか? ちょうどいい折りです。と彼女は言った。 私あなたに申し上げたいことがございます 。 沢女は生事をぴたりと閉めた。 座敷の中はそのまま長いこと静かになって いた。 その日高一郎が下場したのは午後7時過ぎ であった。 彼は薬15国で反の文庫へ勤めているが、 19歳から5年間江戸で翔平坂学問所へ 通学したという他にさして飛び抜けた才能 があるわけではない。 26歳にもなる上大ガロの息子を遊ばせて おくわけにもいかないのでせいぜ上駐の ことになれるというくらいの意味のようで あった。 大一郎が今へ入ると母親が駒遣いを1人 連れて入ってきた。 今日はお下がりが体操遅いようですね。 はあ。どこ一郎は言った? 帰りに村田で遊気の地想になりました。 村田様ってどの村田様ですか?サブ郎介 ですと高一郎は言った。 寄り道をする時は断らなければいけません と沢女は言った。母さんは遊気を食べずに 待っていたんです。それはすみませんでし た。そういう時は一度帰って断ってから 行くものです。そういたしましょうと 高一郎は言った。 沢女はそこで飯使いを引き合わせ、今日 からこれが身の回りのお世話をしますと 言った。 私のですかと高一郎は母を見たというと つまり あなたの事女です。どうしてですか? あなたはやがてご弟になる方ですと騒女が 言った。もう少しずつ色々なことになれ なくてはいけません。 色々なことってどういうことですか?色々 なことですよ。あなたもくどいのね。と 沢女は言った。これはジ下の明谷や文際門 というご服屋の娘で名は世の年は17です 。うちではキーと呼びますからあなたも そう呼んでください。高一郎はと言った。 ではキーと沢女は言った。お前若那様に 着替えをして差し上げなさい。 事女ははいと言った。 大一郎は渋い顔をしてそ歩を見た。 昼のうちに沢女から教えられたのだろう。 世のキーという事女はタスを開け、つぎを 一空へ出して高一郎に着替えさせた。 沢女はそばで見ていて2さ注意を与えたが 害してキの態度に満足したようであった。 大一郎は初めから終わりまで事女の方へは 目も向けず着替えが住むのを待ちかねた ように父と共同の所斎へ入ってしまった。 りえモは何か書き物をしていた。大変熱心 な様子で息子が入ってきても黙って書き 続けていた。 あれはどういうわけですかと高一郎が支い た。 私に事女をつけるなんて一体どういうことなんですか? 俺は知らないね。ご存じないんですって。知るわけがないさと父親は言った。すまないが安藤をもう少し明るくしてくれないかね。高一郎はドの日をくした。竜門は書き物に熱中していた。 少なくともそうやって息子の質問を 避けようとしていることだけは確からしい 。高一郎はそれを理解し、唇で微償し ながら父とは反対の方に据えてある自分の 机の前に座った。 やがて木が茶道具を持って入ってきた。 彼女は落ち着いた動作で洗を入れ、高一郎 の脇へ来てそれを進めた。 お茶でございますとキーが言った。 高一郎は壁の方を見たままでああと言った 。 6月になったある朝、小一代郎は事女の 体つきを見て好ましく思った。 恩な体つきだな。彼はそう思った。 という言葉の正しい意味は別として、彼に はそういう感じがしたのであった。 ちょうど薄着になった時で彼女の体の 品やかさや弾力のある柔らかな丸みやくれ が美しく現れていた。 それまで目を向けたこともなかったので、 高一郎には特に新鮮で好ましく映ったよう であった。 それから間もなく彼は木の肌が白いのに 気づいた。 日の日で彼は机の周りの掃除をし、筆や スりを洗うために木に水を持ってくるよう に命じた。 彼女は金だ洗いと筆洗いを運んできたが、 その時助きをかけていて両方の袖が高く 必要以上に絞られ、ほとんど腕の付け根 まで荒わになっていた。 高一郎は眩しそうに目をそらした。 薄桃も色を履いたようなあくまで白いその 新わな腕の溶けるような柔らかい感じは 例えようもなく美しく強い魅力で高一郎を 引きつけた。 彼は目をそらしながら自分の胸がときめい ているのを感じた。 7月になると、彼はキーの声が柔らかく 落ち着いて綺麗に住んでいることを知った 。 そして彼女の企料の良さ。 彼女が良しなことを発見した時、高一郎は 我知知らず目を見張った。 初めからこんなに綺麗だったのだろうかと 彼は心の中で呪文し、同時に体の内部が 熱くなるのを感じた。 カジ夫人はこの経過を密かに中視していた らしい。 時々彼にさりげなく問いかけた。キーは ちゃんとやっているか、気に入らないよう なことはないかどうかなどと息子に聞くの であった。 高一郎は曖昧に答えた。ええ、よくやって いるようです。まあ、よくやる方でしょう 。確別気に入らないようなことはありませ んと答えた。 8月に入ってから彼はキーと話をするよう になった。 不思議なことにキーに話しかける時、彼は 赤くなるのを抑えることができなかったし 、キーもまた同じように赤くなったり、体 全体で教習を示したりした。 ある、父と共同の所斎で父と彼とが読書を していた。8月中旬だから季節はもう秋で あるが残所の厳しい1日で夜になっても 気温が下がらず縁側の方の生事も窓も開け てあるのに美風も入っては来なかった。 りえ門は読みながら内場で顔を追ったり 襟り元を仰いだりした。息子の方を見ると 息子は机に両肘をつき、じっと書物を読ん でいた。 顔を追う様子もなく、風を入れる様子も なかった。 一郎とりえ門が言った。お前暑くはないの か?高一郎はと言った。何を呼んでるんだ ?3大危きです。竜門はうん。と言った。 父さんと高一郎が言った。あの娘は誰かに 似ていると思いませんか?どの娘だ?私の 事女です。キーという娘です。誰に似て いるんだ? 分からないんですが誰かに似ているような 気がしませんか? しないね。