この度公開された本編映像は、本作の原題「Never Rarely Sometimes Always」となったプランドペアレントフッド(全米家族計画連盟)での印象的なシーン。(プランドペアレントフッドとは、世界的にリプロダクティブヘルス/ライツを提供する非営利団体のアメリカ支部で、全米で約600の施設を運営しており、様々な種類のマイノリティや生活困窮者の利用も多い。)

実在の施設で撮影されたこのシーンは、主人公のオータムが中絶手術を受ける前に、診察室でカウンセラーから「相手との関係もきかせて。とても大事なことなの」と問診を受ける。立ち入った質問をするわよ、との前置きのあと「答えは4択。一度もない、めったにない、時々、いつも。テストじゃないから。」と優しく語りかけるカウンセラーに、終始表情が硬いオータムも「オッケー」とやっと口を開く。

「この1年間で相手がコンドーム装着を拒否した?」
「相手が避妊の邪魔をして妊娠させようとした?」
「相手に脅された?」
「相手に殴られたり、暴力をふるわれた?」

「一度もない、めったにない、時々、いつも」から一つ選び、慎重に答えていくオータム。答えづらい質問が続くこのシーンは、緊張感のある撮影となることが予想されたが16ミリによる長回しで撮影された。そこで監督は、少しでもオータム役のシドニーの負担を減らすため、静かで落ち着ける部屋と時間を用意し、後半のシーンに集中できるよう、質問には自身の家族のことを答えるよう伝えたという。キャストへ徹底的な配慮が行われ撮影されたこのシーンは、原題にもなった印象的なシーンでもある。

これらの質問への回答が4択であるのには理由がある。それは、当事者が答えやすいようにという意図だけでなく、セカンドレイプを防ぐため。性暴力にあった女性からその詳細を語らせることは、セカンドレイプにあたる恐れがあり、当事者本人を傷つけてしまう可能性がある。詳細を聞くことは中絶手術を行うには必要ない情報だが、暴力の有無は再発防止のために必要な情報。施設で働く人々は、徹底されたプロフェッショナルな態度で、やるべきことをする…。そんな姿勢が、実際に中絶手術を受けにきた女性たちへの“優しさ”なのだ。

また、実際にセンターで働く女性がカウンセラーとして出演したことで、よりリアリティのあるシーンとなった。

監督は、メディカル・センターに勤めるケリー・チャップマンから「エリザ、中絶は決してただの危機ではないの。家の中で起こっている秘密は、20分では解決できない。妊娠、セクシュアルヘルス、パートナーによる暴力、暴力から安全を確保する方法、すべてが絡み合っている」との話に胸を打たれ、このエピソードを物語に取り入れたと語っている。「映画が信頼できるものであってほしい」との願いから、この場面のような会話をこれまで何度もしてきているケリーを、カウンセラー役としてキャスティングしたと明かした。

本作では、こういったやりとりを過度な演出一切なしで忠実に再現したことで、オータムの絞り出した回答とその隠された想いに、観客が惹きつけられるシーンとなり、「原題の意味が分かったシーンで号泣した」「この言葉の意味を絶対に忘れない」という熱い感想がSNSでは飛び交っている。

少女ふたりの旅路は、どの国にも通じる思春期の感情と普遍的な問題をあぶり出し、17歳の少女の瞳を通して浮かび上がるこの世界をみずみずしく活写する。現代を生きる私たちの心に刺さる、少女達の勇敢な旅路を、是非劇場にてご覧ください。