【スカッとする話】3姉妹育てる私に離婚宣言の夫「愛人と暮らすからガキ連れて出ていけw」私「そう。長女、三女、行くよ」夫「次女は?全員連れてけ母親だろ!」私「無理よ、だって…」【修羅場】
今日から愛人と一緒に暮らす。お前は娘を 連れて出ていけ。 夕飯の準備をしていた時、リビングに入っ てきた夫の隣には見知らぬ女がいた。 3姉妹が揃っている前で放たれた突然の 言葉に私は手にしていたお皿を落としそう になった。 夫の突然の宣言に思考が一瞬で止まる。 夫の声は妙に穏やかで、まるで当たり前の ことを告げているかのようだった。 その隣で腕を組む女、夫の愛人だという その人はやかな髪を揺らし、ブランドの バッグを肩にかけ、勝ち誇ったような笑を 浮かべている。 今すぐに出ていけってどういうこと? あまりにもひどいんじゃない? 私はできるだけ冷静に感情を抑えていった 。 そのしけさが帰って空気を張り詰めさせる 。 背後では娘たちが息を飲んだまま固まって いた。 父親が見に知らぬ女を連れて帰り、自分 たちが家を追い出されるかもしれない。 その不安が大きいのだろう。 そんな緊張感の中、愛人は空気を読もうと もせず、軽い口調で言葉を放つ。 あなたたちが出て行ってくれないと私ここ に住めないんだから仕方ないわよね。それ に奥さんって言ってもう女として終わっ てる感じじゃない?やっぱり女は見た目も 大事だよね。 預けるように笑うその声に長女の肩が びっくりと震えた。 娘たちの前でそんなことを言える神経が私 には理解できなかった。 愛人はわざとらしく夫の腕に絡みつき 見せつけるように体を寄せる。 その時夫が淡々とした声で告げた。 この家は俺の名義だ。土地も建物も全部な 。だから荷物をまとめて早く出ていけ。 あまりにも滑らかに放たれるその言葉に私 は静かに目を細めた。 夫の目には私たちへの思いなど人かけらも なかった。 あるのはただ自分の欲望と都合だけ。 あなたの気持ちは分かったわ。もう何を 言っても無駄なんでしょう。お望み通り 私たちは出ていくわ。 私は長女と3女に声をかけ家を出る準備を 始めた。 心配そうに私を見つめる2人にできる限り 明るい声で微笑む。 この子たちに不安な顔は見せたくなかった 。 お母さん、私たちどうなるの? 三女が涙をこらえながら問う。 その小さな声が胸に刺さった。 大丈夫よ。お母さんに任せて。2人に大変 な思いはさせないわ。 そう言って微笑えんだその瞬間、夫が眉間 にシを寄せて怒鳴った。 2人だけじゃないだろ。事女も連れて行け 。お前母親だろ? その声にさっきまで余裕の表情をしていた 事女の顔が一瞬にして不安に染まる。 いい、私は長女と3女だけを連れて出て いくわ。だって事女は 私は木下洋子 44歳2年前に今の夫ずれ 再婚し の娘の母になった。 全部であり2人の娘の父親が交通事故で 帰らぬ人となったのはもう随分前のこと。 あの頃は本当に生きつく暇もない毎日だっ た。まだ幼かった娘たちを守るため私は ガムシラに働き泣く暇も惜しんで前を向い てきた。 そんな日々が10年以上続き、ようやく 少しだけ心の余裕ができた頃。娘たちは それぞれ学校や部活で忙しく、私も ようやく母親から1人の人間に戻りつつ あった。 もう一度誰かと肩を並べて歩む人生も悪く ないかもしれない。 そんなことを考えていた時、豪と出会った のは共通の知人を返した食事会。 私とは同い年で彼にも1人だが娘がいた。 お互い子供を持つ親という共通点が最初の 距離を一気に縮めてくれた。 初対面の印象はとても良く柔らかい笑顔。 落ち着いた話し方。娘の話を少しながら 話す姿に張り詰めていた心がすっと緩んで いくのを感じた。 彼もまた娘を1番に考えていると話し、 その優しさが嘘には聞こえなかった。 俺も娘がいるから分かるよ。家事も仕事も 大変だよな。でも1人で頑張ってる女性 って正直尊敬するよ。 そう言われた時、久しぶりに誰かに認め られたような気がした。した心なんて感じ なかったし。彼の真っすぐな言葉が私の心 にじんわりと染みていく。 何度か食事を重ねるうちに豪は私の娘たち にも丁寧に接してくれた。 特に16歳だった四春期抹中の長女ミスに は目線を合わせて穏やかに話してくれた。 お母さんって本当に素敵な人だね。僕とも 仲良くしてくれると嬉しいよ。 その言葉を聞いてミすは照れ臭そうに笑い 、私も思わず笑がこぼれる。 ミスにはお母さんなんか可愛いじゃん からかわれたけど 娘たちのことも大事にしてくれると感じて 安心できた。 彼の優しさがただ素直に嬉しい。気づけば 豪の存在は私の心の中で大きくなっていた 。 そして再婚を真剣に考えるようになった時 、私は娘たちにきちんと話をした。