【漫画】「離婚届の先に待っていたのは地獄」夫の再婚宣言・親族の前での公開処刑・500万請求・証拠封筒の追撃→シタ妻が崩壊する4つの修羅場【総集編25】

弁護士事務所の説室に入った瞬間、私は 空気の重さに息を飲んだ。正面のテーブル を挟んで座るのは夫。そしてその隣に娘、 さらに彼の奥さん。3人並んでいる姿が私 をさくためにそこにいる監守のように見え て、私は怖くなり、とっさに目をそらした 。テーブルの上には生前と並べられた数枚 の紙。それが何かを私は見なくても分かっ ていた。離婚届け。そして慰謝料と養育費 の請求症。私は椅子に深く腰下ろしたが 背もたれに触れる感触すらどこか他人ごと のように思えた。世界の音が消えていく。 弁護士の説明も夫の無言も娘の私に送る 視線を全てがぼやけていたけれどその神の 束が目の前にそっと滑らされた瞬間だけ はっきりと現実を突きつけられた。こちら にご署名をお願いします。弁護士が慣れた 手付きでペンを差し出してくる。私は無 意識にそれを受け取った。けれど手が震え ていて先がなかなか紙に触れなかった。夫 は何も言わない。ただまっすぐこちらを見 ていた。無表情。けれどその目は冷たい。 もう終わりだと言われている気がした。娘 は小さな手を膝の上で組んでいた。口を 毎文字に結んで俯いたまま私のことを 見ようともしなかった。彼の奥さんは静か に目を閉じていた。その表情には哀れみも 怒りもなかった。私はゆっくりと視線を 落としを動かす。せ目青年月日。結婚して から何度も名前を書いたはずなのにこの時 は指が鉛りのように重かった。最後のラン にたどり着いた時、胸の奥で何かが崩れた 気がした。家族という言葉にもう自分は 属していない。を得た瞬間、深く吐き出し た呼吸はまるで息を止めていたかのよう だった。ご記入ありがとうございます。 弁護士の声が遠くから響いた。テーブルの 上の書類が回収され、音を立てて バインダーに閉じられていく。淡々と処理 されていくこの作業が私という存在を1枚 1枚剥がしていくようだった。私は誰から も責められていないのになぜかそのしけさ が痛かったとなられる方がどれだけ楽だっ ただろう。それでも私はこの席にいる。夫 が娘が彼の奥さんが私に背を向けるその場 に誰にも寄り添ってもらえずただサインを するためだけにここに存在していた。この 神に書かれた名前は確かに私自身だった。 でもその下にあった役割、妻として母とし て人として信頼される存在だった。私は もういなかった。静寂の中で髪が1枚1枚 音を立てて重ねられるたびに私は少しずつ 確かに消えていった。夫からの慰謝料請求 書、養育費請求書、彼の奥さんからの慰謝 料請求書、全ての書類にサインを書き終え て指先から力が抜けた。しばらくは誰も 言葉を発さなかった。ただ空調の風の音と 書類を閉じる弁護士の静かな書作だけが 夜けに鮮明に耳に残っていた。私は俯いた まま何も見たくなかった。これで終わった 。そう思ったその瞬間だった。椅子が引か れる音。突然夫が立ち上がった。私は反射 的に顔をあげた。そして次に目に移った 光景が何を意味しているのかすぐには理解 できなかった。夫はスーツの胸ポケットに 手を差し入れ、小さな箱を取り出した。誰 がどう見ても指輪のケースだった。 え、まさかまさかこんな場所で、こんな 空気の中で私がサインし終えたばかりなん だよ。どういうこと?どういうこと?と 考えがまとまらなかった。頭の中が一瞬で 真っ白になった。夫は止まらなかった。 その箱をゆっくりと開いた。中には シンプルな銀の指輪余計な装飾もない けれど確かに真剣を象徴する形だった。俺 と結婚してください。夫の声はいつになく まっすぐで力強かった。その言葉は私に 向けられたものではなかった。彼の奥さん にまっすぐに向けられたものだった。部屋 の中が異様な空気に感じられた。でも誰も 止めなかった。弁護士ですら何も言わ なかった。まるでこの流れが当然であるか のように私は言葉を失った。座ったまま口 を開きかけたが声にならなかった。信じ られない。不謹慎だ。私と離婚したばかり でこんなことそう思ったのになぜかそれ すら言えなかった。なぜならあの時の夫の 表情があまりにも静かで確かなものだった から揺れもためらいもなかった。覚悟だけ があった。彼の奥さんは最初は少し戸惑っ たように見えた。でもゆっくりと目を うるませながら頷いた。 それは完全な勝利だった。夫の言葉を彼女 は受け取っていた。そしてその直後だった 。娘が静かに立ち上がった。娘はまだ10 歳で幼いのにあんなにも大人びた足取りで 娘はまっすぐに夫と彼の奥さんの元に 歩み寄った。一瞬私と目があった気がした 。でもそれは私の錯覚だったのかもしれ ない。娘は彼の奥さんの手を握りポつりと 言った。ママはカレンさんがいい。娘が 呼んだのは私の名前じゃなかった。私の 時間がそこで止まった。耳鳴りがした。 視界がぼやけた。空気が一瞬で重くなった のに体だけは軽くなっていく。感覚がどこ にも結びつかない。信じられない。そんな わけがない。娘は私の子なのに。だけど娘 は笑っていた。嬉しそうに夫と彼の奥さん を見上げていた。そして夫がそっと娘を 抱き寄せ彼の奥さんの手を取り3人が 寄り添うようにして抱き合った。まるで ずっと前からそうだったかのように、 まるで私という存在が最初からいなかった かのように、私は椅子から立ち上がること もできず、ただ1人の合感者としてそこに いた。目の前には私が書いたばかりの離婚 届けと容赦のない数字が並んだ慰謝料と 養育費の請求書。あの時確かに私はこの 空間から削除された。でも私はまだ座って いた。過去として失敗策として誰にも求め られない前の妻として私は確かに終わった 。夫は真面目で誠実な人だった。平日は朝 早くから出勤し、夜遅くまで働いていた。 夫が家計を助けるために副業を始めようと 思ってると言った時、私は心から ありがとう と思った。娘も本当に手のかからない子 だった。家事の合間にふとみると大なしく 勉強していたり、折り紙で鼻を作ってい たりする。私が少し疲れているとすぐに 気づいてママ大丈夫と心配してくれる。 素直で賢くてあの子に関しては何ひつ不満 などなかった。でもどうしてだろう?私は どこかでいつも置いて行かれている気がし ていた。家の中には私を必要としてくれる 人が確かにいたはずなのに。それなのに私 はずっと心のどこかで寂しさを感じていた 。食事を作ると夫も娘も美いしいと言って くれた。私に文句を言う人はいなかったし 、夫は毎年私の誕生日には必ず花を買って きてくれた。安くてありきたりな花だった けれど、それでも私は嬉しかった。 嬉しかったはずだった。 でもその嬉しさがいつしか物足りなさに 変わっていった。なぜかは分からない。 多分私の我がままだった。娘の世話も だいぶ楽になってきた頃、私はふとついた 。なんか最近毎日が同じでつまんないな。 夫は笑って習い事でも始めてみたらと軽く 言った。その言葉に私は救われた気がした 。あ、そういうのやってもいいんだ。そう 思えただけで少しだけ世界が開けたような 気がした。その時私が選んだのが近所の 音楽教室だった。何の変哲もない町の 小さなカルチャースクール。通う人も私と 同年代の主婦ばかりで特に警戒するような 場所ではなかった。私はただ日常に色が 欲しかっただけ。少しの刺激、少しの新鮮 さ、ほんの気分転換のつもりだった。毎日 繰り返される家事、静かな夜、夫の息を 聞きながら私は何度も思っていた。この まま一生終わるのかなと。穏やかな人生と いうものがこんなにも単調で生き苦しい なんて知らなかった。誰にも責められてい ないのになぜか攻められている気がしてい た。なぜか胸が触ついた。家族の笑顔が 眩しくて時々目をそらしたくなることすら あった。私は幸せだった。それでも私は その幸せに耐えられなかった。こうして私 は出口を探し始めた。それが音楽教室での 彼との出会いだった。初めて彼を見たのは 音楽教室の受付カウンターだった。明るい 髪色に爽やかな笑顔。落ち着きがあってで もどこか無邪でこんにちは と声をかけられた時私はうまく返事ができ なかった。久しぶりだった。誰かにそんな 風に見られるのは誰かに自分という存在を 認識されるのは主婦として母として日々の 中で昨日として存在していた私はその一言 だけで人間に戻ったような気がした。彼は 師だった。ブループレッスンを担当してい て、毎回楽しい雰囲気を作っていた。初日 はただの他人だったけれど、何度か顔を 合わせるうちに自然と会話が増えていった 。いつも綺麗にしてますよね、まみ美さん 。え、そんなことないです。いや、本当に 最初見た時僕と同い年ぐらいで独身かと 思いました。結婚されてるんですよね。 たったけ言葉だったなのに心臓の音が自分でも驚くほど大きく響いた。それからは何を来てこうか迷うようになった。もんの濃くなった。鏡を見る 時間が増えを出る前に水を吹きするようになった。 [音楽] 退屈な日常の中で彼に会う日だけが私にとっての舞台になっていった。 [音楽] 最初は自分でもこれは違うと思っていた。 ただのうついた気持ち、誰にでも起こる ほんの些細な時めき、口辺に1つ新しく 勝っただけで気分が晴れるようなそんな 無害なものだと自分に言い聞かせていた。 でも彼の視線が誰よりも私を女性として 扱ってくることに私は確実に心を持って 行かれていた。ある日寸後の待ち合い室で 2人きりになった瞬間彼はふいに行った。 もう1度恋してるみたいです。あなたと 話してるとそう感じるんです。息が止まっ た。嘘だと思った。でもほんの一瞬嬉しい と思ってしまった。認めたくないのに確か に体が熱くなっていた。だめだよ、こんな の。心の中でそう何度も繰り返した。彼も 既婚者だと聞いていた。でも次の週もまた 私は上ついた気持ちで教室へ向かった。 まるで魔法にかかったみたいに彼はいつも 優しかった。その優しさはただの社交事例 で誰にでも言っていたのかもしれない。で もその時の私はもう彼に恋をしていた。 ほんの出来心だった。ちょっとした時めき だった。家庭を壊すつもりなんてなかった 。家庭を裏切るつもりも本当はなかった。 だけど気がつけば夫の目を見て会話する ことが減っていた。スマホを見る頻度が 増えていた。彼からのLINE、今日は 来れますか?早く声が聞きたいです。 そんな言葉を私は宝物のように読んでいた 。何してんだろう私。