私はその娘をよく見たことも ないとりえ門が言った。 お前その娘が好きになったんじゃないのか ?冗談じゃありません。 それならいいがとりえが言った。 男でも女でも相手が好きになると誰かに似 ているように思うことがよくある。人間は 将文によってそれぞれの好みの方がある。 だから好きになる相手というのはどこかに 共通点があるんだろう。 お前いつか好きになった娘でもあったん じゃないのか?冗談じゃありません。よし てください。それならいいさとりえ門が 言った。 お前には安がつという言い付けがいるんだ からな。他の娘なんか好きになっても 母さんが承知しないぞ。 こ一郎は大丈夫ですと言った。ひどく確信 のない気のような調子だった。 そして書物のページをはぐり熱心に読み 続けた。 りえ門はハはハタハタと内輪を動かし、 それから突然自分の読んでいる書物を取り 、表紙を返して大線を見た。 一郎と彼は言った。 お前は今何を読んでるとか言ったな。 3大危機き書きです。ほおとりえ門は言っ た。そんな本が面白いかね?ええ、面白い です。 りえは微償しながら、そうかねと言い、 また自分の書物の大線を見た。そこには 3大危機垣き善と記してある。 それは先乱や教事を余地する禁煙の法を 戦したもので、高一郎のような青年にとっ て決して面白いはずのものではなかったし 、家事家の増中にも必殺しかないもので あった。 気をつけるがいいぞ、一郎とりえ門は言っ た。 その娘を好きにならぬようにな、気をつけ ないと辛きことに会うぞ。 高一郎は黙っていた。 バカな心配をする人だ。 1人になってから高一郎はそう思った。 あの娘をそんな意味で好きになるなんて俺 にできることかどうか分かるはずじゃない か。最も父さんは懲りているからなと 高一郎は思った。 父は枝田島の娘と円談があったのを自分 から進んで今の母をめ取った。 枝田島の娘は時と言いは沢女ではないが 気立てが優しくことの名主として評判だっ た。 父が沢女を目取った後、枝田島では長男が 死んだので沢女の弟で人べという人が 入り向こした。それから3年、その2人の 若い夫たちはお互いに自分の家庭生活に ついて語り、結婚前にその娘がどう 見えようと気が強そうに見えようと優し そうに見えようと結婚してしまえば皆同じ ようなものである。 と物欲と巨影と顔明の強さにおいて全て男 の敵とするところではないという結論に 達し両人愛友に嘆いたということであった 。 俺はそんな風にはならないと高一郎は1人 で呟いた。 俺はまたそんな意味であれが好きだという のではない。俺はただただあの娘が単に 彼はそこで絶くし渋いような顔をした。 9月になったある夜、根まで着替えをして いる時、キーがひどく沈んだ様子をして いるのに気づいた。 高一郎はどうかしたかと聞いた。彼女は なかなか答えなかった。 どうもいたしません。何でもございません というばかりであった。 正直に言ってごらんと高一郎は声を潜めた 。 ごまかしても分かるよ。何があったんだ。 するとキーは泣き出した。 キーはそこへ座り、両手で顔を覆って声を 潜めて結び上げた。高一郎も座った。 すでにグが述べてあるのでいい声で話すためにはへ座る仕様がなかった。彼はそばへ座った。言ってごらん。あーがりでもしたのか?ええ時は頭を振った。私暇をくかもしれませんの?小一郎はキりとしと言った。 それはと彼はどもった。 それはなぜです?どうして何かわけがある のか? 申し上げられません。 なぜ言えないんだ?それも言えませんと キーは言った。 いつかは分かることでしょうけれど、私の 口からは申し上げられませんの? 高一郎はまたどもった。 それは円談ではないか。 キーは答えなかった。円談なんだねと彼は 言った。言ってくれ。そうなんだろう。 キーは頷いてもっと激しく泣き出した。 高一郎はせや上がった。女にも近くに座っ ているので彼女の甘い大衆やお城いやこ油 の香りが彼を包み上げる 彼女の声は直に彼の胸を刺すようであった 。こ一郎はせや上がって聞いた。 そんなに泣くのは相手が嫌だからか。 はいとキーは答えた。それだけで泣くので はないが相手は好きではない。自分は嫌だ とはっきり断ったのであると言った。 それで相手は承知しないのか?そうのよう です。しつっこいやつはと高一郎は言った 。 相手は何者だ?おブけです。のものか? そうです。五老樹の佐野様のご長男なん です。 すると傭兵だな。そうです。あの兵器が2 名。 と一郎は言った。よし、彼のことは 引き受けた。でもキーは言った。乱暴な すっては困ります。あの方はお強いそう ですから。いや、大丈夫。私は暴力は嫌い だ。本当ですか?大丈夫だ。あいつのこと は安心していいとこ一郎は言った。もう1 つの理由を聞こう。理由は他にもあると 言ったはずだ。 え、申しました。でもそれは キーは目を伏せた。 言えないのか?円談のことさえ言って しまったのにもう1つの理由は言えないの かと高一郎は問い詰めた。キーはますます 神戸を垂れた。見ると耳まで赤くなり、 呼吸も深く大きくなっていた。 大一郎は恐怖に襲われた。 お前と彼は乾いた声で言った。 他に好きな人がいるんだな。 キーは肩を縮め、多元で顔を覆った。 そうかと彼は震え声で言った。それは知ら なかった。 は覆った田元の下からでも望みはないん ですと言った。 その方とは身分も違うし、その方には イナ付けがいるんです。私はただ一生お そばにいるだけで本毛なんですと言った。 多元に覆われた含み声ではっきりしなかっ たが高一郎はちょっと息を止めた。だって キーは今 はいと彼女は言った。 するとお前は はいと彼女は言った。 私若旦那様とお別れするのが辛くって そして彼女はまた泣き出した。 