少し 戸惑いながらも受け入れてくれた娘たち。 お母さんが幸せならいいよ。 そう言って照れ臭そうに笑ったのは13歳 の末えっこの彩佳だった。 私は嬉しくて涙が出そうになった。 豪の連れ後は当時15歳のユり。初めて 会った時は急に他人と暮らすことになった 不安からか、あまり嬉しそうな表情は見せ なかった けれど、どこか豪に似た可愛らしい子で豪 も優しく声をかけていた。 新しい家族になるんだから。ゆっくり慣れ ていけばいい。 それが2年前のこと。 私たちは席を入れ、5人家族として新しい 生活を始めた。 私には守らなくてはいけない娘が1人増え て可愛らしい3姉妹になった。 最初のうちは全てが順調に見えた。 は仕事から帰ってくるとただいまと笑顔で 玄関に立ち、娘たちもお帰りと明るい声を 駆け合っていた。 これからみんなで新しい家庭を作って いこうな。 そんな豪の言葉を信じていた。 きっと彼も同じ気持ちでいてくれると、 あの時の私は疑いもしなかった けれど、そんな幸せな時間は続くことは なく、入籍から数ヶ月も経たないうちに豪 の態度は悪い方へ変わっていく。 最初に違和感を覚えたのは豪が家のことを 何ひつうとしなかったことだ。 なのに洗濯物を畳むのも皿を片付けるのも ゴミを出すのも全部私。 今日は俺疲れてるんだ。明日も早いんだよ 。休ませてくれ。 そんな言葉を繰り返しながらソファーで ビールを飲んでテレビをつける彼の姿を何 度見たことか。 が家事をしてくれたのは入籍してから片手 で数えられるほどしかなかった。 それも私が体調を崩した時に仕方なく文句 を言いながらやった程度。しかも娘たちが 部活や塾から帰ってきたらすぐま家事を 交代しようとした彼を具合の悪い私が止め たこともある。 そして結婚前はあんなに大切にしてくれた 娘たちにも全く関わろうとしなくなった。 驚くほど無関心で家の中の空気まで冷たく 感じるほど。 それでも私は新しい環境になれるには時間 がかかると自分に言い聞かせた。 娘たちの前で豪を悪く言うことはしたく なかったし、せっかく縁あって再婚したの だから家族としてやっていきたい。その 思いだけで私は踏ん張っていた けれど彼の態度は日を負うごとにひどく なっていく。 連絡もなしに外で食事を済ませて帰って くる日が増え、夕食を用意しても食べてき たの一言で終わり。 週末も会社の付き合いと言っては出かけ、 深夜になっても帰ってこないことも珍しく なくなった。 ゴ、今日も帰りは遅いの? 思い切って尋ねたことがあった。 うーん。ま、飲み会るし遅いんじゃないの ? まるで天気の話でもするような軽い調子の 返事だった。 そのままではいけない。そう思った私は 少しでも家族の繋がりを取り戻そうと努力 した。 明日は娘たちの塾と部活が重なってるの。 送迎を手伝ってもらえると助かるんだけど 。 じゃあお前が行けばいいじゃん。母親だろ 。俺そういうの無理だから。 ほんの少しでも考えてくれるかと期待した 自分が惨目に思えた。 は振り返ることもなく無増さに靴を履いて 玄関を出ていく。 扉が閉まる音だけが夜けに大きく響いた。 あの頃の優しい彼はもうどこにもいなかっ た。 の娘であるユりはそんな父の姿を見ても 特に驚いた様子は見せない。 それどころか彼の話をまるで当然のように 受け入れ時折り私の娘たちを見下すような 目をしていた。 その空気を子供たちは敏感に感じ取ってい た。 やっぱり本当のお父さんじゃないからかな 。 彩かが小さな声でそう呟いた夜を私は今で も忘れられない。何も言い返せなかった。 母親として守りたかったのに私が選んだ 再婚相手が娘たちに寂しい思いをさせてい たのだ。 その頃からの外はさらに増え、家の中に彼 の気配がない夜も多くなった。 とかしなくてはそう思っても現実は何も 変えられないまま過ぎていく。 ゴトの生活が始まってしばらく経った頃私 が1番手を焼いたのはユりとの関係だった 。 彼女は最婚当初から私に対してあからさに 距離を取っていた。 それはある意味当然のことなのかもしれ ない。いきなり見知らぬ大人がお母さんに なるなんて簡単に受け入られるはずがない 。 だから私は焦らず時間をかけて少しずつ 信頼を築いていこうと考えていた けれどその思いは彼女には全く届かなかっ た。 ねえ、お父さん、どうしてこんな人と再婚 したの? 初めて彼女にそう言われたのは、まだ 引っ越してきて間もない。ある日の夕食の 席だった。 テーブルの上には私が作った唐揚げと サラダに味噌汁、5の好きな煮物。家族 みんなで食卓を囲を私が心のどこかで少し 楽しみにしていた日だった。 