そう思いながらも やめられなかった。音楽教室に行く度自分 が女であることを思い出せる。彼と過ごす わずかな時間が宝物だった。でも私はこの 時はまだどこかでブレーキをかけていた。 超えてはいけない線だけは超えないと。で もそのブレーキはあまりにも簡単に壊れた 。そう。この数日後超えてはいけない線を 超えたんだ。それからに3ヶ月が経った。 その夜、私は台所に立っていた。娘がお 風呂に入り、夫が帰ってきたばかりの時間 。冷蔵庫から鶏肉を出し込んだ手を考えて いた。いつもと変わらないはずの風景なの に、夫が無言で差し出してきたあの封筒を 見た瞬間、私は何もかもが終わる予感を さした。なんだろうな、この封筒。茶色の 封筒。アテナは夫のフルネーム。でも 差し出し人の名前はなかった。一瞬郵便 ミスかと思ったけれどそんなありふれた 言い訳もすぐに打ち消された。ただの チラしではない。中身の重みがふを切る前 から伝わってきた。なんだろうね。不気味 だね。開けない方がいいんじゃない?私が そう返すと夫はそうもいかんだろうと言い ながらその封筒を開けた。私は再橋を持っ たままただ夫の背中を見ていた。しばらく 沈黙が続き、そして夫の手が止まった。 写真を撮り出すその指先が震えていた。 それ何?振り絞ったような低くてかれた声 だった。私は反射的に夫に近寄った。次の 瞬間、夫が持っていた数枚の写真を見て手 からサ橋が落ちた。そこに移っていたのは 紛れもなく私だった。彼の腕に寄りかかっ て笑っている私。ホテルのロビーで手を ついでいる私。ビスをかわしている私。 ベッドの上で彼の胸に顔をうめている私。 目の前が真っ白になった。違うの。これは ほんのほんの出来心で言い訳にもならない 言葉を無意識に吐いていた。頭の中では何 を言えばいいか分からなかった。ただ何か 言わなければ沈黙が私を殺してしまう気が した。向こうがしつこくて私断れなくて 自分でも信じられないようなことを口にし ていた。でも夫の目は私のどの言葉にも 揺れなかった。まるでそこに私はいないか のようだった。俺の何がいけなかったんだ 。ポつりと夫がそう呟いた。その声が あまりにも弱くて情けなくて。でも1番私 の胸に刺さった。私は何も言えなかった。 あれだけ真面目に家族のために生きてきた 夫。あれだけ優しく誠実だった夫。そんな 人の目の前で私は浮気を楽しんでいる姿を 晒らしていた。この時私はまだ希望を捨て ていなかった。謝れば許してもらえるかも しれない。やり直せるかもしれない。 そんな都合のいい幻想を抱いていたけれど その希望は封筒の底から出てきた1枚の 手紙によって粉々なに砕かれた。手紙の主 は彼の奥さんからの手書きの手紙だった。 突然のご連絡をお許しください。私の夫と あなたの奥様が不定関係にあることが判明 し、探偵を通じて調査しました。私1人で は抱えきれず思い切ってご連絡させて いただきました。1度お話しさせて いただけないでしょうか?に私の連絡先を 載せておきます。夫はその手紙を何度も 読んでいた。私の方は見なかった。ただ 黙って内容を頭に刻み込むように繰り返し 読んでいた。その背中が私には異常に遠く 感じられた。目の前にいるのに盲が届か ない。それが現実だった。私は何度も心の 中で叫んだ。ただの出来心だった。本気 じゃなかった。家庭を壊すつもりなんて なかった。だけど、そんな言葉は全部、 写真と手紙の前では何の力もなかった。私 は完全に加害者になった。最低の裏切り物 として気づけば夫はスマホを手にしていた 。何かを打ち込む指の動きが妙に冷静だっ た。その後すぐ夫が家を出たことは言う までもない。私を見もしなかった。 どうしてともなぜとも言わなかった。彼の 奥さんに連絡を取ったのだろう。操作った 私はなぜか心の底が凍るような恐怖を覚え た。もう逃げられない。そう感じた きっかけは夫が扉を閉めたあの音だった。 あれは私という人生に鍵をかけた音だった 。夫が家を出ていった夜、私は時計のない 空間に取り残されたようだった。夫は いくら時間が経っても帰ってこない。私は 娘と味のしない夕食を済ませた。娘がパカ どこに行ったの?さっき帰ってきてなかっ たと言いながら部屋に戻る。私1人になっ たリビングで聞こえてくるのは壁の時計の 針が進む小さな音だけ。娘の声すら消えた 空間で私はただソファーにうずくまってい た。スマホを開くたび既読にならないが 並んでいた。ごめんなさい。話したい。 戻ってきてほしい。どれだけ送っても夫 からの返事はなかった。そして3日後、娘 がランドセルを背負って帰ってきた時、お 帰りと声をかけると娘は小さく頷いただけ で私の目を見ようとしなかった。ランド セルを置くとすぐに自分の部屋へと消えた 。声をかけるタイミングを失った私は台所 に戻って夕食の続きを再開した。前日まで 私はずっと夫に電話をかけていた。 呼び出し音はなるだがでない。夫は私から の連絡を無視していた。私は一度深呼吸を してから娘の部屋の前でご飯できたようと 声をかけると娘は無言のまま出てきた。 食卓についても箸を持つてはずっと止まっ たままだった。パパどこ行ってるか知っ てる。ようやく出たその一言に私は言葉を 失った。なんて返せばいいかわからなかっ た。娘はもう10歳だ。仕事だよ。なんて 言ってももう通用しないことくらいは勝っ ていた。あれから2ヶ月夫からは1度も 連絡がなかった。電話もLINEも既読に ならず、まるで私はこの世に存在してい ないかのようだった。娘との会話も極端に 減り、目があっても無言のまま通りすぎる 日々。虚務が家の隅々まで染み込んでいた 。私は彼とも連絡を立った。スマホの画面 を見ることすら嫌になった。音楽教室の 予約は全てキャンセルした。もうあの場所 に通う気持ちも彼に見られたい気持ちも どこにも残っていなかった。ただ毎日が 灰色だった。 全てが因果を私に悪いものとして帰って くる気がしていた。そしてその予感はそう 数週間後弁護士事務所で現実となった弁護 士事務所の王設で夫のプロポーズが成功し た直後。娘がこれまでの2ヶ月間の全てを 私に語ってくれた。ママ、あのね、娘の声 はいつになく落ち着いていた。その瞳には 幼さよりも覚悟が宿っていた。パパね、 あの夜からずっとビジネスホテルに泊まっ てたの。ママの顔を見たくなかったんだっ て。でも私にはLINEくれてたよ。実は な。て、最初は私も驚いたし、ママに対し て何やってんの?って怒鳴りたかったけど 、パパにパパがビジネスホテルにいること は内緒にしておいてくれ。って言われてた から全部我慢してた。でもね、ある日今 浮気相手の奥さんと一緒にいるんだ。3人 で会わないか?って誘われたの。娘は少し 魔をいて続けた。なんでママの浮気相手の 奥さんと一緒にいるんだろう。って最初は 戸惑ったけど、会ってみたらカレンさんは すごく優しくて私の好きな インフルエンサーを覚えててくれたり、 学校の話を真剣に聞いてくれたり、パパも 前よりずっと笑ってて、気づいたら3人で 過ごす時間が楽しみになってた。私は言葉 を失った。娘が私の知らないところで2 ヶ月間もそんな関係を気づいていたなんて 。ママ、私はね、ママのこと嫌いになった わけじゃないよ。でもパパとカレンさんと 一緒にいると安心するの。あの2ヶ月間私 はママのことをずっと考えてた。ママは 一体何を考えてるんだろうって。パパを 平気で裏切る人なんだから私もいつか 裏切られるのかなって思ってた。それが 怖かった。娘の言葉が胸に突き刺さる。私 は自分のことで正一杯で娘の気持ちに 気づいてあげられなかった。パパね、ママ のことすごく悩んでたよ。でももう一度 信じるのは無理だって。新しい人生を始め たいって。その時にカレンさんがいてくれ たら最高だって。私もそれがいいと思った の。パパとカレンさん私から見てもいい 雰囲気だったから。娘はまっすぐ私を 見つめていた。その瞳にはもう迷いは なかった。ママありがとう。今まで育てて くれて。でも私はパパとカレンさんと一緒 にいたい。 私はただ頷くことしかできなかった。娘の 決意を前に何も言えなかった。その瞬間、 私は完全に過去になった。家族の中に私の 居場所はもうなかった。娘の告白は私に とって最後の審判だった。私は自らの謝ち で全てを失ったのだ。そして静かに娘は席 を立ち、夫とカレンさんの元へ歩いていっ た。3人が寄り添う姿はまるで新しい家族 の始まりを象徴しているようだった。私は ただその光景を見つめることしかでき なかった。心の中で何かが静かに崩れて いくのを感じていた。これが私の選んだ 結末だったのだ。誰のせいでもない。これ が私自身の選択の結果。私は静かに目を 閉じた。そして深く息を吐いた。新しい 現実を受け入れるために今私は実家に身を 寄せて暮らしている。離婚。何もかも失っ た私は住む場所すら自分で用意することが できなかった。1人で暮らす気力も 立ち上がる意思もなかった。両親は何も 聞いてこなかった。しばらくここにい なさい。母はそれだけ言って布団と部屋を 用意してくれた。その優しさがどこまでも 痛かった。あんたはバカね。相場罵された 方がどれだけ楽だったかと思う。実家の 小さな部屋で目覚める朝は季節の匂いが 濃く。その度に前の家での記憶が鮮やかに 蘇える 台所に立っていた夫の背中 ランドセルを背負って玄関で行ってきます 。とてお振る娘。そんな日常がもう2度と 戻らないと知っているからこそ過去の光景 は一層残酷に思えた。私は今元夫とカレン さんへの慰謝料、そして養育費を支払い 続けている毎月届く迷彩と振り込み容紙が どれだけの代償を支払っても元には戻ら ないことを思い知らせてくれる。学面すら 見れない。それほど重い数字だった。私は 支払い日毎回吐き家をこらえながらATM の前に立つ。私はそうやって過去の自分 支払っている。今鏡の中にいるのは一体誰 だろうと思うことがある。もう女でも なければ母でもない。ただ罪を背負った女 。ちょっとした出来心。そう軽く考えてい たあの感情がこんなにも人生を壊して しまうとは思っていなかった。彼とは1度 も連絡を取っていない。ブロックしたわけ ではないが、こちらからかける気持ちが 完全に消えていた。音楽教室は当然ながら やめた。あの建物の近くを歩くだけで心が 沢ついた。後に元夫からのLINEの メッセージで知った。彼は私との関係が 露見した後、音楽教室を解雇されたらしい 。生徒に池を出した講師。