高一郎は突然彼女を抱きしめたいという 衝動に駆られた。無論不純な意味ではない 。泣いているキーの姿があまりに いじらしく消えりそうなほどカレに見えた からである。 だが彼は衝動をこらえぐっと落ち着き ながら頷いた。わかったと彼は言った。 もう泣くことはない。私がいいようにして あげよう。 おそばにいられるようにですの?高一郎は うんと言った。 若旦那様とキーが言った。嬉しございます 。 今度は彼女が高一郎にすがりつきたいよう な身振りをした。すでに飛びつきたいよう な姿勢を見せたが、高一郎は唇をへの地 なりにし、じっと中を睨んでいた。 あの兵気が2名と高一郎が心の中で言った 。どうするか見ていろ。 その翌日、高一郎は途上するとすぐに佐野 傭兵のところへ行った。 傭兵は中老家門の長男で国元の故障組に 属している。年は28になるが、酒みの グータラで娘を嫁にやろうというものが なく、未だに独身のまま飲んだくれていた 。 佐野は貧乏で有名だった。 傭兵頭に子供が13人いるし、西女は 派手好みであり、家門が老皮下であった。 そのため470国のカロはいつも足らず 発方仮だらけで傭兵の飲み台など出る余地 がなかった。 そこで傭兵は友人にたかり、至るところに 感情を貯めた。 彼は堅術がうまいし、腕っぷしが強かった 。 酒のために波紋されたが、精神感道場では 市販台の自績まで行ったことがある。従っ て暴れ出すと手に負えないから大抵のもの が泣き根入りということになった。 傭兵は爪所でごねしていた。酔っているの だろう。あだ名の兵気ガニがよく似合う かった顔が真っ赤で肘を枕に口の端から よだれを垂らしながらいびきをかいて眠っ ていた。 高一郎は乱暴に寄り起こした。 傭兵は目を覚ましたが、起き上がるまで 呼び続けた。 起きたよと傭兵は言った。ちゃんと目を 覚ましてこの通り起きてるじゃないか。何 のようですか? 高一郎は要件を言った。 傭兵はドローンとした目でいぶかしそうに 彼を見た。 わかったと傭兵は言った。しかし何のよう ですか?高一郎はその時話すよと言いそこ を去った。 午後5時過ぎ、城下町の北にある神馬 が岡丘で高一郎と村田サブ郎介が待って いるところへ佐の傭兵がやってきた。 遅いぞと高一郎が言った。必ずご人と言っ たはずだ。支度しろ。 そして彼は助きをかけ、汗止めをし、墓の 友達を絞った。 傭兵は悪けに取られ、ポカンと口を開いて 見ていた。 支度をしろとまた高一郎が言った。何の ためだと傭兵が言った。 いいから抜け。勝負だ。 わけを言わないのか。そっちに覚えがある はずだと高一郎が言った。 傭兵は遠惑した。 原田を殴ったけかと洋が言った。それなら 謝る。お寄っていたんだ。そんなことじゃ ない。では車掌の推しの裸にしたけんだな 。 高一郎は首を振り違うと言った。 するとか金を巻き上げたけんかと傭兵は 言った。あれなら悪いのは俺じゃない。 か護立つはいつも茶掌で飲むが感情という ものを払った試しがないんだ。いや、俺 だって少しは溜まってるさ。しかしのは まるで無法なんだよ。それで俺は茶掌の 代理としてたくさんだ。支度をして抜けと 高一郎が言った。理由は勝負の後で言って やる。早くしろ。どうしてもか。 村田が立ち合い人だ。 傭兵はニっと笑った。 警部と長老のこもった嫌な笑いである。 彼は高一郎とサブ郎介をじろっと見た。 ふんと傭兵は唾を履いた。 上代のセレだから下手に出てやったが、 お前さん本当に俺とやる気なのか?くどい ぞ。抜け。切られても文句はないんだな。 村田が証人だ。傭兵はそっちを見た。 サブロはそうだと頷いた。 よし、やってやろうと傭兵は言った。 お前さんは江戸へ行っていて知らない だろうが、俺は家中でもちょいと知られた 腕になってるんだ。そのつもりでかかれよ 。支度はいいのか?は、相手がお前さんで はな。 傭兵はまた唇で笑った。 いざ傭兵がいざと言った説な。高一郎の腰 から電光がひらめいた。もちろん電光では ない。ひらめいたのは刀である。傭兵はあ と言って飛び下がった。3元飛び下がった が途端に墓と帯がずるずると下がり着物の 前がってしまった。傭兵は行転し、片手で ずり下がった墓間を抑えながらまたと叫ん だ。いや、またんとこ一郎が言った。真剣 勝負に待ったはない。行くぞ。傭兵は後ろ へし去った。こ一郎は刀を冗談にあげ、 一歩1歩と詰め寄った。待ってくれと傭兵 が言った。これでは勝負ができない。これ では勝負はついたぞ。頼むから待ってくれ 。 後ろへ下がろうとした傭兵はずり落ちた墓 の裾を踏んでのけざに点灯した。小一郎は 踏み込んで行き、上から傭兵の花先へ刀の 喫先を突きつけた。どうだ? 傭兵は口を開いた。切ろうかと高一郎が 言った。傭兵は参ったと言った。確かだな 。確かだ。と傭兵が言った。しかし俺には わけが分からない。まず聞かせてくれ。 一体この勝負は何のためだ? 妙が屋の娘だと高一郎が言った。傭兵は ポカンと彼を見上げた。 貴様からの円談を娘はっきり断ったはずだ と高一郎は言った。にも関わらず貴様は 諦めない。多分中郎という価格と自分の 悪みに物を言わせようと言うんだろう。 しかしそうはさせん。俺がそうはさせない ぞ。ちょっとちょっと待ってくれ。手を 引けうと高一郎は言った。大なしく手を 引けば貴様の飲み台は俺が月々き出して やる。なんだって傭兵はごくりと唾を飲ん だ。多くはやらない。月に一部ずつの未台 をやる。それできっぱり手を引くか。どう だ?そ、それは確かでしょうなと傭兵は 言った。 た、確かに一部ずつくれるんでしょうな。 手を引くか。確かにもらえるなら承知し ます。 俺は武士だ。 よろしい。私も武士です。 向こうでサブ郎介が苦傷した。 傭兵は目くそれを見、笑い事じゃないぜと 渋い顔をした。笑い事じゃないと傭兵は 言った。