唐突な言葉に豪は驚いたように橋を止め、 苦笑いを浮かべた。 こら、そんなこと言うんじゃないよ。 そう言ってくれたものの軽く流すように 話題を変えてしまった。 私は何も言えず、ただ黙って茶碗を見つめ ていた けれど胸の奥にはユりの言葉が深く 突き刺さりしばらく抜けなかった。 そしてユりの言葉はそれきりでは終わら なかった。 むしろ時間が経つごとにエスカレートして いったのだ。 本当よ子さんって地味な顔してるよね。 もっと綺麗な人だったらお父さんも鼻が 高かったのに。 リビングのソファーに座ってテレビを見て いた時、不に背後からそんな声が聞こえた 。その場にはミすずと彩佳もいて、2人は 顔を怖ばらせ心配そうに私の方を見た。 私が振り返るとユりは悪びれる様子もなく スマホをいじりながら肩をすめる。 だって事実じゃん。見た目って大事なんだ よ。世の中顔が良くないとうまくいかない の。よ子さんみたいな人じゃお父さん もかわいそうだよね。 まるでからかうような調子だった。 胸の奥が好きりといたんだが、私はできる だけ穏やかに言葉を返した。 ゆりちゃん、そんなこと言わないで。私 だって悲しくなるわ。 けれど彼女は鼻で笑って見せた。 言いすぎ。本当のこと言っただけなのに。 その瞬間ミスと彩佳の顔が見るみるうちに 赤く染まった。 悔しさと怒りをこらえて唇をギュっと噛ん でいる。 ユりの見た目史場主義はやがて私だけで なく娘たちにも向けられるようになった。 ミすもさ、もうちょっと痩せだ方がいいん じゃない?私だったら恥ずかしいレベル。 彩佳もよ子さんに似て地味顔だしさ。 あの顔じゃ将来苦労するよ。世の中見た目 がいい方が絶対うまくいくんだから。 その言葉はまるで刃物のように鋭く、何度 も私たちの心に突き刺さった。 娘たちの表情にも深い影が落ちていった。 私はユりがそんなことを言うたびに何度も 注意した。 そういう言い方はやめなさい。人の容姿を けなすことは間違ってる。あなたも家族な んだから、もう少し言葉に気をつけなさい 。 しかし彼女は聞く耳を持たなかった。 家族ふざけないで。血も繋がってないのに なんで家族とか言えるの? その一言で胸の奥で何かが静かにひびれた 。 ああ、この子の中では私はいつまでも よそ者のままなんだ。そう感した。 といえばそんなやり取りを横で聞きながら めんどくさそうにため息をつくだけ。 母親なんだから揉めないようにしっかり やってくれよ。うるさいのはごめんだわ。 その冷たい言葉を聞いた瞬間、娘たちを 守るためにこの人に頼ろうとはもう思え なくなった。 気づけば私とユりの間には深くて暗い溝が できていた。 どんなに穏やかに話しかけても近づけば 近づくほど彼女は拒絶の言葉で壁を作る。 その距離は日に日に広がり、同じ屋根の下 にいながら別々の世界で生きているよう だった。 娘たちもまたユりとは心の距離を置くよう になっていった。 姉妹というにはあまりにもぎこちなく挨拶 さえかわさない日も増えていく。 ユりのトのある態度が家の空気を少しずつ 冷たくしていった。 娘たちの前で笑顔を作ることが少しずつ 難しくなっていったある日。 その日も私は仕事を終え、慌たしく夕飯を 用意していた。 時計の針は19時を過ぎていたが、午後 からは連絡がない。もう慣れてしまった この状況にため息が出そうになったその時 玄関のドアが開いた。 ゴー帰ってきたの?早かったのね。 声をかけながらくり向いた瞬間、私は ゆっくりと手を止めた。 そこに立っていたのはゴト、そして見知ら ぬ女。あやかなロングヘアにブランドもの バッグ。派手な化粧をしてまるでこの家の ア字のようにふテしくリビングへと入って くる。 そして私を上から下まで寝みするように 眺めた。 こちらどちら様? 思いの他私の声は落ち着いていた。 俺の彼女わかなだよ。 豪はあっさりとそう言い放った。そして口 の橋をわずかに上げて続ける。 今日からわかと一緒に暮らす。お前は娘を 連れて出ていけ。 その言葉が部屋の空気を一瞬で凍らせた。 私はわずかに目を細めた。怒りも悲しみも 湧いてこない。ただ予想していた未来が 少し早く訪れただけ。 今すぐに出ていけってどういうこと? あまりにもひどいんじゃない? 私はできるだけ淡々と感情を抑えていった 。 そのしけさが帰って場の空気を張り詰め させる。背後ではミずと彩佳が息を飲んだ まま固まっていた。 突然知らない女を連れてきて自分たちが家 を追い出されるかもしれない。その恐怖が 彼女たちの心を縛っていた。 はそんな娘たちの同揺まるで眼中にない 様子で淡々と続ける。 この家は俺の名義だ。土地も建物も全部な 。だからそれをどう使おうが俺の勝手って ことだ。俺は若暮らす。