その噂はまた 琢間に広まり、どの教室も彼を雇おうとは しなかったという。今はアルバイトを 駆け持ちしながら元夫と元さんへの慰謝料 を返済しているらしい。彼は女に溺れて 家庭も食も失った男として社会から静かに 消えていった。ガチで同年代の女性が子供 と笑い合っている姿を見ると私は必ず目を そらす。それはかつて自分が持っていた はずのものだった。穏やかで何の変哲も ない幸せというやつだ。両親はそんな私の 姿をそっと見守ってくれている。責めない 代わりに干渉もしてこない。すごく ありがたい。ただ今日は寒いねとなんて ことのない日常の挨拶でも声をかけられる になぜか涙が出そうになる。誰にも責め られずに生きていくことがこんなにも 苦しいとは思っていなかった。人生は 取り返しがつくなんて言葉があるけれど それは全部綺麗事だった。裏切った信頼は 戻らないし、壊れた絆は元には戻らない。 今の私はそれを身を持って知っている。 ちょっとした出来心で私は全てを終わらせ てしまった。女としても、母としても、 そして1人の人間としても、私は自分の 人生を自分で破壊した。そしてそれを悔み 続ける毎日こそが私に与えられた報いなの だと思っている。 [音楽] 夫と出会ったのは高校2年の時だった。 クラスも同じ文化祭の係かりも一緒で 気づけば自然と話すようになっていた。 最初は特に意識もしてなかった。ただの クラスメイト。でもある日皮とあ、この人 といると楽だなと思ったのを覚えている。 夫は控えめだけど優しくてちゃんと私の話 を聞いてくれる人だった。話していると私 のことをちゃんと見てくれてるんだって 感じられた。告白された時も特別 ドラマチックな演出があったわけじゃ なかったけど、私は迷わず頷いた。 付き合ってからは毎日が本当に楽しくて 一緒にいるのが当たり前になっていった。 大学も同じところに進学した。彼は文系で 私は理系。キャンパスは別だったけど週末 には必ず会っていた。映画を見たり、家で 一緒に料理を作ったり、ありふれた日常。 でもそんな普通のことが何より幸せだった 。どちらの家族も公認でお互いの実家にも 何度も生きしてまるで本当の家族みたい だった。将来のことなんて改まって話す までもなくきっとこの人と結婚するん だろうなって自然と思っていた。社会人に なってからは同性を始めた。家事は分担し ていたけど、私の方が早く帰ることが 多かったから、夕飯は私が作ることが 多かった。初めて味噌汁を作った日、夫は 美いしいって言いながら全部飲み干して くれた。夫の美味しい。あ、いつも ちゃんと心がこもっていて、私にとって 何よりのご褒美だった。プロポーズはいつ ものように一緒に夜ご飯を食べていた時 だった。突然指輪を出してこれからも一緒 にいてください。って照れそうに笑い ながら言ってくれた。涙が止まらなかった 。私はありがとう。って何度も繰り返して その場で抱きついた。本当に幸せだった。 入籍の日は私たちが付き合い始めた記念日 。指輪はシンプルなペアリングだったけど 、私にはそれが1番嬉しかった。高いの 買えなくてごめんね。って言っていたけど 、私は心からこれがいいって思った。夫が 選んでくれたことが何よりの意味だった から。結婚式は夫の仕事が落ち着いたら やろうって話していて、まだあげてい なかったけど、一緒に暮らす日々は新婚 そのものだった。朝起きて同じ時間に家を 出て夜にただいまと言って帰ってくる。私 が先に帰る日は部屋の電気をつけて夕飯を 用意して夫の帰りを待っていた。こんな 当たり前の日常が何よりも愛通しかった。 あの時まではそう思っていた。でも気づい たら私は当たり前に慣れてしまっていた。 優しくしてくれるのも気にかけてくれるの も前がいつものことになっていて夫の優し さが私の中で特別 じゃなくなっていた。この人は私のことを ずっと大事にしてくれる。怒ったりしない し、ちゃんと向き合ってくれる。そんな 確信が甘えに変わっていったのかもしれ ない。夫はどれだけ仕事で疲れていても私 の話に付き合ってくれた。遅く帰ってきて も私の作ったご飯を必ず一口は食べてくれ た。毎週末にはちゃんとデートしてくれて 記念日も忘れずに祝ってくれた。 夫はずっと変わらず私を大切にしてくれて いたのに私だけが変わっていった。心の中 に少しずつ物足りなさが芽えたのはいつ からだっただろう。でもその時の私はそれ が何なのかよく分かっていなかった。寂し さ、退屈 欲望、言葉にできない違和感だけが胸の奥 に沈んでいた。私は気づかなかった。違和 感の正体も自分の心の弱さも、そしてその 先に待つ破滅の気配も彼は私の幼馴染みの 公約者だった。その日、私は幼馴染みと 久々にランチをしていて、そういえば婚約 者がいるんだよねと笑顔で紹介された。 スーツ姿で現れた彼は物が柔らかくて話し 方もどこか落ち着いていて、第1印象は 大人っぽい人だな。だった。私は本当に心 からおめでとうと言った。幼馴染みは学生 時代から恋愛にあまり積極的じゃなかった からいい人に出会えてよかったなって。 その時の私はまさかその彼とあんな関係に なるなんて未人も思っていなかった。それ から何ヶ月か経ったある日、最寄り駅前の カフェで偶然彼と再開した仕事の合間の 休憩だったらしく、お互いあれと声を かけ合って自然と席を共にした。最初は大 もない世間話だけだった。最近どうですか ?そんな他人儀な会話だったのに不思議と 話がんで気づいたら1時間以上話していた 。 それが最初のきっかけだった。帰りは彼の 方からまた機会があればランチでもと言わ れた。軽い挨拶のようなその言葉に私は なぜか心がふわりとした。あの時どうして 連絡先を交換したんだろう。幼馴染みの 許可も得ずに彼の番号を自分のスマホに 登録した瞬間胸の奥に小さな罪悪感があっ たはずなのに。でもその時の私はそれを 大したことじゃないと片付けてしまった。 夫との関係が悪かったわけじゃない。 むしろ毎日一緒にご飯を食べて些細なこと で笑い合えていた。でも何かが足りなかっ た。夫の帰りがだんだん遅くなって疲れて 帰ってくるようになると私はなんとなく 遠慮して話しかけることが多くなっていた 。そんなすれ違いが続く中で彼との やり取りは私にとって少しずつ癒しになっ ていった。この前の話面白かったです。 仕事お疲れ様です。今日も暑いですね。 LINEのやり取りは本当に大変もない ものだった。でも帰ってくる言葉に私は なぜか安心していた。私は彼に見られ たかったんだと思う。今日こんなことが あってこんなことで落ち込んでる。そう いうことを私は夫に言えなくなっていた。 でも彼には言えた。どうしてかは分から ない。ただ返事をくれる彼の文章が私を 受け止めてくれる人だと錯覚させた次第に また会いたいと思うようになった。罪悪感 は最初だけだった。気づけば夫に友達と 会ってくると嘘をつくことにも慣れていた 。バレなければいい。を本気で思っていた 。でもその裏で私は確実に壊してはいけ ないものを壊していた。彼と並んで歩いて いる時、私は幼馴染みの公約者と歩いて いることを忘れようとしていた。彼も同じ だったのか、それとも私だけが現実から 逃げていたのかもしれない。何が始まって いてどこまでが許されないことなのか。 この教会戦を私はもう見失っていた。夫の 顔を見るたびに罪悪感は湧いた。でもそれ 以上に見ないでという気持ちが勝っていた 。どうして?ってもし聞かれたらなんて 答えたらいいのかわからない。ただただ私 は自分の中の寂しさを埋めたくて彼に肯定 されていたくて間違っていると感じつつも 彼に寄りかかってしまった。私はまだこの 時点では取り返しがつかないということに 気づいていなかった。今日はあえて 嬉しかった。彼からそんなLINEが毎晩 届くようになった。私は夫の隣でその画面 を開きながら何わぬ顔でお休みと声をかけ ていた。返事を打つ時は寝室の隅でスマホ の光を手で隠しながら旦那さんにバレない ようにね。彼のその言葉に私は罪悪感より もスリルを感じていたのかもしれない。 そしてある日、彼に休憩しようと言われて 連れて行かれたのがホテルだった。あの時 私は1度だけやめようと思った。ドアの前 に立った瞬間、心臓がひどく早くなって何 度も呼吸を繰り返した。でも彼の大丈夫。 誰にも見られないからという声に私は全て を預けた。あのホテルの部屋で私は確かに 一戦を超えた。その日を境えにもう元には 戻れないと分かっていたのに後悔の感情は 不思議と湧いてこなかった。むしろやっと 満たされたとすら思ってしまった。夫が どれだけ私を思っていても、どれだけ生活 を支えてくれていても、私は彼の腕の中で 心地よさを感じていた。彼とのLINEの やり取りは次第に明確に恋人同士のような 内容に変わっていった。昨日の夜ドキドキ したね。次はもっと長く一緒にいたいな。 またあのホテル予約してあるよ。画像 フォルダーには自撮りの2ショットも残っ ていた。部屋の中で彼と肩を寄せて笑う私 の顔は夫に向けていた笑顔と何ひつ変わら なかったけれど隣にいる相手だけが違って いた。それらのやり取りは全部彼のスマホ の中にももちろんあった。後にそれが証拠 として突きつけられることになるなんて、 当時の私は思いもしなかった。 夫はその頃仕事が忙しくて深夜帰りが続い ていた。私は今日も遅いんだねと言い ながら心のどこかでこれで会いやすくなる と思っていた。最低だとは勝ってる。でも その時はもう自分の中で何が正しくて何が 間違いなのか判断できなかった。帰宅した 夫が疲れた顔でただいまと言って私の作っ た夕飯を食べながらありがとう と微笑えんだ。その言葉を聞いて一瞬胸が 締めつけられるような感覚があった。でも すぐにその痛みから目を背けてうん。 ありがとう と返していた。私は夫の前では普通の妻の 顔をして裏では他の誰かと恋人のような 時間を過ごしていた。そのギャップに自分 自身が飲み込まれていくのを感じながらも もう止まれなかった。バレなければいい 一時のこと。そんな言葉で自分の行動を 正当化し続けた。でもその裏で私は彼に どんどん依存していった。 そして私は完全に壊れた。夫が全力で 気づいてくれた生活の上で私は平然と 裏切りを続けた。それでも罪悪感よりも今 の関係を失いたくないと思っていた。ある 日突然夫から連絡が途えた。帰ってこ なかった。最初は残業かな。飲み会かも。 そんな風に思っていた。LINEを送って も既読はつかず電話もならない。