今の契約にも村田は承人だぞ。 サブ郎介はいいともと頷いた。高一郎は刀 をよくぐってさやに収めた。それから身宅 を直し、懐から入れを出して一部銀を開始 に包んで傭兵に渡した。 今月の分だ。いや、どうもと洋兵は頭を 下げた。確かにしてあはどういう具合に くれるんですか?こっちから尋ねて言って いいんですか? 月の5日に来れば渡す。5日ですな。 わかりました。 1つ注意しておく。高一郎は言った。 これからは工場を慎しむこと。もし不行な ことをすれば飲み台は無論停止するし大け の里沙汰にするからそのつもりでいろ。 それから今日のことは決して多言するな。 俺だって自分の恥をさらしはしないさ。 そこに気がつけば結構だ。忘れるな。 そして高一郎はサブ郎介と共に去っていっ た。 傭兵はそれを見送りながらいかにも腑に 落ちないという顔つきで首をかしげたり 片手で頭をかいたりした。 もう一方の手はまだずり下がった墓間を 抑えたままである。 おかしなやつだなあと彼は呟いた。 屋の話は去年のことだし、断られてから俺 は何も視野しない。手を引くも何も俺は まっきり忘れてたくらいじゃないか。わけ がわからねえと彼は首を振った。馬かされ たような心持ちだ。 高一郎とサブ郎介は坂を降りて行った。 サブ郎介は傭兵のことを笑いながら墓間の 帯を切ったのは見事だと言った。家事が 堅術をやるとは知らなかったし、あんなに 素晴らしい腕があるというのは意外だと 言った。高一郎は苦傷した。 俺だって侍の子だから堅術ぐらい稽古する さ。江戸ではやかましいんだ。遊戯は何だ ?江戸て抜刀龍の試案が来るので3年 ばかりやったよ。なるほど。今のはい合い か?いや、あれは見て覚えたんだと高一郎 は言った。 江戸にいた時、カ営寺へ参したその途中で 浪人と浪人の喧嘩があったが片方が 抜き打ちに相手の銅を払った。すると墓間 の紐通が切れてずり下がり、相手は動け なくなった。俺はその真似をしただけさと 高一郎は言った。なるほどねとサブロは 言った。江戸にいると色々な学問をする ものだ。だがそれにしてもとサブロが言っ た。どうしてまた明谷屋の娘などのために こんなお切かなことをしたのかね。うん。 小一郎は顔を背けた。 その娘が3月から俺の家の駒遣いに来て いる。母の気に入りで俺はよく知らないが 母に頼まれたんだ。 毎月一部ずつの飲み台もか。 高一郎はますます顔を背けた。さもなけれ ば遠くなっているところをサブロに見 られるからであった。 佐のにしたってと一郎は言った。 飲み台があればバカなことはしないさ。 どうだかな。ここで別れようと高一郎が 言った。わざわざ済まなかった。今日の ことは黙っているよとサブロは笑いながら 言った。 その夜小一郎はキーにもう大丈夫だよと 支えた。キーは怯えたような目をした。 しかし彼がごくごく簡単に話して聞かせる とさも安心したという風に微笑し、急に熱 でも出たような目で彼を見上げて嬉しそう にこっくりをした。 2人は親しくなるばかりだった。 神馬が丘のことは2人の秘密であった。 その秘密なことが2人を他の人たちから 隔立て密接に結びつけているようであった 。 すると10月になった夜、根間の世話をし ながらキーは明日1日お暇がもらえますと 言った。 祖父の7年期なので家事夫婦人に頼んで暇 をもらったというのである。 高一郎はそうかと言った。 キーは何かわけありげな目つきで微償し ながら彼を見た。 若旦那様も明日は確かごでございましたわ ね。 そうだったかね。 ごのはずですわとキーは言った。 私本当は法事には行きたくないんですの。 だって自分で頼んだのだろ。それはお願い したんですけれど。しかも嫌になったのか 。 キーは含み笑いをし、ハに高一郎を見上げ た。 彼は眩しそうに目をそらした。しかし目を そらした途端にひょいと天井を見上げ、 その唇を尖らせた。 明日はあなたも被判だ。 あなたものもいう一時に彼女の暗示があっ たのだ。 つまり2人はどこかへ一緒に行ける、行く ことができるという意味に違いない。彼は 振り向いてキーを見た。 キーはあの湯を知っているか?はい。存じ ております。うん。どこ一郎は口ごもった 。 どう切り出していいかわからない。 そんなことを言うのは武法かもしれないし 、断られるかもしれない。 うん。と彼は言った。 あそこは完成でいい。いで湯も住んでいる し、大きな宿件あるし。そうでございます ね。時キが言った。 それにご両文の外ですからあまり知った人 にも会いませんわ。 そうだ。あ、松ダイラだ。 まだ紅葉が見られますわねとキーが言った 。 私雪とございますわ。 私も言ってみたいな。 キーは待った。 高一郎の胸はドキンとなったが、どうにも 勇気が出てこない。彼は赤くなって急に そ歩を向きながら行った。 私は明日行ってみる。 キーは彼を見た。私はと彼は不決断に続け た。 私は東風郎という宿で半日保用してこよう 。東風郎なら存じていますわ。あれはいい 宿だ。でも部のお客様が多いようでござい ますねとキーは言った。 平の屋という宿は小ソございますけれど、 すぐ下に谷側が見えますし、静かで 落ち着いていて私好きですわ。 それなら平野にしてもいい。 キーは待った。 平の屋にしようと高一郎は言った。私は もう寝ることにする。 彼は寝巻きに着替え、そしてヤグの中へ まるで逃げ込むように潜ってしまった。 ある朝早く、高一郎は両親に断ってあねの 湯に出かけた。 キーは何も言わなかったし、変わった そぶりも見せなかった。 あ根はその浄化から2りほど離れたところ で酒川の渓に望んだ小い丘の中複にあった 。 高一郎は歩いていった。その途中、彼は 仕切りに気が沈んだ。 1人で保用に行ってどうするんだ?いでよ に使ったり出たり谷側を眺めたってしょう がないじゃないか。