Hachi Production
Videographer/Edit Hachiro Miyata
https://www.hachipro.jp
web shop https://hachipro.buyshop.jp/
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予告編では2016年完成予定といっていますが、今回は(も?)ちょっと永い時を必要としてしまいました。

長らく穂高の映像を撮ってきた中でこれだけは撮ることが叶わないと思っていたものに星空がある。
山で幾度も目にした息をのむような満天の星空… だが星たちの放つ光はあまりに微弱で当時のビデオキャメラでは到底映せるものではなかった。
ところがスチール写真の世界ではデジタルカメラの性能が飛躍的に高まり、それまでではあり得なかった高感度での撮影が可能となってきていた。
一方で微速度撮影という映画の撮影技法がある。
これはインターバル撮影とかTimelapseとも云われる方法で、例えば花の開花や流れ行く雲などの長時間の現象を一定間隔でひとコマづつ撮影することによって時間を短縮して表現する手法である。
そしてある時、このデジタルカメラによる高感度撮影と微速度撮影方法を用いれば美しい星空を映すことが可能となることを知った。
つまり数百枚(時には数千枚)連続して星のスチール写真を撮影し、その写真をつなぎあわせて再生することによりひとつの動画とするのである。
私は胸を高鳴らせて夜空へとカメラを向けた。
しかしこの微速度撮影というもの、せいぜい一晩に1カットか2カット程度しか撮影出来ないし、数時間におよぶ撮影時間のあいだにどのような気象変化が起きるかもわからない。
そしてカメラのセッティングやオペレーションも最初のころはツボがわからず手探りの状態で、幾度もの失敗の夜を過ごした。
通常、穂高の山の中でひと晩撮影に費やすのは大変なことであるし、そこでトライアンドエラーを繰り返すとなるとなかなかに難しいことである。
だがそこは年間200日を山で暮らす身、私は可能なかぎり夜な夜なカメラをセットし続けた。
天気が急変してカメラをずぶ濡れにしてしまったり、酔っぱらってカメラをセットしたことそのものを忘れてしまったり、セットしたはずの場所から三脚ごと吹っ飛ばされていたこともあった。
やがて「穂高の星空」を表現しようとするのなら、山の姿も同時に映しこむことが不可欠であるので月明かりが重要となることもわかりはじめた。
ただし満月では明るすぎるし三日月では光量が足りないので、星空と雪山とを微妙なバランスで映像として表現しようとすると、それが可能な夜はひと月にせいぜい数日程度となってしまう。
しかも天気の悪いことが多い冬にそれを撮ろうとするとなかなかにチャンスは訪れなかった。

星空の映像に取り組みはじめていつしか長い年月が流れた。
撮影結果がすぐにはわからない微速度撮影では、後処理で浮かび上がる山の姿に私自身毎回ワクワクしている。
多くは思い描いた結果を得られずがっかりするのだが、たまによっしゃーとガッツポーズが出たりする。
まぁ撮影結果がどうであれ、そうして夜な夜な穂高と向き合えることはこの上ない幸せである。
(2013年 宮田八郎 記)