珍しい ことではなかったけどどうしてかその日は 妙に胸がざついていた。深夜2時を過ぎた 頃私はスマホを握りしめたマまソファーに 座っていた。大丈夫?帰ってこないの? 何かあった?メッセージはどんどん増えて いったけれどどれにも返事はなかった。 眠れるはずもなく布団には入ったけど ずっと天井を見ていた。考えたくなかった 。でも心の奥底でずっと嫌な予感が膨らん でいた。朝になっても夫は帰ってこなかっ た。 に出勤したのか、どこかに止まったのか、 それすらわからなかった。そして午後に なって玄関の扉が開いた。音を聞いた瞬間 、私は飛び起きてビビングに駆けつけた。 でもそこに立っていた夫の顔を見て私は 言葉を失った。無表情。何の感情も 読み取れない。凍りついたような顔だった 。お帰り。 私はそう言った反射的に。けれど、夫は私 の言葉には答えなかった。そのまま無言で 靴を脱ぎ実質に向かっていった。私は慌て てその後を追った。待って。どこ行くの? 何かあったの?地質に入った夫は クローゼットを開け、スーツケースを 引っ張り出していた。衣類を次々と 詰め込む手元はとても冷静でそのしけさが 何より怖かった。ちょっと待って。何?何 なの?私の声はどんどん上ずっていった。 心のどこかで分かっていた。分かっていた けど認めたくなかった。ねえ、何かあった なら言ってよ。私何かした。夫はそれでも 何も言わなかった。ただ黙って荷物を まとめ続けていた。その背中を見て私は 反射的に思った。バレた。でもどうして? 私はうまくやっていたはず。スマホを見 られた。でも私はスマホロックの暗証番号 を変えていた。まさか彼の方が何か。思考 がぐるぐる回り始めて頭が真っ白になった 。でもそれと同時に体の奥から込み上げて くるものがあった。待って。お願い話して よ。何でもするから。いつの間にか私は夫 の腕にすがっていた。それでも夫は目も 合わさず私を振り払うこともせず無反応 だった。違うの?違うの?本当にちゃんと 話せば分かるから自分でも何を言ってるの かわからなかった。気づけば泣いていた。 声をあげてぐしゃぐしゃに取り乱していた 。こんな風になるなんて思っても見なかっ た。夫の目にはもう何も映っていなかった 。私が泣いていることも訴えていることも 届いていないのが分かった。私の声は まるで壁に向かって話しているみたいだっ た。それでも私はすがるしかなかった。 ここで離れてしまったらもう何も残らない 気がしたから。でも夫は何も言わなかった 。荷物を詰め終えたスーツケースを閉じる と静かにリビングに向かって歩いていった 。私は追いかけることもできず、ただその 場に座り込んだ。その背中を見ながら 終わったんだとどこか冷静な自分が支いた 。それでも私は認めたくなくて何度も何度 も違うと呟いていた。あんなにも優しくて 私を笑わせてくれた夫がこんな風に背中を 向けるなんて。夫はリビングに行くと無言 のママソファーに腰を下ろし、鞄の中から いくつかの書類を取り出した。その動きは 淡々としていて迷いも怒りもなかった。 まるでそれが決まった儀式であるかのよう に冷静すぎるほど静かだった。目の前に 差し出された髪を見て私は目を疑った。 離婚届け。私の名前の欄以外はすでに全て 記入されていた。そしてその横にはもう1 つの封筒が置かれていた。これ見といて。 夫はそう言って書類と一緒に中身の入った SDカード、そしていくつかの写真を テーブルに並べた。その瞬間、頭の中が 真っ白になった。そこにあったのは私が彼 と笑って映っているツショット。ホテルの 前で腕を組んで歩いている後ろ姿、部屋の 中で肩を寄せ合って取った自撮り。全部 覚えがあった。 確かに私だった。私は目をそらしたかった けれど目の前に広げられた現実からは 逃げよにも逃げられなかった。何これ?声 は震えていた。でも夫は表情を変えずただ 一言だけ言った。離婚するから書いといて 。それは今までで1番冷たい声だった。 怒鳴り声でもなく恨みのこもった口調でも ない。ただ完全に終わった人間の声だった 。私は思わずテーブルに手をつきその場に 崩れ落ちた。視界が滲んで呼吸が苦しく なった。違うの?違う違うってば。自分で も何を言ってるのかわからなかった。話せ ばわかるって5回5回なんだよ。私は本気 じゃなかったの。浮気じゃない。ただ 寂しかっただけで涙とおえが喉を詰まらせ て言葉にならない。でも夫はただじっと私 を見下ろしていた。その目にはもう私への 愛情なんて一滴も残っていなかった。ねえ 、お願いだから話そうよ。やり直せ るってねえ。私は夫の腕を掴み、泣き ながら懇願した。何でもする。だからもう 1度だけ振り向いて欲しかったけれど夫の 目は動かなかった。まるでそこに私はい ないかのようだった。そして夫は 立ち上がるとスーツケースのと手を握り ドアの方へ向かった。私はまだ何かを叫ん でいた。お願いだから行かないで帰ってき てよ。泣いて叫んで床にすがりついて全て のプライドを投げ捨てたけれどその背中は 何ひつ振り返らず静かに扉を開けた。 そして玄関のドアが閉まる音が響いた瞬間 私の中で何かが崩れ落ちた。私が泣いても 叫んでも取り乱しても夫の心はもう届か ない場所にあった。どれだけ自分の感情を ぶつけても夫の目にはもう私は映ってい なかった。あ、全部終わったんだ。私は すがって許してもらえるような立場じゃ なかった。これは自分が巻いた種だった。 壊したのは私だった。優しかった夫が最後 に見せた無表情は私の裏切りが作り出した 顔だった。そして私はリビングの真ん中で 膝を抱えて泣きじくるしかなかった。泣け ば泣くほど自分の愚かさと身にくさが胸に 突き刺さっていった。でもどれだけ泣い たって時間はもう戻らない。もう手遅れ だった。それから私は実家に戻った。両親 にちゃんと話さなきゃって思ってた。 あんた一体何やったの?母の声は震えてい た。父は何も言わず、ただ腕を組んだまま 私のことを睨むように見ていた。私は正直 に話すと決めていた。もう隠し通せるもの なんて何もなかったから。夫の無言の 荷造り。そして置いていった離婚届け。 全てが現実で逃げ場はもうどこにもなかっ た。浮気してた夫じゃない人と声はかれ うまく出なかった。母が口元を手で抑え 涙んだ。父は眉を潜めたまま一言も発さ なかった。相手はあんたの友達の婚約者 って本当なの?夫の方から事前にある程度 の話は両親に言っていたようだった。私は 小さく頷いた。その瞬間父が立ち上がり 静かに部屋を出ていった。ドアが閉まる音 が妙に大きく響いた。どうして、どうして そんなこと?母の目に攻めよりも呆然とし た悲しみが滲んでいた。私も分からなかっ た。どうしてなんて自分でも何度も 問いかけたけれどその理由を言葉にできる ような綺麗なものなんて何ひつなかった。 寂しかっただけほんの出来心だった。そう 言いかけた時、母がきしりと遮え切った。 寂しかった。出来心。そんなもので大事な もの全部壊したの。私は何も言えなかった 。何を言っても言い訳にしかならなかった 。明日向こうの家族も来るって連絡あった よ。母はぽつりと呟いた。ちゃんと自分の したこと受け止めなさい。 私は首を盾に振るしかなかった。そして 翌日、じたの玄関に次々と足音が響いた。 リビングに通された私はソファーの橋に 小さく座り込んでいた。先に到着したのは 夫。その後に義両親、義ま、続いて 幼馴染みとその両親、そして彼と彼の両親 も現れた。リビングには静寂と緊張が 張り詰めていた。誰も目を合わせない。誰 も口を開こうとしない。本日はお時間を いただきありがとうございます。皆さんに お集まりいただいたのは幼馴染みが静かに 口を開いた。私にとってはかつて1番の 親友だった人。その声は震えていた。でも その目ははっきりと私を睨んでいた。 私たちのパートナーによる不定行為につい て事実を明確にし、今後の対応を話し合う ためです。その言葉が部屋に落ちた瞬間、 私は背筋から冷たい汗が伝うのを感じた。 そこからは幼馴染みと夫が交互に話を進め ていった。幼馴染みは言った。ある日、彼 のスマホを何気なく見てしまったこと。 普段は触らないけれどその日だけはなぜか 気になった。ここで私とのLINEを 見つけたのだと最初は信じられなかった けれどやり取りを読むに連れて確信したと そして更新所に調査を依頼したことも つまり全部知られていた。何もかも写真、 LINEの内容、ホテルに入る姿、私と彼 が何度も何度も会っていた証拠。夫はそれ を黙ってノートパソコンを開き、みんなに 見せた。私は目を伏せた。見たくなかった 。でもそこに映っていたのは笑っている私 の顔だった。夫ではなく彼の隣で心から 楽しそうに笑っている私たった全身から 血の毛が引いた。両親の気配が隣で固まっ ていたのを感じた。幼馴染みの母親が すすりなく声が聞こえた。幼馴染みの父親 はただ無言で腕を組んだまま何も言わ なかった。彼は青ざめた顔でソファーに 沈んでいた。私はもう何も言えなかった。 話が一通り終わると彼が突然立ち上がって 声を荒げた。嘘だ。誤解だ。そんなわけ ないだろう。その瞬間我が一気に凍りつい た。彼が夫に掴みかかろうとしたその切な 2人の父親が同時に動いた。夫の父が間に 入り、静かに押しとめた。そして彼の父親 が突然彼の方を開手打ちした。黙れ。乾い た音が部屋中に響きは立った。彼はその場 に尻り持ちをついた。彼の母親は涙を流し ながらただ小さくお越していた。そして彼 の父は深く頭を下げた。こんな恥ずかしい 人間に育ててしまって本当に申し訳あり ません。その姿を見た時、私は自分の心が しむ音を聞いた。自分のせいで人が壊れて いく。人を壊してしまった。それが現実 だった。私は立ち上がってその場に膝を ついた。崩れ落ちるように土下座した。 本当にごめんなさい。でも離婚だけは許し てお願い何でもするから。涙も鼻水も猛で も良かった。恥も形も何もなかった。何で もするからじゃないと言って母が私を貧し た。私は床に倒れ込んだ。こんな娘に育て てしまって申し訳ありません。母はそう 言って泣いていた。父はずっと目を閉じて 口をきつく結んでいた。そしてようやく 静かに口を開いた。お前が自分で舞いなん だ。ここでちゃんと責任を取れ。謝るだけ じゃもう済まない。私は顔をあげた。夫を 見た。その目は氷のように冷たかった。 道場も未練も何ひつっていなかった。夫は 黙ってテーブルに置かれた500万円の 慰謝料請求所と連所を指刺した。