嘘やめにするかと彼は 呟いた。 2度ばかり立ち止まって引き返そうとした 。 しかしことによるとキーが来るかもしれ ないと彼は思った。 平の屋を進めた口ぶりだと後から追って くるつもりかもしれないぞ。いや、そんな ことはない。娘が1人で当時映えへ来る なんてそんなことができるはずはないじゃ ないか。バカな空想をするなと彼は思った 。平野はすぐに分かった。人筋道の左右に 宿や土産物の店などが並んでいる。 その1番先の川に面した方に平の屋はあっ た。 彼は渓流の見える座敷へ案内された。 建物は古いがっちりと落ち着いた作りで他 には客がいないのか渓の音だけが静かに 座敷へ流れいってくるだけであった。 女中が茶道具と着替えを持ってきてすぐ ゆえお入りになるかと聞いた。彼は後に しようと言い、茶をすってから縁側へ出て 外を眺めた。 大岸は松林で楓出がたくさんあるのだが、 季節が過ぎたのだろう。みんなもう歯が 落ちていた。 お湯いらっしゃいませんのと脇で女の声が した。あまり突然だったから高一郎は 飛び上がりそうになった。 振り向くとキーがいた。 ああと彼は言った。キーか。 彼女は大胆に彼を見つめ、媚びた笑いを 浮かべながら頷いた。 高一郎は目を見張った。 彼女はもう岩がで、肌はみずみずと 艶っぽくまるで光の傘に覆われたように ぼーっとかんで見えた。着物も屋敷にいる 時とは違って色彩の生めかしい派手な柄だ し街風に結んだ帯もひどく色めいて見えた 。 綺麗だねと彼は言った。実に綺麗だ。 嬉しいございますわ。 目が覚めるようだ。 高一郎は真剣にそう言った。 キーはそれを素直に受け取り、素直に喜ん だ。 だがいつの間に来たのかと高一郎が言った 。はい。かを急がせてお先に来ていました 。では途中であったんだな。はい。途中で お見かけいたしましたとキーが言った。 大江の木のところで立ち止まって いらっしゃいましたわ。うん。引き返そう かと迷っていた時だと彼は心の中で思った 。 お湯へ行っておいで遊ばせいやと高一郎は 言った。言は後だ。少し話をしよう。 私も伺いたいことがございますわ。何でも 話すよと彼は言った。座敷へ入らないか。 2人は座って話した。 キーが聞いた。 世間ではあなたが女嫌いだと噂している。 自分にはそう思えないが何かわけがあるの か? 高一郎はあると答えた。 聞かせていただけますか? いいとも。どういうわけですの? 正直に言ってしまう。それはある1人の娘 のためだ。そうだと思いました。ドキーが 言った。 それはあなたの言い付けで安津さんと おっしゃる方でしょ。なんだって?高一郎 はびっくりした。どうしてキーはそれを 知っているんだ?私あの方とおけ子友達 ですの。おこと、お茶、お花、みんな同じ お師匠様でしたわとキーが言った。それに 2人は姉妹のようによく似てるってみんな からよく言われました。 そうかな。私にはそうは思えないがなとこ 一郎が言った。 親しくはなかったろうな。どうしてですの ? あれは気の強い意地悪な娘だった。 あら、そうでしょうか。私大変仲良くして いただきましたわ。 あれは気の強い意地悪な娘だった。 どんな風にですの?とキーが聞いた。 私は今でもよく覚えているしと高一郎は 言った。 それを思い出すたびに口惜しいような 肉らしいような気持ちになることがいくつ かある。 伺いとございますわ。 私は蛇が嫌いだと高一郎は言った。 蛇を見ると未だに私は体中が早け立つ ぐらいだ。 12歳の年だった。彼が安長の家へ遊びに 行った時、つが面白いものを見せるから いらっしゃいと言って彼を庭へ誘い出した 。 安永の庭は広くて林や草原があったり 小さな池もあった。 何気なくついていくとひょいと草むの中に しゃがんでほらここよという。そして彼が 近寄っていって覗いてみようとしたらわあ と叫びながら1匹の小ヘビをつまんで彼の 目の前へ突きつけた。 私は気絶しそうになったと高一郎は言った 。多分悲鳴をあげたろう。気が遠くなった ようで我に帰ったら自分は雑りを履いた ままいつの間にか座敷の中に立っているし 、母は恐ろしく怒っているし、あの娘は ゲラゲラ笑っていた。 あの方はおいくつでしたの?私が12だ から6つの年だと高一郎は言った。その前 の年だったと思うが安永とカ事と両方の 家族でこの赤へ来たことがあった。 宿は東風郎だった。親たちが話をしている うちにあの娘が一緒に家へ入ろうと言った 。彼がしっていると男のくせに育児なしね と言った。彼はつと一緒に湯へ入った。 ユツボへ入るとつはもぐりっこをしようと 言った。 髪の毛が濡れるから嫌だ。後で吹けばいい わよ。母さんに怒られるから嫌だよ。男の くせにお母様が怖いの。へえ。弱虫ねとツ があ笑った。 そこで彼は承知した。 2人は潜りこしたがどうしても彼は負けて しまう。3度やって3度目には死ぬかと 思うほど粘ったが津は彼よりも銃さも 数えるほど余計に潜っていた。 あの娘は王子で散々私のことをからかった と光一郎は言った。 それから家を出て紙を吹きお互いに髪を ゆい合った後、髪の毛がよく乾くまで 遊ぼうと言った。そこでですかとキーが 聞いた。裸のままでだと高一郎が言った。 そして自分の体の自慢を始め白くて スべスべして綺麗でしょ。よく見てご覧 なさいと言うんだ。 事実真っ白で決めの細かいふっくらとした 綺麗な肌であった。 津は体をすっかり眺めさせた上、私には 三つ星様があるのよと言い、足を広げて右 の太もの内側を見せた。 薄色の桃の付け根の近いところにほが3つ 三角なりにあるのを彼は見た。 ほんの一別っ見たけであるが、彼は何か悪いことでもしたように胸がキドキしどくめた。は、今度は 2 人の体をべっこしようと言い、私にぴったりくっつきなさいと命令した。