史上最低「紅白歌合戦」視聴率34.3%の衝撃 業界人も驚いた“最悪の失敗”とは〈dot.〉

昨年大みそかに放送された「第72回NHK紅白歌合戦」は、午後9時からの第2部の平均世帯視聴率が34.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と過去最低を記録した。

そもそも、今年の「紅白」は長年のライバルである日本テレビの「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないシリーズ」が放送を休止するといった“追い風”もあり、当初の下馬評では高視聴率も期待されていた。

 だが、ふたを開けて見れば高視聴率どころか、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて初の無観客開催となり、演出も簡略化された前年よりも6ポイントもダウンすることとなった。

 民放テレビ局の情報番組スタッフは語る。

「昨年よりステイホームの機運は下火になっていたとはいえ、2021年も12月からはオミクロン株の脅威が広がってきたこともあり、おととし以前と比べたら年末年始を家で過ごしていた人は多かったはずです。加えて、『ガキ使』SPの放送休止などもあったわけですから、『紅白』の視聴率に関しては“大惨敗”といっても過言ではないでしょう」

 その原因について、ネット上でも「出場歌手の選定が若者に媚び過ぎている」「無駄な演出が多すぎて見にくい。純粋に歌を楽しみたい」「白組、紅組の司会を廃止して多様化を進めると言いつつ、紅白対決はそのままで矛盾を感じる」などさまざまな意見が飛び交っている。前出の民放情報番組スタッフはこう話す。

「昨年秋ごろは、業界内では『今年の紅白は高視聴率が期待できそう』との見方が強かったのですが、年末に向けて出場歌手が発表されて徐々に番組の全貌が明らかになってくると、“大丈夫か?”と不安の声が高まりました。さすがに過去最低視聴率までは予想できませんでしたが、放送前から苦戦を予想する声は少なくありませんでした」

 そのうえで、こう続ける。

「NHKさんが将来的な受信料獲得の観点から『紅白』の若者シフトを強化しているのは今に始まったことではありませんが、今年は特にその傾向が顕著でした。動画配信などで人気のまふまふさんや人気シンガー・ソングライターの藤井風さんは、ネット世代にはそれなりの反響が見込めても、視聴者層を考えると大きな目玉とはならない。それは番組サイドも分かっていたはず。それに『紅白』恒例の大物歌手のサプライズ投入も今年は“時間切れ”で不発になったことがすでに12月30日の時点で制作統括のチーフプロデューサーの口から明かされていました。松田聖子さんの出場辞退が発表された時点で、『今年の紅白はヤバそうだ』という空気になっていました」

その結果は、平均世帯視聴率だけでなく、瞬間最高視聴率の低さにも表れている。

「瞬間視聴率が40%を切ったのも衝撃的でした。“テレビ離れ”が叫ばれる中、そもそも『紅白』という番組自体に関心がないという人が増えている証左ではないでしょうか。ここまでくると、来年以降の『紅白』の存在意義も問われる可能性すらあります」(同)

 また、テレビ番組を手掛ける放送作家からはこうした意見も。

「ジェンダーレスを意識して紅組司会、白組司会を廃止して『司会』に呼称を統一しておきながら、男性歌手は白組、女性歌手は紅組という従来の枠組みや投票により優劣を競う歌合戦形式はそのままというところが、いかにも中途半端でコンセプトがよく分かりません。それに、たたでさえ演歌勢が減っているのに氷川きよしさんや水森かおりさんらにオリジナル曲でない懐メロを歌わせたのも微妙でした。それなら以前のようにオリジナル曲を歌うパートも作ってあげて、懐メロは特別企画として別枠でやればいい。ただでさえ、『紅白』は歌を楽しむ以外の無駄な演出が多いイメージがあるなかで、打つ施策がことごとく逆効果になったと思います」

 目新しさばかりを追求した結果、長らく番組を支えてきた“偉大なるマンネリ”の良さも失われてしまった紅白。まさに迷走状態に入った観もあるが、来年の巻き返しはあるのだろうか。