その意味 を理解するのに時間はかからなかった。私 は母に手を添えられながら震える手でペン を取った。描きながら何度も顔をあげて夫 を見た。泣きじくりながら何かを訴え たかったけど何を言ってももう夫には届か ないと分かっていた。夫はただ私の行動を 静かに見ていた。その目には全く感情が なかった。そして最後に夫が私に訪ねた。 前に渡した離婚届けサインしたのか。そう 聞かれた瞬間、胸がギュっと締めつけられ た。涙が勝手にこぼれてきて私は首を横に 振るしかなかった。持ってきてない。まだ 書いてない。震える声でそう答えると夫は 静かに言った。ならここで書いてもらおう か。その声に攻めるような色はなかった。 だからこそ余計に苦しかった。夫がカの中 から取り出したのはもう1枚の離婚届け。 まさかそんなことまで考えていたなんて。 実はこうなることも想定して市役所で2枚 もらっておいたんだ。1枚は前に渡した やつ。そしてこれは俺の乱だけ記入済みだ 。簡単とした声が心に突き刺さる。目の前 に突き出されたその神を私はじっと見つめ たまま何も言えなかった。言葉にならない 感情が胸の奥でうまいてただ視線を落とす ことしかできなかった。その時母がそっと 私の手を握っていった。もう諦めなさい。 私は机の上に離婚届けを広げた。目の前 が滲で文字がぼやけて見えた。震える指で 最後の署名欄に自分の名前を書き終えた。 その瞬間、夫と夫婦でいた時間が全て 終わった。私のせいで私はその場で音も なく泣いていた。誰も私を見ていなかった 。この空間で泣いていいのは被害者だけだ 。それがこの場の答えたった私は音もなく 自分が壊れていくのを感じていた。彼の方 も同様に幼馴染みと手続きをしていた。 それから私は幼馴染みにも土下座した。 土下座で許されるとは思っていなかった。 でもそうすること以外何もできなかった。 そして幼馴染みからも同様に500万の 慰謝料請求をされた。法的には相場より 高い請求額だったみたいだけど、婚約の 重大性と不倫の悪質性などから500万円 という金額も決して過剰とは言えなかった 。夫と幼馴染みそれぞれに対して500万 、合計1000万。私はその数字を理解し た時、やっと自分の犯した罪の大きさに気 がついた。話し合いが終わる直前、夫が 役所に離婚届けを提出すると言っていた。 この日、私と夫は完全に赤の他人になった 。数日後、元夫から来週中に荷物をまとめ て出て行ってくれとけLINEが来た。 一緒に住んでいたの契約者は元夫で私は 住まわせてもらっていた立場だった。当然 だと思った。だけどそれでも涙が止まら なかった。私はあれから実家にいたけれど 荷物をまとめるため久しぶりに家に戻った 。荷物をまとめている間また涙が止まら なかった。泣いても意味ないのに。そして 家から出ていく時、殻になった部屋を 見渡して私は呟いた。今までありがとう ございました。それから私はまっすぐ実家 に戻った。何も考えられなかった。気づけ ば自分の部屋の布団に潜り込んでいて ほとんど動けなかった。母が部屋の前に 食事を置いてくれていたけど、手をつける 気力もなかった。スマホだけが手元にあっ た。私は真っ先に彼の連絡先と写真を消し た。それから私はSNSを開いて呟いた。 私ばっかり傷ついた。どうして誰も私の 気持ちを分かってくれないの?裏切られた のは私の方だったのかもしれない。 もちろんそんなわけがない。分かってた。 私が間違っていた。誰よりもひどいことを したのは私自身だった。でもそうでも言わ なきゃ自分が壊れてしまいそうだった。 感情を吐き出せる場所はもうネットの中 しかなかった。誰にも会いたくなかったし 、誰からも攻められたくなかった。自分で 巻いた種なのにそれを正面から受け止める 勇気もなかった。方向にはいくつか信辣の コメントがついた。バーカアホでも本当の 意味で私のことを知っている人間にその 言葉を言ったらどうだろう。絶対に誰も 味方になんてならない。そう思った瞬間、 スマホを布団の中に放り投げた。その頃 元夫と幼馴染みへの慰謝料の支払い期限が 迫っていた。王で1000万円。元夫と 幼馴染みの両方に過ごずつ。あまりにも重 すぎる現実だった。私の手元にあった貯金 はビビたるものだった。ほとんどは両親が 立て替えてくれた。というより私のために 借金をしてくれた。母は何も言わなかった 。ただ500万円が限界よ。あとは自分で なんとかしなさい。これは歌詞よ。私たち にちゃんと返しなさいと言ってそれきり だった。父は口を聞いてくれなくなった。 私は何もできなかった。泣いてねてSNS に言葉を吐き捨ててそれで終わり。責任を 取ることすら両親に任せていた。振り込み は自分で言った。弟と幼馴染みの双方への 送金が終わった時、私は1つの感情を抱い ていた。私は被害者なんじゃないか。自分 でもこんなことを思うのは最低だと思った 。私は元夫からも幼馴染みからも両親から も見放された。居場所なんてどこにも なかった。この温かかった家庭も笑い合っ た食卓も何もかも全部自分の手で壊した。 それなのにどうして私はまだかわいそうな 自分で出たいと思っているんだろう。どう して罪を背負うんじゃなくなかったことに したいと願ってしまうんだろう。SNSの 投稿履歴を見返して私は思わずスマホを 伏せた。被害しゃぶっている私の言葉が 気持ち悪くて見るに至なかった。私本当に 最低だな。消えるような声で呟いた。その 声があまりにも情けなくて涙がまた溢れた 。たった1つの裏切りで私は大切な人たち を失った。それだけじゃない。自分のこと まで嫌いになった。を見てもそこに移る 自分が誰なのか分からなくなっていた。 あれから数年が経った。ようやく私は人と して最低限の生活を取り戻していた。 昼はジムのパート、夜は飲食のバイト。 両親に借りたい車両の軍と残りの 500万円を返すため働き詰めの日々だっ た。罪滅ぼしのためそう自分に言い聞かせ ながらただ毎日をこなしていた。ある日 休憩中に何気なく開いたSNSで元夫と 幼馴染みの投稿画に入った。そこには白い ウェディングドレスに身を包んだ幼馴染み とタキシード姿の元夫の結婚式の写真が 映っていた。私はスマホを持つ手が震えた 。でも目をそらすことはできなかった。 元夫の隣に立っていたのはかつての 幼馴染み。私が裏切った相手。私の謝ちに よって傷つけなかせ全てを壊してしまった 人。その幼馴染みが元夫の隣に立っていた 。ドレス姿は嘘みたいに綺麗で心からの 笑顔だった。2人が並ぶ姿は不思議と しっくり来ていた。私の隣にいた頃の 元夫とよりもずっと穏やかな顔をしていて 、それが少しだけ胸に刺さった。SNSに よると2人の間には子供も生まれるらしい 。今は高外に引っ越して穏やかに暮らして いるという。彼については今どこで何をし ているかは分からない。彼とはLINE だけで繋がっていたから私は今何も持って いない。愛された記憶も家庭も友人も自分 の愚かさだけが今も手元に残っている。誰 のせいでもない。全部自分で壊したものだ 。そして今こうして何もない場所に1人 残されている。それが私の選んだ結末だっ た。 数日前、不人家の診察室で意思にそう言わ れた。整病の可能性がありますね。一応 検査に渡しておきますけど、その言葉を 聞いた瞬間、私の中で心当たりがはっきり と1つ浮かんだ。それはり太、私の本命。 今は無職でアパートで酒ばかり飲んでいる 男。でもどんな姿でも私には魅力的に移っ てしまう人だった。病太とは夜の町で声を かけられて知り合った。当時すでに私は夫 と結婚していたけどにどんどん引かれて いってしまった。病太特殊な接客業関係の 仕事をしていて、そこで私は紹介される形 で今の夫には内緒でスコット的に働いた 経験もある。は戸惑いもあったけれどすぐ に麻痺していった。昼はファミレスの キッチンでバイトしていると夫には言って ある。もちろんそれは真っ赤な嘘。本当は 夫には言えない場所で自分の体を売って いる。全部り太のために。り太はいつもお 金がない。私にLINEをよしては ちょっと金ない。遠送ってくる。私が スコット的に働けば数万円くらいはな何と かなる。夫にバレることもない。両太 に渡す時私はどこか満たされていた。必要 とされてる。ってそれだけで嬉しかった。 り太に一緒になりたいと伝えた時帰ってき たのは苦笑いだった。いや、お前は奥さん ではないな。俺みたいなのじゃ幸せにでき ないし。って断られたんだ。はっきりと。 それでも私はり太が好きだった。だから 仕方なく夫との生活を続けている。夫は 優しい人。誠実で私のことを気遣って くれる。でもどこか他人みたいだった。 一緒にいてくじゃない。会話も普通に できるし、家の中も平和だったけれど、私 は夫 として見ていなかった。両太が本命。夫は 安全な場所だからこそうまくやれてると 思っていた。話を今に戻す。私は感染して いる。私は感染によって自分の下腹部から 漂う匂いが日をうごとに強くなっている ことに気づいていた。お風呂で何度も丁寧 に洗っても下腹部の奥の方絡むわっと 立ちのような重くて湿めった匂いが消え ない。整理でもないのに量に粘ばついた 分泌物が下着に媚びりつく ショーツを洗いながら自分でも顔を仕かめ た。夫にバレていないか不安だった。だ からいつも以上に清潔を心がけた。 シャワーを長めに浴びてデリケートゾーン には専用のソープを使い服部を二重に洗う 。それでも自分で分かるくらいには匂いが 残っていた。今日も仕事から帰ってすぐに お風呂へ直行した。頭から先まで丁寧に 洗ってタオルで体を吹きリビングへ戻る。 ソファーには夫が座っていた。テレビを ぼやり眺めている。私はリビングのヨガ マットの上に座り、解客してストレッチを 始めた。最近体が硬くなったと感じる。 年齢のせいかそれともストレスなのか。 ゆっくりと深呼吸をして体を前に倒した。 その時だった。お腹に少し力が入った表紙 に音が出た。鈍く湿めったような音。あ、 反射的に体を起こした瞬間匂いが鼻をつい た。生ぬるい濃厚な匂い。明らかに普通の ではない。私の中にあるもの。その奥深に ある感染の匂いも一緒になって立ちのって きたようだった。辺りに匂いが充満するの が分かった。目の前のソファーで夫が こちらに視線を向けた。何この匂い?私は 思わず笑ってごまかした。やだ。臭い。 納豆じゃん。納豆だ。いつも通りに 振る舞うとしたけれど夫は笑わなかった。 