彼は老媒だと言って逃げた。 すると津は顔をめて軽別し、またしても男 のくせに育児なしねとからかった。 そういうことは誰にもありますわとキーが 言った。そのくらいの自分はなんとなく体 に興味があってお互いに体を見せ合いたく なるものですわ。 キもしたのか。あらと彼女は赤くなった。 は若旦那様が話していらっしゃるの でしょう。私のことは後で申し上げますわ 。うんと高一郎は言った。だが肝心なのは そのことじゃない。 体のクべっこで逃げた後でツがいいことを 教えてあげましょうかと言った。いい ことって何だ?彼は警戒した。ツは肩を 救めクスクスと笑った。 そして潜りっこをあんな風にしては負ける に決まっている途中で頭を出して息をする のだと言った。私なんか2度も3度も頭を 出して息をした。あなたは馬カ正直で落ち がないのねというのであった。 私は口惜しかったと高一郎は言った。いつ かはやり返してこっちで笑ってやろうと 思った。心がいつもやられてしまう。笑わ れるのはいっつもこっちなんだ。 ある時、やはり安永の庭で津が木のりをし ていっていた。霊の通りあなたにはでき ないでしょうという。そこで彼が登ると私 はもっと上まで登った。 私海が見えたわという。彼はさらに登った 。すると海が見えなかったばかりでなく枝 が折れて墜落し背中を打って気絶して しまった。 ある時は草の中の小道でここをまっすぐに 歩いてみろという。蛇がいるんだろう。蛇 なんかいないわ。もう冬じゃないの?臆病 ねと笑う。それでまっすぐに歩いていっ たら落とし穴があっておっこち、左のく節 を捻挫した。 お前笑うのかと高一郎が言った。私笑い ませんわ。今笑ったようだぞ。笑ったり なんかいたしませんわ、私。 数えればまだいくらでもあると高一郎は 言った。 袋市内のこととか背中へカブトムシを入れ られたこととか暴れ馬のこととかお化粧さ れたのを忘れてそのまま帰って土像へ入れ られたこととか なんだ こ一郎は話をやめて向こうを見た。 縁側へ女中がやってきたのである。 こちらはカ事様かと聞くのでそうだと 答えるとお客様が見えましたと言った。 高一郎はぎょっとした。 客の来るはずはない。木もちょっと色を 変えた。そのとこ一郎は女中に聞いた。客 というのはどんな人間だ?おブけ様で ございます。 高一郎はうっと言った。 お名前を伺いましたけれどと助中は続けた 。 何ですか?怒ってらっしゃるようで会えば わかる。是非とも会わなければならないと おっしゃるばかりでございます。 よしと高一郎は言った。 ではすぐ行くから他の座敷へ通しておいて くれ。 女中は承知して去った。 どなたでしょう?キーがオロオロと言った 。私どうしましょう?見つかったの でしょうか?とにかく会ってみる。私帰り ますわ。お会いになっているうちに帰る方 がいいと思いますわ。うんと高一郎が言っ た。その方がいいかもしれない。そうする としよう。 キーは立った。 か護が待たせてあるから急げば祖父の法事 に間に合うだろうとキーは言った。 では晩にと高一郎が言った。キーは素早く 出ていった。 一郎は冷えた茶をすった。 木が支度をしてしまうまでと思って座って いた。 やがて気持ちも落ち着いてき、時間も良さ そうなのでわざと布のままで出ていった。 女中が案内したのは隅の方の暗くて狭い 部屋であった。 その何の飾り付けもない古のまるで安部屋 のように陰気なところで1人の侍が超足の 善を前にして酒を飲んでいた。 高一郎は悪けに取られた。 逆月きを持ってようと振り向いたのは差の 傭兵であった。 ようこれはどうもと傭兵は言った。 ご馳そうになってますよ。 何の用があるんだ。 ご挨拶ですね。今日は5日ですよ。 こ一郎は思い出した。 なんだそのために来たのか。約束ですから な。約束の第1回から忘れられては困り ますよと傭兵は逆月きを煽った。 オタクへ伺ったらあねだというのですぐ後 を追ってきたわけです。1つどうですかと 傭兵は言った。怒ってくれるのか?冗談 でしょ。貧乏人をからかっちゃいけません 。5一郎は座った。 キーがいたことは知らないらしい。 罪滅ぼしに少し付き合ってやるかと思った のであった。 その夜光一郎 は何でもなかったよと言い傭兵のことを 話した。 キーは頷いて楽しいございましたわと支い た。 そして2人きりの時間にはそれはいつも ごく短いものであったがあねの楽しかった ことをよくお互いにさやき合った。 金の湯から2人の心はもっとぴったり 触れ合うようになり、しばしばちょっと目 をかわすだけでお互いの気持ちがごくな ことまでも通じ合うようになった。 そして11月の中旬のある午後、ちょうど 高一郎の日盤の日であったが、2人は庭の 奥で少し長く話す機会があった。 そこは北斗明人と言ってカジ家代々の宇神 の祠があり、若ではあるが杉林に囲まれて いた。 北斗明人はカジ家がどこへ行っても祭祀 もので育のうじの神だということである。 私伺いたいことがあるのですけれどとキー が言った。 この前あの宿で津様のことをおっしゃい ましたわね。 大一郎は頷きながらキーはひましに美しく なるなと心の中で思った。 企料も良くなるばかりだし、こんなに 優しい木立てのいい娘はない。なんという 可愛い娘だろうと思った。 若旦那様はそのために津様ともご結婚 なさらないし、女嫌いになっておしまい なったのでしょうか。 大一郎はんとキーを見、それから自分が 質問されていることに気づいた。 うん。いや、それもあるけれどと彼は ちょっと口ごもった。 ついでに正直に言ってしまうと私の母の こともあるんだ。 奥様のことですって 聞いだから言ってしまうが母がどんな性質 の人か分かるだろうと高一郎は言った。 私はずっと父と母の生活を見てきた。 そしていつも父を着くに思った。 