変異株はなぜ次々と現れるのか?
パンデミックから数年が経ちましたけど、 私たちの生活をガらりと変えた新型コロナ ウイルス。実は今、この瞬間もすぐそばで どんどん姿を買い続けてるんですよね。 そこで今日はこのウイルスと僕たちの免疫 が繰り広げているまさに終わりなき軍競争 、その裏側に迫ってみたいと思います。 この巧妙な戦略を一緒に解き明かしていき ましょう。さて、これきっと多くの方が 1度は思ったことありますよね。ワクチン も打ったし、前にもかかったのに、なんで また新しいのが出てくるんだって。その 答えはですね、ウイルスが生き残りをかけ て仕掛けてくる本当に驚くべき進化の ドラマの中に隠されてるんです。この スライドがまさに今日の話の肝になります 。ウイルスの進化っていうのは言うならば 軍格競争なんですね。ウイルスはもっと たくさんの人に移るための攻撃力、つまり 感染力を上げようとする。それに対して僕 たちの免疫は防御力でそれを食い止めよう とします。すると今度はウイルスはその 防御をすり抜けるためのステルス機能、 つまり免疫から隠れる能力を身につけよう とする。この攻撃と防御のい立ちごっこが 次から次へと新しい変異株を生み出す エンジンになってるわけです。ではまず話 の始まりパンデミックの初期にちょっと 時間を巻き戻してみましょう。この頃って 僕たち人類のほとんどはこのウイルスに 対する免疫を全く持っていませんでした。 だからウイルスの進化の仕方もすごく シンプルだったんです。とにかく攻撃力、 つまり人から人へいかに早く伝わるかその 能力アップだけに集中してたんですね。 このタイムライン見てみてください。 ウイルスの進化がいかにスピーディだった か一目瞭然ですよね。2020年のD 614Gから始まってアルファ株、そして あの強力なデルタへ。まるでリレの選手が どんどん入れ替わるように世界中の流行の 主役が交代していきました。じゃあなんで こんなことが起きたのか。それは新しい株 が前の株よりも生き残って広がる上で何か 有利な点を持っていたからなんです。これ を選択的優意性って言います。ここで特に 強かったアルファ株とデルタ株を比べてみ ましょうか。アルファカブっていうのは ウイルスの表面にあるトゲの形をちょっと だけ変えて人間の細胞にカチってはまり やすくしたんですね。それで感染力を上げ た。でも次に出てきたデルタブはもっと すごかった。細胞に入るだけじゃなくて 感染した細胞が隣の細胞と合体するのを 手伝って体の中で一気に勢力を広げる力を 手に入れたんです。で、ここが重要なん ですけど、このデルタカブあたりから僕 たちの免疫からちょっとだけ姿を隠す能力 、その兆候が見え始めた。ここから競争の ルールが少しずつ変わり始めたんですよ。 そして2021年の後半、この進化の競争 のルールを根っこからひっくり返すような まさにゲームチェンジャーが現れます。 それがオミクロン株です。南アフリカとか ボで最初に見つかったこの新しいウイルス は遺伝子を調べた科学者たちを本当に驚か せました。なぜかって言うとその姿がそれ までのどの変異ともあまりにもあまりにも 違っていたからです。この数字30以上。 これが何を意味するか分かりますか?これ はオミクロン株が僕たちの細胞に入るため の鍵の部分に起こした変化の数なんです。 これまでの変異株が鍵の形をヤスりで ちょっと削るくらいのマイナーチェンジ だったとしたら、オミクロンは全く別のご をいきなり30個以上も作ってきたような ものなんです。これはもうとんでもない 進化のジャンプでした。この大量の変異が 何をもたらしたかと言うと劇的でした。 オミクロン株は僕たちの免疫システムが 過去のデータを元に作った交代を ものすごく匠みにすり抜ける免疫回避の 達人だったんです。言うなればウイルスが 全く新しい変装をしてれたようなものだ から僕たちの免疫はあれ誰だっけって 見分けるのに苦労して結果的に感染を防ぐ ためのワクチン効果が下がってしまった わけです。さてここまでウイルスの話をし てきましたけど今度はちょっと視点を変え て僕たちの体の中つまり免疫システムに目 を向けてみましょう。この新しい脅威に 対して僕たちの体はどうしたんでしょうか ?キーワードは免疫が持ってる記憶の力。 でもこの記憶実は必ずしも僕たちの味方と は限らないんです。ここで皆さんに1つ 問いかけてみたいんです。前にかかったり 、ワクチンを打ったりして手に入れた免疫 の記憶って進化し続けるウイルスと戦う上 でいつも助けになると思いますか?それと も時によっては逆に足かせになってしまう こともあるんでしょうか?実はこれ科学の 世界でもすごく議論されているポイントな んです。その鍵を握るのがこの免疫イン プリンティングっていう考え方です。