ほんの一瞬顔が引きつってそれから無言で テレビに視線を戻した。あの日を境えに夫 の態度が変わった。分かりやすく冷たく なったわけじゃない。怒鳴られたわけでも 問い詰められたわけでもない。ただ明らか に静かに私に触れなくなった。夜寝室に 入っても背中を向けたまま触れ合うどころ か毛布の境い目を超えてくることすら なかった。目が合わなくなった。話しかけ ても頷くだけ。その頷きすらどこか機械的 で表情が伴っていなかった。私たち夫婦は 元々レス気味だったけど夫の態度は以前に も増して静かになった。気のせいだよね。 好かれてるだけだよね。ってそう自分に 言い聞かせていた。何も言わずにいた方が マなような気がして私は黙っていた。夫も 黙っていた。2人で一緒にいるのにどちら も何も言わない。まるで透明な膜が部屋の 中を仕切っているようだった。一緒に食事 をしても味がしなかったし、同じベッドに いても孤独だった。 沈黙のまま何も起きない日々が続く。何も 壊れないけれど何も気づけないまま。だ けど私はり太と離れず夫に安定をもらって いる状態が続くのであれば問題ないと思っ ていた。バレなければ平和は守られる。 そう思い込みながら私は2人の男の間を 生きするに地上に少しずつ戻っていった。 私は自分を独身と偽ってマッチングアプリ を始めた。ただの退屈しのぎだった。 そんな時に出会ったのが高彦だった。最初 の印象はただ優しそうな人。チャラついた 感じはなく、むしろちょっと不器要素で 真面目な雰囲気だった。やり取りを続ける うちに彼はすぐに私のことを特別扱いする ようになった。 君みたいな人に出会えてよかった。高彦は そんな言葉を言うようになっていった。 ある日、私は冗談のように言った。友達が お金に困っててちょっとだけ相談されたん だけど私は無理なんだよね。すると彼は 即座に行った。俺が出すよ。それくらい 全然驚いた。でも内心では少し嬉しかった 。この人は私のためならお金すらを閉ま ないのかと。ほんの数万円 だけどすごく助かった。もちろんその友達 っていうのはり太だった。高彦からもらっ たお金はり太に渡した。お金渡すとり太は 決まって笑った。お前って本当いい女だよ な。そんな言葉をもらって私は嬉しかった 。その頃からスポット的な仕事には ほとんど入らなくなっていた。高彦が くれるお金が両太に渡っていくから高彦に とって私は守るべき存在なんだろうけど私 にとって高彦は利用できる存在になってい た。だけど心のどこかでいつかちゃんとお 返ししないとなとは思っていた。そして ある夜私は高彦と肉体的にも繋がることに なった。高彦の優しい手つき 真っすぐなし。本当に俺と付き合って くれるのと聞く彼に私は笑って頷いた。数 日後、高彦から連絡が来た。ちょっと下の 方が痛くて病院行ってきたんだけど、どう やら感染してたっぽい。スマホの画面に 表示されたその文明を見て一瞬手が止まっ た。ああ、映してしまったかと思った。私 が感染。分かってた。でも高彦はそれでも 私を責めなかった。なんかの間違いだよね 。気にしなくていいよ。 と続けた。優しい。私の周りの男はバカ みたいに優しい。私はり太だけ必要とされ たらそれでいい。夫からもらえる安心も 高彦からもらえる優しさも全てり太のため 目の前の日常は変わらず平和に見えた。夫 はいつも通りに帰宅し、いつも通りに テレビをつけて、縁かは少ないながらも 必要最低限の会話は交わしていた。高彦も 優しかった。会えば笑ってくれるし困って ないと聞いてくる。私はその度にほんの 少し眉を下げてうん、大丈夫と控えめな 微笑みを浮かべていた。でも何かがわずか にずれている気がした。ある日高彦と LINEをしていた時のこと。また友達が 金に困ってるみたいでといつも通りの門本 を送った。以前なら即座に送るよ。今 いくら必要と帰ってきたはずなのにその日 は少し間があった。どうしてその人いつも 困ってるの?自分でなんとかする気はない の。その一分を見た瞬間、心臓がずきんと いたんだ。とっさに本当だよね。私も 巻き込まれてる感じで。とごまかしたけど 彼の反応はどこか覚めていた。気づかれた 。そんな不安な指先をじ々人しびれさせた 。それだけじゃない。数日前のことだった 。風呂上がり、スマホをリビングの テーブルに置いたまま台所に立っていた時 、両太からLINEが届いた。明日 アパート来れる。ほんの一瞬だったけど ソファーに座っていた夫の目線がスマホの 画面に向けられていた気がした。夫はその まま何も言わずテレビに視線を戻した けれど、私の背中にはひりつくような感覚 が残った。まさか読まれてた。いや、 きっと一瞬だけ。でも私は同様を悟られ ないようにスマホを手に取り、すぐに画面 を消した。それからというもの、スマホを 手放すのが怖くなった。通知モオフに シカスコードも変えた。夫と暮らしながら り太とは週に1度会っていた。ホテル台も 食事代ももちろん私が出していた。そのお 金の出所は高彦から受け取った行為だ。 つまり私は夫の家に住みながら高彦の金で り太と会っているという の嘘の上に生活を気づいていた。最初は うまく回っていた。夫は無関心。高彦は 盲目的。病太は相変わらず金がなくて私に すがってきた。その構図に私は安心してい た。誰にもバレないと思っていた。私は まだ器用に立ち回れると信じていたけれど 違った。最近夫の視線が変わった。以前の ような無関心ではなく静かな観察に近い。 朝食を食べながらちらりとスマホを見て いる私に何か言いたげ。目は合わない けれど確実にこちらを意識している気配が ある。高彦もまた以前のように無条件でお 金をくれることはなくなっていた。友達 ってどんな人?写真ぐらいあるでしょう。 ちょっと見せて。そんな質問がふとした 会話の橋に混じり始めていた。私は笑って ごまかし続けたけれど高彦の目の奥にある 引っかかりのようなものを私は無視でき なかった。誰にも明確には追求されてい ないのに胸が苦しい。夜1人で風呂に入っ ていると息が浅くなる。お湯の中で目を 閉じるとどこからかが伸びてきそうな錯覚 に襲われた。私の中で確実に何かが音を 立てて誇び始めていた。誰かの視線が背後 に張り付いて離れない。小さな嘘が小さな 揺らぎとなってその輪郭をじわじわと広げ ていくのが分かった。私の作った生活は 思っているよりももろかった。私はその 事実をようやく理解し始めていた。 ちょっとコンビニ行ってくる。こう言って 部屋を出た高彦の背中を見送りながら私は スマホをソファーの上に置いた。その日の 昼間は高彦のアパートに遊びに来ていた。 高彦の仕事は午後から始まる。いつも夫が 仕事中で両太からの呼び出しがない午前中 は基本的に高彦のアパートで過ごすことが 多かった。狭いけれど綺麗な部屋。最低限 の家具に観葉植物が1つ。高彦らしい整理 された空間だった。私は太スマホを見ると 珍しくり太からの着信があった。私はり太 に連絡する。どうしたの?金欲しい。え、 星狩りさんですね。私が甘えた声を出した 時、背後でカチャりとドアの開く音がした 。ごめん。財布忘れた。一瞬の沈黙。私は 急いでり太との電話を切った。お帰り。今 の誰?り太の声は低く聞いたことがない トンだった。私は必死に笑顔を作った。 違うのただのスマホ。パスワードは パスコードを聞かれた。ドッグはあっけ なく解除された。 マジか。そのつきと共に部屋の空気が一気 に冷えた。高彦は立ったままスマホを スクロールし、指先が止まるたびに小さく 息を飲んだ。LINEの履歴、送金の記録 、両太との写真、そして夫とのやり取り 全部見られた。結婚してるの?私が動け なくなるのに時間はかからなかった。高彦 違うの?聞いて。違わないよ。俺が送った 金何十万も。これこいつに全部渡してたの か。高彦の声が震えていた。ちょっと困っ てる友達がいて。って言ってたよな。何回 もこの友達ってこの男のことか。俺君の こと信じてたんだよ。私は口を開こうとし たけど喉が乾いて言葉にならなかった。 高彦の顔に浮かんでいたのは怒りでも 憎しみでもない呆きれと深い絶望だった。 俺君のことが好きだったよ。守ってやりた いって本気で思ってた。マジでふざけんな よ。高彦は私のスマホをテーブルに 叩きつけ、ソファーの背に手をついて深く 息を吐いていった。帰ってくれ。高彦の 部屋を出てからの記憶はあまりない。足元 がふらついて何度も信号を見落とした。家 のドアに手をかけた時も指先が震えていた 。夜夫が帰ってきた。私がキッチンで夕飯 の支度をしていると玄関が静かに開き、 靴音が床を打った。いつもと同じはずの音 が今夜はどこだった。お帰り。振り返ると 夫はコートも脱がずにそこに立っていた。 無言のママテーブルに何かの封筒を 置き短くい放った。さっき更新所によって 報告を受けてきた。私は手を止めた。それ が何を意味するのかすぐに理解した。俺は お前を見限った。その言葉に喉の奥が ぎゅっと閉まる。乾いた音だけが頭に響く 。待って。何か誤解してるんじゃ。両太と いう男とは数年の付き合いか。夫の声は 冷たく淡々としていた。高彦ってやには 独身と偽がってたんだってな。 証拠は十分に揃ってる。言い逃れはでき ない。私は何も返せなかった。言い訳の1 つも浮かばなかった。体の中から血が抜け ていくような感覚だけが残っていた。それ からスポット的に夜の店にも出入りして たってな。ファミレスバイトなんてのも嘘 だった。記録にしっかり残ってる。夫は 封筒の口を少し開いて見せた。中には カラーされた調査報告の束。モザイクの かかっていないはっきりとした私の姿が そこには映っていた。ごめんなさい。 ようやく口を開いた私の声はかれていた。 涙は出なかった。出す資格がないと自分で 分かっていた。夫は一歩距離を取った。 もういいよ。お前がどう取り作ろっても俺 の中では答えは出てる。その一言が終わり の金の音のように響いた。離婚する。お前 に情は一切ない。夫は目をそらさずにそう 言った。その言葉に私の中の何かが 崩れ落ちた。まるで心の中に硬い食いを 打ち込まれたような鈍い痛みが胸を支配し ていく。なって話を無駄だ。精神的靴転走 義務違反そして中の20不定全て記録とし て残ってる。更新所がまとめた報告書も あるしお前のスマホからのデータも回収 済みだ。淡々とした口調が帰って 恐ろしかった。慰謝料は請求する。最低で も500万。り太という男の存在。という 男への嘘。夜の店全部込みで妥当な額 だろう。