表面は旦那様と立てている。父はいかにも 課長の座に座っている。しかしと彼は首を 振った。実際はそうじゃない。 上大郎としては別だが、生活では母の思う まだ。全ての実験は母が握っている。父に は母の握っている鎖の長さだけしか自由は ないし、その鎖で思うままに操縦されて いる。 それはお言葉が過ぎますわ。父だけでは ない。どうやら大抵の男がそうらしいよ。 あんまりですわ、それは。 猿回しは猿を多ゆさんと立てる。そして 踊らせたり芝居させたりして稼がせる。 よく似てると思わないか? でもとキーが言った。全部の女がそんな風 だとは限りませんわ。 例えばキーのようなね。あら、私なんか 私はキーとなら結婚したいと思う。 キーはまあと言って赤くなった。 高一郎も自分の言葉に自分でびっくりした 。深い考えもなくスラスと口から出て しまったのである。 彼は浪したが言ってしまってからそれが 自分の真実の気持ちでありここではっきり させるべきだということに気がついた。 キーは私の妻になってくれるか? 嬉しいございますわ。 火は赤くなったまま目を伏せた。 若旦那様のお気持ちはよくわかりますの。 本当に嬉しございますけれど、身分が違い ますし、何より奥様がお許しなさいません わ。 それは私が引き受ける。来てくれるか? 私にはお返事ができません。 キーは顔を背けた。 なってそれはできることではないのです もの。 今すぐに話す。これから話してきっと承知 させてみせるよ。行けません。若旦那様後 で会おうと高一郎は言った。 今夜その結果を知らせてやるよ。 そして彼は突然とキーの手を握った。 彼女の体はビクっとし、呼吸が深く荒く なった。 そして高一郎に握られた彼女の手は冷たく 怖ばったまま動かなかった。 心配しないでいい。きっとうまくいくよと 高一郎は言った。 キーは黙って顔を背けていた。鈴様の感動 で物を言う力もないという様子であった。 こ一郎は母の部屋へ行った。 そこにはつの師匠が来て母の稽古を見てい た。彼はつの音が聞こえなくなるのを待っ て改めて尋ねた。 カジ夫人は高一郎の言葉を黙って聞いてい た。 眉も動かさなかったし、核別感情を害した 様子もなかった。閉めたぞと高一郎は話し ながら思った。これは案外うまくいくかも しれない。 母はキーがお気に入りだからなとも思った 。 聞き終わった沢女は平成の声でお父様にお 聞きなさいと言った。高一郎はアハーブへ のご意見はいかがでしょうかと聞いた。 母さんは女ですからそういうことに口出し はできませんと沢女は言った。 お父様がご主人ですからお父様に聞いて ご覧なさい。 こ一郎はではそうしますと言った。 父の竜門は首を振った。そうしてこの話の 第1章に記した通り彼自身の女性感を述べ 諦める方がいいと言った。 私は諦めないつもりですと高一郎は主張し た。私はキーが好きですし、キーは良い妻 になると思いますと言った。 だめだね。母さんが俺に聞けと言ったのが すでに不知だという証拠だ。そうだろ。 お前だって母さんの将文は分かってるはず だ。 しかし母さんは父が家事家の主人だからと 言われましたよ。お前もそう思うか? ええ、まあ、それにそういないんですからねと高一郎が口ごも思った。龍え門は苦傷し、その戦作はよしにしようと言った。まあ諦めるんだなと竜門は続けた。それには操の娘が気に入ったらしいが、もったように結婚してまえば女はみんなものだ。 安永の娘だってキーだって。俺はキーの ことはよく知らないがね。しかし結婚して 妻になればどっちにしても同じようになる ものだよ。 しかし父さんは反対ではないのですね。 りえ門は頷いて母さんが良ければねと言っ た。 こ一郎は母の部屋へ行った。 今度は問題がはっきりした。母は行けませ んと言った。 あなたには安永なさんという言い名付けが あります。その上あなたはやがて上大郎に なる身ですから町人の娘など目取ることは 許されませんと沢女は決めつけた。2度と そんな話は聞かせないでください けれどと彼は言った。父上はいいと言われ ましたよ。 様には後で私が話しますと沢女は言った。 まだ他に何かおっしゃりたいことが終わり ですか? 高一郎は引き下がった。 よろしい。それならこっちも戦術を 考えようと彼は思った。 父はこれから絞られるだろうし、相当 お気の様であるがそれはご自分の居原をご 自分で狩るわけである。 よろしいと彼は呟いた。戦術を考えると しよう。 だがその暇はなかった。 彼は両親と交渉している間にキーは屋敷 から出て行ってしまった。それが分かった のは彼が根前入った時である。 の時も木が見えずへ茶を持ってきたのも別 の駒遣いであったし、根の支度は秋という 駒遣いがした。 高一郎は不吉な予感に襲われ、キーはどう したとその遣いに聞いた。 するとまるでその質問を待っていたように 母が入ってきて今日からこの秋があなたの お世話をしますと言った。 こ一郎はカッとなった。 母上が暇出しになったんですね。 キーは自分で糸間を取ったのですと沢女は 言った。あなたはまさか母を疑うほど皮屈 におなりではないでしょうね。 高一郎は神戸を垂れた。 彼もそこまで屈になりたくはなかった。 キーは同じ浄化町にいるのである。会おう と思えば明谷へ行けば良いのだ。おやすみ なさいと彼は言った。沢女もお休みなさい と言いネから出ていった。 秋は用が住むと一通の封じ踏をそこに置き 挨拶をして出ていった。 秋は何も言わなかったがもちろん木の手紙 であろう。高一郎はすぐ取ってふを開けた 。 私必ずあなたのところへ戻ってきます。と その手紙に書いてあった。新物に近って 必ず戻ってまいりますから、それを信じて お待ちください。どうぞ私を呼び戻そうと したり、愛にいらしったりなさらないよう にお願いいたします。 