もうこれは決定 事故。分かったら荷物まとめて出ていけよ 。 冷たい言葉を並べながらもどこか自分が 優位に立てたことへの満足が滲んでいた。 私は彼のその浅ましい表情を一瞬見ただけ で何も言わずに俯いた。 こんなおかしなことを平気でできる人に何 を言っても無駄だろう。愛も情も塔にすり 切れている。 そんな空気をもともせずなが危機として口を開いた。さんたら言い方がひどい。でもまあ仕方ないよね。だってあなたたちが出て行ってくれないと私ここに住めないんだもん。軽い調子で放たれたその言葉にすの肩がくりと震えた。娘たちの前でそんなことを言う神経が信じられなかった。 若はさらに私たちを上から下まで眺め鼻で 笑う。 それに奥さんって言ってももう女として 終わってる感じじゃない?服も地味だし髪 も手入れしてないし。ねえゴさん。 やっぱり女は見た目も大事だよね。 わざとらしく豪の腕に絡みつき見せつける ように体を寄せる。 私みたいにちゃんと自分磨きしてる人じゃ ないと男は幸せにできないんだよ。それに 自分が産んでない子供なんて必要ないしね 。 その一言で今度は彩佳が小さく息を飲み、 私の袖をぎゅっと握った。 胸の奥が痛む。私自身よりも娘たちの前で そんな言葉を聞かされることが何よりも 屈辱だった。 私は静かに彩かの手を包んでやった。 こんな人たちの言葉で子供たちの心まで 汚されたくない。 顔をあげをまっすぐ見据える。 本気で言ってるのね。何言ってんだよ。 本気に決まってるだろ。 豪は一瞬の迷いもなく答えた。その無表情 の奥にわずかな優越感が見えた。 若はその言葉に満足に笑い、号の腕に絡み ながらと大きな声で言った。 ねえ、さっさと出てってくれない?こっち だって早く新婚生活楽しみたいんだから。 その挑発的な声に私は静かに視線をあげた 。怒りも悲しみも湧いてこない。むしろ 彼女を哀れにさえ思えた。 他人の家庭を壊してまで得た幸せにどれ ほどの価値があるというのだろう。 その場で様子を見ていたユリはなぜか得意 げな表情を浮かべていた。 状況の深刻さを理解していないその幼さが 逆に痛いたしい。 豪の目には私たちへの思いやりなど 一かけらもなかった。 あるのはただ自分の欲望と都合だけ。 そして私は娘たちを連れてこの家を出ると 決めた。すでに心の準備はできている。 豪の気持ちは分かったわ。もう何を言って も無駄なんでしょ。お望み通り私たちは出 ていくわ。さ、ミすず。あやか行き ましょう。 心配そうに私を見つめる2人にできる限り 明るい声でそう言った。 この子たちに不安な顔は見せたくなかった 。 お母さん、私たちどうなるの? 彩佳が涙をこらえながら問う。その小さな 声が胸に刺さった。 大丈夫よ。お母さんに任せて。2人に大変 な思いはさせないわ。 そう言ってほむ私を豪が眉間にシを寄せて 睨んだ。 2人だけじゃないだろう。ユりも連れて 行け。お前母親だろ。 豪は怒鳴るように言い放つ。その声に今度 はユりの肩がびっくりと震えた。 そしてさっきまでの余裕の表情が一瞬にし て不安に変わる。 いいえ、私はあの子の本当の母親じゃない から連れて行かないわ。みすと彩佳と3人 で出ていきます。 私は淡々と告げ、豪の隣に立つ若なと視線 を移す。 それに ゆりちゃんが新しいお母さんとして一緒に いたいのはそっちの人じゃないの? 若は一瞬気まずそうに目をそらした。 その予想通りの反応を見て私はわずかに口 の端をあげる。 隣の豪は小さく身じろぎし、落ち着かない 様子で視線をそらした。 娘たちはピンと来ていないような様子だっ たが、今はそれでいい。夫は確実に動揺し ている。 なぜお前がそんなことを知っているのか? そういった感情が隠しきれず、きっと日汗 が滲んでいることだろう。 その反応をある意味堪能してから私は静か に息を整え、胸の奥に押し込めてきた真実 をたちの前で紐解いていく。 結婚前は全が浮気して家庭を壊したと語っ ていた。 その時の彼は真剣な表情をしていて、寂し さをにませる声が妙に胸に刺さったことを 覚えている。 だからこそ私は疑うことなく信じてしまっ たのだ けれど実際は全くの逆。前が出張の多い 部署に移動した頃から高校の同窓会で再開 した若に会うようになった。 家では家庭的な男を予想いながらその裏で は堂々と裏切りを重ねていたのだ。 として最も比裂だったのは娘のユりを 巻き込んだこと。彼は味方を増やすために ユりには全が別の男と浮気して逃げようと していると嘘を吹き込み、母親を憎むよう にしけていった。さらには若のことをよく 相談に乗ってくれる友達として何度もゆり に引き合わせていたのだ。 も豪の気を引くために優しい女を演じる ことを忘れない。