私は口を開いたが何も出てこ なかった。夫が怒鳴ってくれたらまだマ だった。その冷静さが全てを突きつけてい た。あの時のお前のおならの匂い。あれが きっかけだったって今でも覚えてる。お前 さ、感染してんだろ。このり太ってやつ 特殊な接客業関連の仕事をやってたんだっ てな。全て繋がったよ。り太ってやつ精病 なんじゃね。そのり太ってやつにお前は 精病を映されたんだろう。だからあんな変 な匂いがしたんだ。あれでお前を女として 見れなくなってよかった。お前とやって たら俺も精病になってたんだからな。私は ただ立ち尽くすことしかできなかった。 その翌日、高彦からアパートに来るように 連絡が来た。会うなり高彦は目を合わせず に封筒を差し出してきた。中には簡易書類 と振り込み先が書かれた目も慰謝料を払っ てもらう。俺がお前に貸した金、感染させ られた体、そして心の損害分、全部 ひっくるめて150万請求させてもらう。 私の顔が怖ばったのを見て高彦は静かに 言った。お前の旦那さんに前後教えて もらったよ。その声にはもうかつての優し さはなかった。俺はお前のこと本気で信じ てた。でも裏切られた。騙された。バカに されてた。お前に優しくした分、憎しみも 深くなったよ。今までの責任を取って もらう。私はただ頷くことしかできなかっ た。反論も公弁もできなかった。私は全て を失った。夫も高彦も私を捨てた。残った のは両太だけだった。私は最後の望みを 託してり太に連絡を取った。泣きながら 事情を話すとり太は呆れたようにため息を ついていった。え、マジでめんどくせえな 。電話の向こうの声はどこまでも他人ごと だった。俺も請求されるってことだな。 まあ、俺の分の慰謝料も払ってくれたら 一緒に住んでもいいよ。前働けよ。夜とか も出られるし、それなら問題ねえわ。私は その言葉にすがるように頷いた。色々あっ たけど両太と一緒に入れるだけで心が保た れる気がした。そう思い込もうとした。 こうして私はり太のアパートでの同性を 始めた。家具もシ具も最低限。昼間は日が 刺さず夜になるとすぐに湿気と酒の匂いが 漂う空間。病太昼前に起きカンビールを 片手にテレビを見ながら寝転ぶ。私が掃除 をしていても無視。買ってきた食材に文句 を言い、前の女が作った飯の方がうまかっ たなと笑うことすらあった。私は家賃も 高熱費も食費も全てを負担していた。 そして元夫と高彦それぞれから通告された 慰謝料の返済も始まっていた。1ヶ月 あたりの支払い額は約40万。昼間も夜も り太が紹介してきたお店に通うようになっ た。もう働く意味すらよくわからなかった 。でも支払わなければならない。契約書が あり特が来る。朝帰ってくるとり太がカを 積み上げながら寝ていた。その姿を見 ながら私はり太のために買ってきた新しい カンビールを冷蔵庫に入れて冷やした。 これは私の選んだ地獄何だと思った。でも その地獄にすがらなければ私はもうどこに も居場所がなかった。私はもう妻でも彼女 でも女でもなかった。ただの都合よく金を 出す存在。ただの両太の利用。その夜鏡の 中で自分の顔を見た時そこには誰にも愛さ れていない女が静かに映っていた。おいて ねえぞ。昼下がり太 がソファーに寝転んだままカンビールを手 にして文句を言った。起きてからまだ30 分も経っていない。もちろんり太は今日も 仕事に行く気配すらない。り太との生活が 始まってもうすぐ3ヶ月が経つ。最初は 慰謝料払ってくれるなら一緒にいてやるよ と言われん。それでも両太と一緒にい られることが救いに思えた。でも現実は 想像よりもずっと重かった。元夫と高彦に 払う慰謝料。元夫オ夫からはつき始めに 確認した。ドライが1だけ届く。高彦は 少し遅れて次回もよろしくとけ返してくる 。感情も攻めもなく、ただ機械的に義務と して、でもその冷たさが私の背中を じわじわと締めつける。彼らにはもう私と いう人間の存在は関係ない。あるのは 支払い人としての私だけだ。生活費、高熱 費、食費、家賃、そしてり太の酒とタバコ 台全て私が稼いでいる。両太からは しょっちゅ文句も言われる。無視もされる 。それでも私はこの男を手放せなかった。 俺働くの向いてないしな。前の職場も全部 首だし。だからお前が外で稼いで俺を支え てくれたらちょうどいいじゃん。その ちょうど良さのために私は今日も出勤する 。夜の世界に戻ることにもうためらいは なかった。両太が紹介してくれた店は以前 とは雰囲気が違った。どこか雑然としてい て清潔感もなかった。稼がなければ生きて いけない。私もり太も体を酷使しした マシーンを削る。帰ってくるとリビングに は酒臭い空気と散らかった床。両太はお 帰り。お、お疲れ。もう言ってくれない。 私はただ黙ってリビングのソファーに 座り込む。安い合皮のソファーが足に ひんやりと張りつく。目の前にはり太の 背中。汗とアルコールの匂いが混ざった だらしない背中。時折りスマホをいじって いるメッセージアプリの画面が光っている のが見えた。女の名前だった。私じゃない 。別の誰か店の客だったとか昔の同伴相手 だったとか理由はどうでも良かった。両太 は浮気をしているのかもしれない。でも 問い詰める気力なんてもうなかった。この 生活を壊す勇気が私にはなかった。私は今 誰にもすがれない場所にいる。元夫にも 高彦にも憎まれもせずただ切り離された。 許されることも責められることもなく、 ただ関係ない存在として放置された。両太 は違う。まだ私に言葉をかけてくれる。 たまにまだ必要としているようなふりをし てくれる。だから私はこの男を手放せない 。私はゆっくりと息を吐きながら両太の 背中を見つめた。その背中には何の頼もし さも温かさもない。 でももうそれすらわからなくなっていた。 ソファーに沈み込む体がだんだんと自分の ものじゃないような感覚になっていく。私 の愛する男つり と呟いた。そういった自分の声があまりに 空気で私は思わずっと笑ってしまった。 乾いた色のない笑い声。両太は振り返ら ない。振り返る必要なんてきっとないのだ 。私が愛した男は最初から私を愛してい なかったのだから、その日私はカンビール を殻にして眠る両太の背中を見ながら 小さく息を吐いた。もう十分だ。ふと心の 奥で声がした。誰にも愛されないと 決めつけていたのは多分私自身だった。 このまま口て行くのはさすがに馬鹿らしい 。涙はもう出なかったけど立ち上がること はできた。小さく笑って私はり太のために 買ってきた缶ンビールを冷蔵庫から 取り出し自分の手で開けて自分で飲んだ。 まだ間に合う。そう信じてみたくなった。 [音楽] 結婚して数年、私は普通に幸せ だと思っていた。子供はいなかったけれど 焦っていたわけじゃなかった。夫は仕事に 真面目で家計も安定していて口うるさく ない。私も必要以上に干渉せずにいたし、 他の家庭と比べればきっと恵まれていた はずだった。でもいつからか私は心の中に ぽっかりとした穴のようなものを感じる ようになっていた。それが寂しさだと 気づくまでには少し時間がかかった。夫は 昔から口数が多いタイプではなかった けれど の頃や新婚の頃はよく笑ってくれていた。 ちょっとしたことで頭を撫でてくれたり、 寒い日は毛布をかけてくれたり、手をつい で眠ることもあったけれど、気づけばそう いうことがどんどん減っていた。目があっ ても笑い返してくれることは少なくなり、 帰くしてもただいまというだけだった。夫 から話しかけてくれることが減った気がし た。私が話しかけたら話は聞いてくれる ものの話を広げようとしてくれることが 減っていった。へえ、そうなんだとかの 簡単な返事が多くなったように感じていた 。私は変わらず家事をしていたし、夫の 鉱物を用意することも忘れてはいなかった 。休日には映画に誘ったり、食事に 出かける提案もしていた。夫は私の提案を いつも受け入れてくれていたけれど、夫 から私に何か提案してくることはなかった 。夜も最初の頃は自然に求め合っていた はずなのに、いつからか私からばかり 触れるようになっていった。断られること はほとんどなかったけれど、私は少しずつ 女ではなくなっていくような気がしていた 。愛されていないわけじゃなかった。嫌わ れているとも思っていなかった。だけど夫 の中で私はもうただの生活の一部になって しまったんじゃないかと感じるようになっ ていた。そんな時だった。通っていた駅前 のジムで彼に出会ったのは最初はマシンの 使い方を教えてくれたのがきっかけだった 。年齢は夫と同じくらいか少し上に見えた 。でも話し方が柔らかくて笑顔が自然で 何よりも私の話をちゃんと聞いてくれた。 ご主人筋トレとかされないんですか?そう 聞かれて仕事が忙しくてなかなか時間が ないんですと答えた時彼はあ、そういう人 って家庭でも気が抜けないでしょうと言っ た。その一言に私は驚くほど胸が触ついた 。初対面の人に何がわかるっていうのを そう思う反面。あ、やっぱり私見られてい ないんだ。友識に思っていた気持ちを言葉 にされた気がした。彼とはその日以降も何 度かジムで顔を合わせた。軽い世間話を するだけだったけれど、その時間が少し ずつ私にとって楽しみ。なっていった。別 に浮気をしようと思っていたわけじゃない 。ただ誰かとちゃんと会話ができること、 何気ない言葉がに反応してもらえること。 そんな些細なことが私にはもうずっと なかった。彼の存在が私の空白を優しく 埋めてくれている気がした。だから私は それ以上を求める気なんてなかった。 とも最初のうちは浮気なんて絶対にしない 。彼と知り合ってすぐの頃私はそう決めて いたはずだった。家庭を壊すつもりは なかったし、彼だって既婚者だということ は分かっていた。たまたまジムで知り合っ て何度か話して笑ってそれだけの関係で 終わるはずだった。でも夫との生活が味け ないものになっていたのも事実だった。 今思えばきちんと自分の気持ちを話して いれば良かったのかもしれない。でも当時 の私は私って何なんだろう?そんな虚しさ を抱えながらそれでも家庭を守らなければ いけないと思っていた。その一方で彼との 時間は穏やかだった。今日ちょっと疲れ てるみたいだね。そうやって私の様子を気 にかけてくれる人がいるだけで自分が ちゃんと存在しているような気がした。 最初はジブの帰りに軽くお茶をする程度 だった。だけどその時間が私にとってどれ ほど癒しになっていたかに気づいたのは その後だった。