タイ北部チェンライ郊外の洞窟に閉じ込められた少年ら13人。世界が注目した救出劇に、大阪の建材会社が開発したタイルが一役買ったことはあまり知られていない。そのタイルは、暗闇の中にほのかな光をもたらした。
6月末、大阪市旭区の建材会社「コドモエナジー」社長の岩本泰典さんにタイの現地法人の社長から連絡が入った。洞窟に入ったサッカーチームの少年ら12人とコーチが増水により出られなくなっているという。洞窟は水に満たされ、救出も難しい。
岩本さんは「『ルナウェア』が最適だ。明かりになり、水にも強い。子どもたちを助けられる」と考えた。ルナウェアは同社が開発した磁器製の蓄光タイル。太陽や蛍光灯の光を蓄えて徐々に放出する。蓄光顔料は水に触れると分解して光らなくなるが、ルナウェアはガラスで覆っているため、ぬれても性能が落ちないのが特長で、最大で約12時間光る。開発に約10年かけた自信作だ。
大きさ4・5センチ四方のもので、価格は約5千円。岩本さんはタイにある在庫数百個をありったけ現地に送るよう指示。さらに自身も数百個のタイルとともに、タイへと飛んだ。洞窟の入り口から少年らが避難している場所までは約5キロ。ルナウェアはダイバーの動線となるケーブルを敷くときに明かりとして使われたり、ダイバーが足ヒレにつけて、お互いの位置を確認するのに使われたりした。
そして遭難から18日目の7月10日に全員救助された。岩本さんは8月上旬に再び現地を訪れ、少年らに面会。ルナウェアを無償で提供した岩本さんに、少年らは手を合わせて感謝してくれたという。