ユりの星がるものを 買い与え、休日にはカフェに連れて行き、 女友達のように親しげに接し、時には母親 の悪口を遠回しに口にした。 それが繰り返されるうちにユりの心は じわじわと塗り換えられていったのだろう 。 お母さんと別れて再婚するならこういう人 がいいよな。 断るごとに行こうがユりに言い続けたこと もありは実の母親より若の方になつくよう になった。 甘やかすだけの若はユりにとって魅力的な 母親に移ったのだろう。 やがて浮気の事実は全の知るところとなり と若は慰謝料を支払うことになった。 その直後若が転勤になったことで2人の 関係は一旦途切れたけれど豪細はすでに 夫婦として修復できないほどの状態になっ ていた。 離婚の際、ユリは自分の意思で父親につい て行くと主張した。 それもそのはず。豪の嘘を信じ込まされた よりはすっかり彼の味方となっていたのだ 。 そして派手で大人びたわに憧れを抱くよう になっていた。 彼女は豪と若が一緒になり、自分と家族に なることを望んでいたのだろう。しかし 現実は違った。 離婚して若も別れた豪にとって子供を1人 で育てるのはとても面倒に感じる。 そんな彼が次に考えたのは責任を片わりし てくれる都合のいい相手を見つけること。 家事をしてくれて子供の面倒も見てくれる 。そんな火星母親代わり。それが私だった 。 彼は誠実なふりをして私に近づいてきた。 シングルファザーとして奮闘する自分を よく見せながら、 初めから私に愛情なんてなかった。面倒 ごと背負い込んでくれる相手を探していた のだ。 ユりがどうしてこんな人と再婚したのかと いった理由も分かっている。あれは父親が 若と結ばれると思い込んでいた彼女の混乱 と失望の声だった。でも実際に再婚したの は地味な私だったのだからユりの不満は だんだんと募っていく。 そして若が再び地元に戻ってきたことで 2人は再開。豪は迷うことなく関係を復活 させた。 私が知っている真実をただ淡々とこの場に いるみんなに聞こえるように語った。 豪の顔は見るみるうちに青くなっていった けど私は気にせず続けた。 若ナとゆりも視線を泳がせて落ち着かない 。 しばらくの沈黙の後、豪が低い声で呟いた 。 なんでそんなことお前が知ってるんだ? あなたと私を引き合わせた人が教えてくれたのよ。感謝しないとね。私は彼の目をしっかりと見据えた。の視線が揺れるのを見ながら数週間のことを思い出す。 共通の知人からゴさんがあなたではない 女性と親しげに歩いていたと聞かされた時 、頭の中で点と点が繋がった。 結婚してすぐに表変したこと、連絡もなく 外で食事を済ませる日々、深夜の帰宅、 家事を一切しない生活態度。 ううスは考えていたことだけど、彼が浮気 しているのだと確信せざるを得なかった。 私は娘たちを守るため、そして自分自身を 納得させるために調査を依頼した。結果は あまりにもはっきりしていた。 同じ親としてあまりにもひどい内容に一瞬 信じられなかったほど 事実としてしっかり受け止めるのに少し 時間がかかった。 私のことも少しも愛していなく私の稼ぎ まで当てにしていたと知った時はショック だったけどもう遠慮することはないと逆に 覚悟が決まった。 ゆりちゃんも連れて行けなんて言い出した のは若なさんと2人きりで暮らしたいから じゃないの。 私は静かに問いかけると豪は俯きまずそう に口をつぐんだ。 手のひを握りしめ、唇を噛みしめている。 私は彼の隣に立つ若へとゆっくり視線を 向けた。 あなたもさっき自分が産んでない子供は 必要ないって言ってたわよね。 若は一瞬だけ目を見開き、すぐに視線を そらした。 さっきまで自信たっぷりに笑っていた顔が みるみる引きずつっていく。 まるで言葉を飲み込むように口を閉ざした 。 嘘でしょ?そんなはずない。あなさん、私 のこと可愛くて大好きって言ってくれてた し、お父さんだって私が必要だから離婚し ても私を引き取ってくれたんじゃないの。 沈黙する豪と若の代わりにユりが震える声 で呟いた。 彼女は父親との顔を交互に見ていた。 ずっと信じてきた人たちが今まさに自分を 邪魔者として切り捨てようとしている。 あなたには登場する部分もあるわ。大人の 勝手な事情でこんな状況に巻き込まれたん だから。でもそれだけ。私はもうこの人と は離婚するから。 私の言葉にユりは呆然としたまま何も返せ ないようだった。 それを見て若は苛立ちを隠そうともせず鼻 で笑った。 何それ?被害しゃぶっちゃって。 私は彼女もある意味被害者だと思うわ。 1番悪いのはあなたたち2人よ。 私は厳しい表情で豪と若を見ながら短く 返した。豪がようやく思い口を開く。 