「薔薇の殺意~虚無への供物」1997年制作

日本の探偵小説における三大奇書のひとつとされる中井英夫(塔晶夫)の代表作「虚無への供物」のドラマ化。(第1話/全3話)

奈々村久生 深津絵里
氷沼蒼司 仲村トオル
氷沼藍司 遠藤雅
氷沼紅司 川本淳一
川西かつ枝 佐々木すみ江
藤木田 誠 北村和夫
牟礼田 俊夫 吹越満
八田晧吉 國村 隼

演出 平山秀幸
脚本 奥寺佐渡子
音楽 藤原マヒト
制作 NHK(共同制作・ケイファクトリー、NHKエンタープライズ21)

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放送当時、家庭用のVHSで録画したもので、非常に画質が悪いですが、2018年時点でソフト化もネット配信もされていないようなので貴重な映像だと思います。

全体の流れはほぼ原作に忠実ですが、あまりに緻密で複雑かつ膨大な物語のため、こまかなディテールは省かれています。
そのため、多くの暗号・符号が絡み合う衒学趣味の色彩や、現実世界と異世界を行き来するかのような幻想的な趣きは薄れ、一般的な謎解きミステリーのように描かれてしまっているのが残念です。

それでもテンポの良さと意外性のある展開はそれだけでも見応えがあり、純粋なミステリーとして十分に楽しめると思います。最後の告白シーンでは、視聴者(傍観者)に投げかけられる言葉が重く突き刺さります。

【三大奇書】
小栗虫太郎『黒死館殺人事件』
夢野久作『ドグラ・マグラ』
中井英夫『虚無への供物』