会いに来ても自分は決して会わない。その 代わり半年以内に必ずあなたのところへ 戻るとその手紙は繰り返していた。 分かったと高一郎は呟いた。 私はお前を信じよう。き待っているよ。 そして彼は待った。 12月になり、年が開け、2月になり、3 月になった。 カジ家では毎年の例で7人の駒遣いが 出わったが、すぐ後で法一郎の結婚が行わ れることになった。 安永さんを5年近く待たせました。これ 以上お待たせすることはできませんと沢女 は言った。 こさんの女嫌も治ったようだしだって誰か を嫁に欲しいとおっしゃったくらいです からねと騒女は中を入れた。 今度こそお式をあげることにします。こと は決定した。 カジ夫人がはっきり宣言した以上、誰に 反対することができるだろう。 カジ家と安長家の往来が復活し、立ち町の ひどりが決まった。 高一郎は祈った。 戻ってくれ。木戻ってくれ。 彼は空に向かい、壁に向かい、夜の闇に 向かって呼びかけた。 どうしたんだキー?いつ戻ってくるんだ? そしてまた言った。 俺は待っている。お前を信じて最後の ギリギリまで待っているぞ。 キーは戻ってこなかった。 終元の日が近づき、ついにその当日になっ た。 キーはまだ戻ってこない。だが彼は望みを 捨てなかった。カジ家には客が集まり、彼 は着替えをさせられた。 花姿を鏡に移しながら、やはり彼は待った 。キーは必ず戻ってくる。キーは誓を破る ような女ではない。必ず戻ってくるにそう いない。 そのうちに時刻が迫り、花嫁が到着した。 ナコドは自石ガロの運の図書負妻である。 帝国の七時が来、式が始まった。 白ムに綿帽子をかぶった花嫁と並び、修の 逆月きをかわしながらなお高一郎はキーを 待った。 キーはまだ現れない。逆月きが終わりに 移った。賑やかで容気な主焉が続き、花嫁 はナコ土に手を引かれて席を立った。 どうしたんだと高一郎は心の中で叫んだ。 どうしたんだ?もうすぐ最後のギリギリだ ぞ。 そしてその最後のギリギリの時が来た。 花嫁が立っていってから約半時、ナコ土の 運の所がお開きの字を述べ、高一郎は席を 立って寝前へ導かれた。 晴の寝巻きに着替えながら木と彼は心の中 で呼びかけた。 運の夫人は彼を新婚のへ案内し、彼を病部 のうちへ入れてからそっとふを閉めて去っ た。 花嫁はヤグの上に座っていた。 六極の金病部にキヌアンドンの光が映って いた。 華やかな生めかしいヤグの上で切迫の 根巻きに時色のきを締め、神戸を深く垂れ て花嫁は座っていた。 高一郎は決心した。全てを花嫁に 打ち明けよう。ツは気は強いし意地悪な娘 だった。しかし打ち明けて話せば分かって くれるだろう。彼はそう思ってそこへ座っ た。 すると初めて静かに花嫁が顔をあげた。 あと高一郎は言った。お前。 花嫁は両手をついた。 どうぞしてくださいましと花嫁が言った。 私がどのように変わったか見ていただき たかったのです。 大一郎はまさかとつぶやき、呆然と目を 見張った。 おそばに使えてみてそれでもお気に入られ なかったら諦めるつもりでした。決して お騙し申し上げたのではございません。 あなたのお目でがどう育ったかを見て いただきたかったばかりでございます。 そして花嫁は保した。 してくださいますでしょうか? 夢を見てるようだと高一郎は言った。 すると明谷の娘というのは よ野さんは稽古友達ですの。 母は知っていたのか? はい。 花嫁はすり上げた。 どうぞ感してくださいまし。私、あなたの 妻になりたい一心だったのですわ。 高一郎は上がった。すっかり上がって しまい、どう答えていいか分からなくなっ た。 そこで鼻が詰まったような声で言った。 お前は誓を破らなかった。つまり私の ところへ戻ってきたわけだな。 そして素早く指で目を吹いてバカなことを 言った。 三星様はまだあるだろうね。もう一月になるなと竜門がその息子に言った。もう 1 つになる。うん。どうやら無事に収まったらしいな。ええと息子が答えた。無事に言っています。俺の言ったことが思い当たったかねと父親が言った。 結婚してしまえば女は皆同じようなものだ ということがさ。 さよと高一郎は落ち着いていった。 おっしゃる通りでした。 女は同じでしたよ。 女は同じ物語。 山本集郎。 お相手は小崎豊かでした。

【月イチ周五郎4】
現代のコンプライアンス的にはかなり問題アリのタイトルですが、内容は「男よりも女のほうが一枚上手」というラブコメ。肩ひじ張らずに娯楽時代劇をみる感じで聞いてください(;^_^A
時代劇の衰退が言われる昨今、こういう誰も傷つけない面白いだけの作品があってもよいのでは?と思います。一応キャスティングも考えてみました、、、広一郎:山﨑賢人、紀伊:浜辺美波、要平:岡田准一、父:佐藤二朗、母:天海祐希or若村麻由美、地上波新春時代劇2時間SPでどうでしょう?

https://youtu.be/v8XNf2o_ua4 https://youtu.be/ynT8Vm1EHCI https://youtu.be/rJziPyRbHpU https://youtu.be/M82NdC-9BKY https://youtu.be/tjFip1uQIoo https://youtu.be/jFVr0olN8vk https://youtu.be/6nkGuas0Rm4 https://youtu.be/3jqlxFXXs4c https://youtu.be/tiGXa7_3FiU https://youtu.be/PnOGzSH2Kh8 https://youtu.be/hJfQXIhCcZQ https://youtu.be/gyYihvLrYLA https://youtu.be/6L7aGzB8YGM https://youtu.be/h193DwQ7ToI