バカナとやり直すのにユりが邪魔になった 。 その一言でユりの顔から血の毛が引く。 膝が震え、今にも崩れ落ちそうだった。 少しかわいそうに思ったけど、ユりからの 今までの態度を思うとそれ以上にかきに なれなかった。 私は淡々と豪に告げた。 あなたの浮気を知ってから色々準備してい たから私から言う手間は省けたわね。離婚 届けは後で送るわ。署名して提出しておい て。浮気の証拠もあるから、もちろん慰謝 料も請求するから覚悟しておくことね。 豪は顔を引きずらせ老媒した表情を浮かべ た けれど何も言い返せない。 も同じように俯き、悔しそうに唇を 噛みしめていた。 そんな2人を一別し、娘たちと静かに リビングを後にしようとした。 呆然と立ち尽くすユりの横を通りすぎた時 、ミスが立ち止まって声をかける。 もう自分で色々考えられる年齢でしょ。 今後自分がどうしたいのかちゃんと考える べきだよ。 その声には攻めるような鋭さではなく、 どこか静かな優しさがあった。 決して仲のいい姉妹に慣れたわけではない けれど、家族として過ごした時間がある から少しでも情が残っていたのだろう。 私はミずの言葉に静かに頷き、あかじめ まとめておいた荷物を持って玄関へ向かっ た。 背中の方からユりのすすり泣きがかかに 届く。でも振り返らなかった。もうこの家 に未練はない。 外に出ると夜風がひんやりと頬を撫でた。 その冷たさが不思議と心を落ち着かせる。 ミすと彩佳が両側から私の腕に手を添えた 。 びっくりさせちゃったね。でも大丈夫。 大丈夫だからね。 それは自分に言い聞かせるように娘たちを 安心させるように言った言葉だった。 私は2人の手を強く握り返す。 ここからが本当の私たちの新しいスタート だ。 家を出てから2週間が経った頃、私たちは 実家の一室を借りてようやく落ち着いた 時間を取り戻しつつあった。 浮気の証拠を掴んだ時点ですでに両親には 相談していたので家を出る時期が少し 早まったことに驚きはあったけど温かく 迎え入れてくれた。 これでやっと平穏な日々を取り戻せる。 そう思っていた矢のことだった。 豪からの怒涛の連絡が入るようになった。 娘を返せ。お前は誘拐犯だ。俺の娘を 連れ去っただろ。 豪から届く怒涛のメッセージと通話履歴は どれも一方的で攻撃的なものばかり。 メッセージの中にはユりがいなくなったと いう文字もあった。 メッセージを確認していると共通の知人 から連絡が入った。 よ子さん大丈夫?今ゴさんがあちこちで あなたの悪口ばかり言いふらしてるよ。娘 を奪われたとか言ってまるで自分が被害者 みたいに。でも誰も信じちゃいないよ。 ただ心配になって連絡したんだ。 知人の声には静かな怒りが混じっていた。 この人はあの時豪の浮気を教えてくれた人 。 今は豪の本性を知っているので浮調された 噂を信じることはなかったけど周りに噂と して広まることは悔しかった。 そんなある日の午後実家のインターホンが けたましくなり響いた。 玄関を開けるとそこには豪が立っていて髪 は乱れ顔には焦りと苛立ちが滲んでいる。 ユりを返せ。5は開光1番玄関先で叫んだ 。 近所中に響き渡るような声だった。 わざとらしく大声で騒ぎ立て、まるで自分 が被害者のように振る舞う豪その朝墓な糸 は見えていて思わず冷たい駅が漏れた。 実家まで来て何かよう? 私は淡々と尋ねた。 ユりが家からいなくなったんだ。 豪は声を荒げながらもわずかに老媒を滲ま せた。 話を聞けばユりは1週間前に家を出たきり 姿を見せていないという。連絡を試みても 応答はなく行き先も分からない。だから お前のところにいるに違いないと決めつけ て押しかけてきたらしい。 なんでゆりちゃんが出ていったか心当たり はないの?私が言うと豪は眉を吊り上げた 。 そんなの知るかよ。お前が母親を矢らして ユりをかしたんだろ。私はそんなことして ないわ。言いがかりもいい加減にして。 できるだけ冷静に返したつもりだったが、 声の橋に怒りがにむのを自分でも感じた。 豪はそれを見てます苛立ったように顔を 歪める。 お前は誘拐犯だ。俺の娘を騙して閉じ込め てるんだろう。今すぐ返せ。ま、誠意を 見せて謝るなら許してやってもいいけどな 。 豪がわざと近隣に聞こえるように叫び ながら広角を釣り上げいらしい笑を浮かべ たその時だった。 実家の部屋の奥から落ち着いた声が響く。 大声を出すのはやめて。迷惑よ。 そこに姿を表したのはユりだった。 豪をまっすぐに見つめ落ち着いた表情をし ている。え、ユり、やっぱりここにいたの か。 は出てきたゆりに少し老媒しながらも声を あげた。しかしユりは父親の慌てぶりに 一歩も引かず冷やかな声で返す。 