言 現在なんていうちょっと難しい別名もあり ますけど、例えるなら初恋いの人のおかげ を新しい恋人にどうしても重ねてみちゃう みたいな現象です。つまり僕たちの免疫 システムが新しい変異株に出会った時、 ゼルから新しい対応を考えるんじゃなくて 、1番最初に記憶したウイルスへの対応を 優先的に思い出しちゃう。これが免疫イン プリンティングです。この仕組みを3つの ステップで見ていきましょうか。まず最初 の感染とかワクチンで免疫の記憶が作られ ますよね。で、次にちょっと姿を変えた 変異株が入ってくると体はあ、前に来た あいつの仲間だなと判断して古い記憶を 頼りに対応しようとするんです。そうする とどうなるか良い面としてはいろんな ウイルスにそこそこ対応できる便利な交代 が作られます。でも悪い面としてはその 新しい変異株にドンピシャで効く特攻薬 みたいな交代を作るのがちょっと遅れ ちゃう可能性があるんです。それでは話を 今に戻しましょう。オミクロンが登場して はいおしまいではありませんでした。この 進化の軍格競争は今もなおオミクロンンっ ていう大きなファミリーの中でものすごく 激しく続いてるんです。この表はウイルス の戦略の変化をすごくうまく示しています 。デルタ株はTMPRSSっていう、ま、 細胞のドアを開けるためのマスターキー みたいなコースを使って入ってきてました 。ところが初期のオミクロンBA1は免疫 から逃げる能力をめちゃくちゃ高める 代わりにそのマスターキーを使わずに裏口 からこっそり入る戦略に変えたんですね。 でも驚くのはここからで、最新のJN1 系統ではものすごく高い免疫回避能力は キープしたまま、なんとまたマスターキー も使えるように戻して、いわば表現と裏口 両方から侵入できるハイブリッド戦略を 取ってきてるんです。つまりここがすごく 大事なポイントなんですけど、新型コロナ ウイルスの進化って一直線じゃないんです ね。免疫からいかに逃げるかっていう ステルス能力といかに効率よく広がる かっていう攻撃力。この2つの目標の間で 常にベストなバランスを探り続ける 綱当たりのようなすごく複雑なプロセスな んです。この引用がまさに今の状況を 物語っていますよね。ウイルスの次の一手 を正確に当てるのはものすごく難しい。だ からこそずっとウイルスを監視し続けて 基礎的な研究を続けることが絶対に必要な んです。僕たちはウイルスの進化を 追いかけ続けてその変化を理解し続ける しかないんですね。最後にこの問を皆さん と一緒に考えてみたいと思います。 ウイルスがこれだけ匠に賢く進化を続ける んだったら僕たち人類の対抗策 続けなきゃいけないですよね。次世代の ワクチンだったり、新しい治療薬だったり 、そして未来にまた来るかもしれない パンデミックへの備えだったり。この 終わらない競争の中で僕たちは次にどんな 一手を打つべきなんでしょうか。ク王 アカデミアチャンネル登録といいねを よろしくお願いします。
元の論文
SARS-CoV-2 Variants: Biology, Pathogenicity, Immunity and Control
Citation
Uraki R, Korber B, Diamond MS, Kawaoka Y. Nat Rev Microbiol. 2025; published online Nov 2025. doi:10.1038/s41579-025-01255-x.
要約
本総説は、SARS-CoV-2の進化、生物学的特性、病原性、免疫逃避、そしてワクチン戦略の最前線を包括的に整理している。2019年の出現以来、ウイルスは感染性と免疫逃避のバランスを保ちながら進化し、アルファ、デルタ、オミクロンなどの主要変異株を経て、2025年現在はJN.1系統から派生したXFG、NB.1.8.1などが主流となっている。これらの新系統はACE2結合能を高めつつ免疫回避を強化しており、特にL455S/F456L変異が鍵である。オミクロン株以降はTMPRSS2依存性が低下し、上気道感染への適応とともに病原性は低下したが、感染力は維持された。臨床的には、重症化率は低いものの、免疫低下者や高齢者では依然として重篤化リスクが残る。ワクチンはJN.1またはKP.2株を抗原とする単価型が推奨され、免疫刷り込み(original antigenic sin)が変異対応ワクチンの効果を制限する可能性が示唆された。今後は、経鼻型ワクチンやT細胞免疫誘導型ワクチンの開発が課題であり、長期的にはインフルエンザと同様に定期的な株更新と予測モデルに基づく抗原選定が必要とされると結論づけている。
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