“賞味期限は1年” NYタイムズ「今年行くべき52か所」選出で注目の長崎 観光浮揚へどう生かす
【住】長崎の暮らし経済ウイークリーオピニオン。今回も平家達史NBC論説委員とお伝えします。【平】今回のテーマは「長崎観光、勝負の年」です。1月にもお伝えしましたが、アメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」の「今年行くべき52か所」に長崎が選出されました。【住】記事で、長崎は原爆からの復興を示す「レジリエンス(不屈の精神)」と「現代的な進化」の融合を持つ街だと評価され、「グラバー園」などの観光地だけでなく地元の食や文化も実名で紹介されて大きな話題になりましたね。【平】はい。長崎が選ばれた理由として「核拡散の脅威が世界中に広がる中、旅行者が訪れる強い理由がある」とも評価されています。さらに、その後の続報として新たなデータが入ってきました。読者がこの記事から目的地として「保存」した数のランキングで、長崎はなんと「世界5位」に入っているんです。いま、長崎は世界中から非常に高い注目を集めています。【住】世界5位ですか!ますます期待が高まりますね。【平】そうですね。去年と比べて今年は観光イベントが少ないため、今回のニューヨーク・タイムズの件は大変嬉しい話題です。【住】選ばれたことで、どのような影響が予想されますか?【平】一足先に選ばれた山口市の例を見ると、経済効果は最大27億円にのぼり、特に欧米からの来訪者が1.5倍から2倍に急増しました。一方、「外国人延べ宿泊者数」のデータを見ると、現状、長崎県内は韓国や台湾などアジア圏からのお客様が中心です。さらに詳細なデータを見ると全国の外国人宿泊客に占めるアメリカ人の割合は「10.5%」、オーストラリア人は「4.1%」なのに対し、長崎市はアメリカが「8.7%」、オーストラリアが「2.9%」と全国平均を下回っています。2024年の長崎市における外国人の延べ宿泊者数は約36万人でしたが、このうちアメリカ人は約3万1000人、オーストラリア人は約1万人にとどまっています。【住】なるほど。そこが課題でもあり、伸び代でもあるわけですね。【平】その通りです。ニューヨーク・タイムズはアメリカはもちろんのこと、カナダ、イギリス、オーストラリアといった英語圏で広く読まれています。つまり、長崎市にとってこれまでシェアが低かったこうした国々からの来訪に、今後大いに期待できるということなんです。【住】まさに最大のチャンスですね。この好機を逃さないために、長崎県はどのような動きを見せているのでしょうか。観光担当の小宮課長にお話を伺いました。
NYタイムズ選出を観光浮揚につなげ 長崎県の考えは
長崎県文化観光国際部インバウンド推進課・小宮健志課長(参事監)「今年1月6日早々にですね、ニューヨーク・タイムズに掲載されたということで、今後は欧米からのお客様、またはオーストラリアからのお客様が増加するということで、大変期待をいたしております」欧米やオーストラリアからの観光客誘致に向けては。長崎県文化観光国際部インバウンド推進課・小宮健志課長(参事監)「直行便がない現状において、欧米からのお客様やはり東京・大阪・京都といった(直行便がある)ゴールデンルートには多くお見えになっていらっしゃいますので、そういったゴールデンルートからいかに九州長崎へ誘客を図るかというところが今後の課題だと思ってます」欧米客の受け入れに向けて、長崎県はすでにキャッシュレス決済の導入やメニューの多言語化を進めていて、これまでに400件が完了しています。長崎県はNYタイムズに掲載された場所だけでなく、県内の世界遺産にも再び光が当たるよう取り組みたいとしています。長崎県文化観光国際部インバウンド推進課・小宮健志課長(参事監)「2018年に(潜伏キリシタン遺産が)世界遺産登録されて以降、やはり2019年2020年とお客様は多くお見えになりましたけども、近年では少し減少傾向にあるということですので、2028年の10周年に向けてまた機運を醸成して盛り上げていきたいと思っております」「欧米豪のお客様は滞在日数も長くありますし、離島半島地域にもキリスト教関連遺産ありますので長崎県内の滞在日数を延ばしていく」【住】「一過性のものにせず継続することが大事」と話されていましたね。NYタイムズの選出をフックにして、キリシタン遺産など長崎県内全体へ足を延ばしてもらおうという狙いですね。【平】はい。長崎県が公表しているデータを見ても、潜伏キリシタン関連遺産の来訪者数は世界遺産登録年をピークにコロナ禍もあって苦戦していましたから、欧米やオーストラリアからの来訪者を増やすためにも、この長崎県の戦略は非常に理にかなっていると思います。大切なのは東京・京都・大阪にはなく、長崎にはあるものについて磨きをかけるということだと思います。そうでなければ長崎までわざわざ足を運んでいただけません。例えばそれは長崎特有の歴史・文化や自然、食だと思います。特に豊富な水産資源を欧米豪の観光客のニーズを捉えた形でどう提供するかについては、まだまだ改善の余地があると思います。
“レジリエンスなまち”評価の長崎市が取り組むべきは
【住】一方で記事で直接舞台として取り上げられた「長崎市」はどうでしょうか。【平】ニューヨーク・タイムズへの掲載を受けて、2月の長崎市の会見では欧米やオーストラリアからのインバウンド拡大のため平和・観光魅力発信事業費として2,000万円の予算を充てることが発表されました。具体的には、国内外メディアの招へいや、映像制作・情報発信、アメリカの現地でのプロモーションが事業として示されました。【住】この取り組みについて、平家さんはどうご覧になりますか?【平】あえて厳しいことを言わせていただきますと、相変わらず「プロモーションをやれば良い」という考え方から脱却できていないように感じます。観光客を呼ぶにしても、考えるべき順番があるんです。まず「ターゲットは誰か」今回は欧米豪のお客様ですね。次に「長崎に来て何をしてもらい、何にお金を使ってもらうのか」。そして最後に「そのために何をするのか」。この順番で考えて行動しないといけません。【住】単に発信するだけではなく、具体的な消費の目的と受け入れ態勢をセットで考えるべきだということですね。【平】長崎市の鈴木市長は、以前より「サステナブル」、「グローバル」「デジタル」をキーワードにされていますが、今回の件をこれに当てはめると、欧米やオーストラリアに訴求し、「グローバル」に長崎の良さを知ってもらい、継続的、つまり「サスティナブル」に長崎に来ていただき、来崎者の利便性を高める「デジタル」分野の拡充を行うということだと思います。長崎市の経済再生アクションプランにおいては、多言語対応ガイドの育成、多言語通訳システムを活用した観光案内機能の強化、民間交通事業者におけるタッチ決済導入の支援など、受入体制の充実を図ってきていますが、プロモーションだけでなく、多言語化対応、キャッシュレス化、国際線、二次交通や付加価値の高い着地型観光商品の拡充などをさらに進めていく必要があると思います。欧米やオーストラリアの旅行者が「何を求めているのか」「何に不自由を感じているのか」といったことを他地域の事例も調べて、長崎に足らないものを早急に補わなければならないと感じます。いつも申し上げていますが「マーケット イン」の視点が必要です。ニューヨーク・タイムズに選ばれた鮮度は今がピークで、賞味期限は1年です。紹介された民間施設に頼り切って、手をこまねいていれば、このビッグチャンスは通り過ぎてしまいます。今後の長崎の観光のためにも今年は「勝負の1年」になると思います。【住】世界的評価を、確かな熱気と経済効果につなげて欲しいですね。ウイークリーオピニオン、ここまで平家達史NBC論説委員とお伝えしました。
詳細は NEWS DIG でも!↓
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2513065