ちゃんとメッセージも置き手紙も残していったのに何も見てなかったのはメッセージ?置き手紙って何の話だよそれ。は新底わけが分からないというように舞を潜めだったように頭を描いた。やっぱり全然私のことなんて見てなかったんだね。ゆりは静かに言った。 その声には悲しみだけでなく、どこか冷え た怒りと失望が混じっている。 どうせ私を探しに来たのだって心配だから じゃない。お金を稼ぐ人がいなくなったら 自分たちが困るからでしょ。 は言えなかった。 その沈黙はズ干しを疲れた何よりの証拠 だった。 ユリは小さく息を吐き、まっすぐ5を 見つめたまま言った。 お父さんにもちゃんと私の気持ちを しっかり聞いてほしい。それに一等して私 がここに来たのかも。 そう言って1週間前に起きた出来事を語り 始める。 が地元に戻ってきた時、彼女はすでに無職 になっていた けれどはそのことを知らなかった。 彼にとって若名は勝者で働く優秀で自立し た女性という理想像のまま だからこそ再開した途端に舞い上がり再婚 を急いだ。しかし現実を知ったのは私たち 親子を家から追い出し離婚した後だった。 豪は急に慌てて前の会社には戻らないのか と若に尋ねると浮気のことがバレて影口を 言われたのが苦痛で働くのが怖くなったと 言い訳をして一切働こうとはしない。それ どころか家事もろにせず金だけを求める その姿に豪は次第に苛立ちを募らせていっ た。 そして2人の中は急速に牽悪になり、その 誇先がユりに向けられたのだという。 高校の学費を払う余裕がない。もったい ないから今すぐやめて。お前働けよ。それ で家に金を入れるんだ。かかったな。 こう告げたのは娘を守るはずの豪身だった 。 しかも若はその横で笑いながら同意したと いう。 ユりはそれを聞いた時、背中が冷たくなっ たと言っていた。 ずっと信じてきた父と理想のお母さんが 今度は自分をお金を稼ぐ道具にしようとし ているのだから。 それでたまらなくなって家を飛び出し たどり着いたのが私たちの元だったという わけだ。 そしてユりは玄関先で土下座に近い形で頭 を下げてきた。 これまで自分がどれほどひどい言葉を吐い てきたかを1つずつあげミすにも彩かにも そして私にも涙ながらに謝罪してくれたの だ。 子さんたちはこんな私にも寄り添おうとし てくれてたのにずっとひどい態度して本当 にごめんなさい。 涙する彼女の姿を見て私はユ利を 受け入れることに決めた。 この子を大人の事情で振り回すことはでき ない。素直に謝ちを認め、謝る勇気を持て た子ならきっとまだやり直せる。 ユリの真剣な表情で話す姿を見て 1 週間前のことを思い出しているとが声を荒げた。お前そんな勝手なことをいいから今すぐ家に戻ってこい。 ユりの言葉に耐え切れなくなったのだろう。声が震えているのは怒りかそれとも焦りか。しかしりは一歩引かなかった。 父親をまっすぐに見据え、静かながらも力 のこもった声で言い返した。 勝手なことをしてるのはそっちでしょ。私 のこと邪魔物扱いしてきたくせに今度は娘 の稼ぐお金に寄ってくるなんて虫が良 すぎるのよ。 その言葉に豪の顔が一気に真っ赤になる。 子供が親に逆らうな。 隣声と共に豪の手が勢いよく振り上げられ た。 やめて。 私は反射的に体を動かし、ユりに 覆いかぶさるように守ろうとした。だが豪 の手が振り下ろされることはなく、次の 瞬間制服姿の景観が彼の腕を掴み、動きを 封じたのだ。 突然の出来事に豪は目を見開いている。 私の腕の中でユりは震えていた。 ミすと彩佳も顔を怖せ、母がそっと彼女 たちの肩に手を置いてくれる。 実は豪が押しかけてきたタイミングで私は こっそり警察へ通報していた。 が隣散らしていたおかげで警官の到着にも 気づかなかったのだろう。しかしまさか実 の娘に手をあげようとするとは思わなかっ た。 制服姿の景観がもがく豪の腕を ひねり上げる な。なんだよこれは。話せ誤解だ。 は慌てて叫んだが、すでに近隣住民が騒ぎ を聞きつけ、兵の向こうから様子を見てい た。 彼が自分でわざと大声を張り上げたせいで 全ての現場が目撃されていたのだ。 ごめんなさい。 ユりが小さな声で呟いた。私はすぐに首を 横に振り、震える彼女の背中を優しく撫で た。 あなたが謝ることなんて1つもないわ。 警官が豪を連行していく姿を私たちは玄関 先から見送った。 冷たい風が頬を撫で妙に静かな空気が 広がる。 豪の背中が完全に見えなくなった頃はふっ と肩の力を抜き小さく息を吐いた。 怖かった。 その声はかつかに震えていた。私はそっと 彼女の肩を抱き寄せる。 もう大丈夫。あなたはもう1人じゃないの よ。 その言葉にミスと彩佳もそっと寄り添う。 自然と3人が彼女を包み込むような形に なった。 ユリはそのぬくもりに身を委ね、ようやく 涙をこぼした。 この日を栄に私たちは新しい形の家族に なっていく。血のつがりではなく自ら選ん だ絆。それは誰にも壊すことのできない 確かなものだった。 豪が警察に連行されてから月日はあっと いう間に過ぎていた。 あの騒動の後、豪と若はすぐに行き詰まる 。浮気に対する慰謝料の支払いで首が回ら なくなったのだ。元々全への慰謝料も残っ ていた上、今回の私への支払いが追加され たのだから当然と言えば当然だった。 それぞれに課せられた金額は決して小さく ない。 ある日知人から電話があった。 ゴさん、この前も金の無心してきたよ。 もちろん門前払いだけどね。 知人は呆れながらぽつりと教えてくれた。 2人は慰謝料と生活費の支払いで完全に 行き詰まり、あっという間に借金付けに なったらしい。 それでも若名は働こうとせず、豪と後論を 繰り返す毎日。 の収入のほとんどは慰謝料の返済に消え、 生活は日に日に大変なものになっていった という。 やがて豪は耐えきれず若出そう としたが、今度は若の方が絶対に逃さない と必要にすがりついたそうだ。まさに自号 自得。さらに警察沙汰になったことで豪の 会社ではグリンと金銭トラブルの話が 広まり同僚や取引先からの信用を失った。 近所でも不倫男とか家族を追い出した最低 な父親と影口を叩かれ片の狭い生活を送っ ているらしい。 の良さだけを取り作ろってきた彼にとって その世間の目こそが何よりのバツになった ことだろう。 一方、その頃の私たちには小さな変化が 芽えていた。 ユりはあれからも私たちと一緒に生活して いる。 そして勉強をおろかにしないという条件で 高校に通いながら放課後に近くのカフェで アルバイトを始めた。 よ子さんにずっと甘えてばかりじゃダめだ と思ってみずたちも応援してくれてるの。 そう言って笑ったよりの表情はあの人は まるで別人のようだった。 アルバイトから帰ると家事を手伝い、夜は ミずや彩佳と一緒に机を並べて勉強して いる。ミずがユりに勉強を教える姿は まるで姉妹そのもので、その時間がミす 自身の復讐にもなっているようだった。 そんな穏やかな光景を見ていると、かつて 反発ばかりしていたユりが嘘のように 思える。 人は環境と心が変わればちゃんと変われる んだ。 今のユりとならきっと本当の意味で家族と してやっていける。 私は心からそう思えた。 そしてある春の日、 私とユりは市役所のカウンターに並んでい た。 窓口の職員が淡々と書類を確認し、髪を めくる音が静かに響く。 私たちは正式に用姿園組をすることにした のだ。 あの時号が連れて行けと放り出した少女は 今私の大切な娘になろうとしている。 なんかちょっと照れるね。 書類を受け取ったユりが少し方を染め ながら笑った。 私もこれからも私の娘としてよろしくね。 私も思わず笑い返した。 帰り道柔らかな春風が頬を撫でていく。 過去の痛みはまだ完全には消えない けれどそれがもう私たちの足を縛ることは なかった。 新しい家が見つかり、4人での生活が 始まった。 まだタンボールの山が残る部屋の中で みんなが忙しそうに動き回っている。 ミスは机を組み立て、彩川は棚を吹き、 ユりはキッチンの収納を整理していた。 お姉ちゃん、ここに入れていい? 彩佳がゆりに声をかける。 うん。それでいいよ。こっちは私がやる から。 ユりが手際よくダンボールを片付ける。 その自然なやり取りを見ているだけで胸の 奥がじんわりと暖かくなった。 前までは家の中にこんな空気が戻ってくる なんて想像もできなかった。 夜食卓には4人分の夕飯が並ぶ。 華麗の匂いが部屋いっぱいに広がり、誰か が笑うたびにその空気が少しずつ未来を 明るくしていく。 お母さんスプーン忘れてる。 彩佳がクスク笑いながら言う。ごめん、 ごめん。私が慌てて立ち上がるとミすずと ユりが顔を見合わせ声をあげて笑った。 いただきます。 4人の声が重なり合う。たえ血が繋がって いなくても家族にはなれる。誰かを信じ、 手を取り合えばもう一度やり直せる。あの 時全てを失ったと思っていた。でも本当に 大切なものは最初からここにあったのだ。 過去は変えられないけれど未来は自分の手 で作っていける。 あの夜娘たちと一緒に家を出たことが私の 人生の再スタートだった。 テーブルの上の明りがふわりと私たちを 包み込む。そこにはもう過去に縛られた 暗い影はなかった。 家族は壊されただけじゃ終わらない。自分 の手でもう一度作り直せるのだ。 私は3人の娘を見渡しながら静かに息を 吸い込んだ。 この笑顔をこれからも守っていこう。それ が私の新しい人生の答えだった。