もっと彼と話したいと思っ た。もっと私のことを見て欲しいと思って しまった。気づけば連絡先を交換していて 、彼のLINEを何度も読み返すように なっていた。夫の横でスマホを見ながら胸 の奥にかな罪悪感を抱いていたけれど、 それよりも今日も夫に必要とされなかった という気持ちを紛らわせたかった。やがて 彼の方から今度車で少しお出しないと誘わ れたちょっとしたドライブだった。地元 から離れたショッピングモールでランチを 食べて服を見てのない会話をした。それが 私にはあまりにも心地よかった。ただの 友達 誰にも迷惑をかけていない。これは浮気 じゃない。そう言い聞かせながら私は少し ずつ教会線を超えていった。ある日彼が ポつりと言った。今日ホテルでゆっくりし ない。一瞬心臓が止まるような気がした。 でもその瞬間にはすでに私の中の理性は 揺いでいた。どうしてそんなこと言うの? と返しながらも拒絶の言葉は出なかった。 何度か瞬々した末え、私は彼についていっ た。後悔がなかったわけじゃない。ホテル を出た帰り道。私は自分が取り返しのつか ないことをしたと分かっていた。でも罪悪 感と同じくらいようやく誰かにも止められ たというアンド感もあった。そこから何度 か同じようなことを繰り返した。その度に 私はこれは一時のこと本気じゃない。夫に バレてないと自分に都合のいい言い訳 ばかりを並べていた。この程度なら ギリギリ大丈夫。心のどこかではもう何が 程度なのか分からなくなっていた。夫の目 を見て話すのが怖くなった。以前より会話 を避けるようになったのは夫が冷たいから じゃなく私の中に後ろめたさがあったから だった。私が夜夫のことを誘わなくなると 今度は夫の方から誘ってきた。でも私は 断ることしかできなかった。疲れてるだけ と言い訳ばかりしていた。夫に罪悪感が あるのに彼との関係をやめられなかった。 癒しを求めて始めたはずなのにいつの間に か私は彼に依存していた。夫の様子がある 日を境に明らかに変わった。妙にじっと私 を見てくるようになった。 何げない会話の中にも引っかかるような言葉が混じるようになった。それまで私の行動なんて気にも止めなかったのに今週末出かけるの誰となんて聞いてくるようになった。最初は気のせいだと思いたかった。でも時はっきりと分かった。 [音楽] 私のことを疑ってると、そう確信した瞬間 、私は心の底から恐ろしくなった。バレる 。その言葉が頭の中で繰り返されていた。 彼との関係は私の中では本気ではなかった 。ただの癒し、逃げ場は心の隙間を埋めて くれる存在。だから全部を失いたくなんて なかった。離婚なんてしたくなかった けれど、もし夫に真実を知られたら私は 全てを失う。どうする?どうすればいい? 頭の中が真っ白になりながら私は本能的に 先に動こうと決めた。逃げ場が必要だった 。そして守りの形を作らなければと思った 。それがあの一言につがった。最近何なの ?ちょっと距離感おかしいよ。こっちに 踏み込みすぎじゃない。何よ?誰と?て 浮気でも疑ってんの?女友達よ。もう無理 。しばらく実家に戻る。特に揉めたわけで もないのに。私は勝手に熱を吹いて荷物を まとめていよう。出た。夫は驚いていた けれど、私の顔をまっすぐには見なかった 。翌日、私は父に話をした。正確には父に 信じてもらえるような物語 を話した。泣きながら訴えた。毎日のよう に怒鳴られて怖くて手も出されてもう耐え られない。嘘だった。夫が私に暴力を振っ たことなんて1度もなかった。だけど私は 知っていた。被害者になれば誰も私を責め ない。DVを受けたという言葉は強い。 それを口にするだけで私の側に立って くれる人が増える。正当な理由なんてなく ても怖いと感じたというだけで私が正しい ことになる。それが私の選んだ逃げ方だっ た。父は私のことを信じて夫に電話して くれた。君が娘に暴力を振っていたと聞い た。本当なら私は君を許さない。夫は何か の誤解だと言ったらしい。そりゃそうだ。 全部私の嘘なんだから。そして私はもう1 つの嘘を形にする必要があった。諸々裏で 手配を進めて数日後、私は夫のいる家に 戻った。そしてこう言った。離婚したい。 毎日のように暴力を受けるので耐えられ ない。浮気をしているのが許せない。夫は 戸惑っていた。それもそのはず。夫は暴力 も浮気もしていなかったのだから。俺の 浮気って何?私の友達よ。あの日、私は そう言ってある女友達一の名前を口にした 。女友達一とは大学時代の共通の友人で その頃もたまに合っていた。私と女友達1 と夫の3人で会うことも何度かあった。だ から名前を出しても不自然ではなかった。 私は夫にこう言い放った。あの子があなた と浮気していたことを証言してくれてるの 。その言葉を口にした瞬間、胸の奥が キリキリといたんだ。でも止められなかっ た。そうしないと自分が壊れてしまいそう だった。さらに私は別の女友達に家に何度 か遊びに来たことがある子の名前も出した 。女友達にのことも夫は知っていた。だ からこそ利用できると思った。それから別 の私の女友達が前に家に遊びに来た時、 あなたが私に暴力を振っているのを目撃し た。だからその子も私が暴力を受けていた ことを証言してくれる。これらは全部嘘 だった。私はその2人に直接連絡をして 寝回ししていた。2人には泣いてる演技を しながらこう言った。 1人の女友達には旦那が時々外してるし、 どうやら浮気してるみたい。それに最近 冷たくなって暴力も振われてる。この再 離婚しようと思うから旦那と浮気してた ことにしてほしい。お願い。ちょっとで いいの?証言だけ形だけでもいいから。 また別の女友達には旦那に暴力を振われる ようになってきたの。離婚したいから目撃 したことがあるって言ってほしい。あなた なら信じてもらえると思うの。ほんの少し 助けて欲しいの。ほんの少しなんかじゃ なかった。私は嘘を正当化するために 女友達2人を巻き込もうとしていた。でも その時の私は自分がどれほどひどいことを しているのか直視できなかった。やって ないことを証言させるなんて最低だ。本当 は自分が1番分かっていた。でももう戻れ ないという焦りが私の中で膨らんでいた。 夫は何も言わなかった。ただやっていない の一言だけだったけれどあの時の夫の目は 私の嘘に薄う気づいているようだった。私 が先に浮気と暴力の話を出せば夫が何かを 言ってきた時には仕返し 虚偽の報復だと片付けられるそういう計算 も心のどこかにあったのかもしれない。 守りたかったのは自分の立場だった。私は ただ自分を守ることに必死だった。夫に 対して怖いと感じているふりをすることで 私は責められない存在になろうとした けれどそれがどれほど危い選択だったのか その時の私はまだ分かっていなかった。 その日から家庭内別去生活が始まった。 ある日、夫が言った。話がある。その短い 言葉に背筋が凍った。まさかと々全てが。 そんな思いが頭をよぎりながらも私は何も 聞き返さなかった。ただ分かったとだけ 答えた。夫は思っていたよりも静かだった 。顔は無表情で声はいつも通り穏やかだっ た。だからこそ怖かった。お前の望み通り 離婚してやる。その一言で頭が真っ白に なった。本当に離婚という言葉を口にされ たのは初めてだった。待ってと言いたかっ た。自分の嘘を正当化させるために暴走し ていた側面もあったからいざこう言われる とショックもあった。でも私は自分が何を 言ってももう意味がないことを理解してい た。リセットした人生を歩むしかない。 そういう覚悟も持っていたからそのまま夫 に連れられて市役所へ向かった。必要な 書類が目の前に並べられた。私はただ名前 を書くだけだった。婚姻届けを書いた日も ここだったけれどその時とはまるで違って いた。ペンを持つ手が震えていた。本当に 終わるんだと思いながらそれでも何も言わ ず私は離婚届けにサインをした。提出が 終わった後夫がふといった。せっかくだ から1度家に戻ってくれ。話がある。 話がある。またその言葉だった。今度は ただの言葉じゃないと分かっていた。私は もう逃げ場がなかった。自宅に戻るのは 怖かった。1度出ていった家へ。その玄関 をくぐった瞬間が詰まりそうだった。 リビングに座ると夫は無言で1枚の封筒を 取り出した。中から写真を吸う前、 テーブルの上に並べ始めた。何が映って いるのか私は見なくても分かっていた。 それでも目をそらせなかった。ホテル街を 歩く私、彼と並んで笑っている姿、そして ホテルに入っていく決定的な瞬間。これが お前の本当の姿だ。夫は静かにそう言った 。怒鳴られると思っていた。責められると 思っていた。でも夫の口調は驚くほど冷静 で淡々としていた。だからこそ余計に 怖かった。女友達も嘘の証言はしないと 言ってる。お前が描いた。俺が浮気してた 。って話も暴力を振ってた。って話も全部 崩れてる。もう逃げ道はないぞ。その言葉 に私は唇を強く噛みしめた。知らなかった 。夫がどうやってアを取ったのかわから ないが、まさか女友達たちがいつの間にか 夫側の味方になっていたなんて。女友達に 裏切られた。一瞬そんな感情が頭をよぎっ たけれどそれは違う。裏切ったのは私の方 だった。友達に嘘の証言を頼んだのも私だ 。それを断られても責める資格なんてない 。そ、それでだからって慰謝料なんて払わ ないからね。私にも権利があるし財産分与 もあるでしょう。私は勝手に口が動いてい た。私もや自分を守ることにただただ必死 だった。夫は私をじっと見つめながら静か に首を振って続けた。 分は放棄してもらう。慰謝料として 500万円。これで手を打つ。は、 500万。ふ、ふざけないでよ。気づいた 時には私は立ち上がって叫んでいた。怒り なのか焦りなのか自分でも分からなかった 。とにかくそんな金額払えるわけがないと 思った。非現実的だった。夫は全く 同じかった。冷静な表情のままもう1枚の 封筒を取り出した。それは慰謝料請求所 だった。名前も住所も金額も全て記されて いた。すでに用意されていた。裁判で争っ てもいいぞ。ただしお前が勝てる見込みは ない。俺には証拠がある。お前はこの請求 書にサインして素直に支払えばいいんだ。 言葉が出なかった。本当に逃げ場はなかっ た。それとも俺が今からお前の実家に行っ て本当のことを全部話してもいいけど、 その一言で私は一瞬で凍りついた。お前俺 のことをにボロクソに言っただろう。DV だてさ。浮気したとも言ってんだろう。 自分に都合よくでも実際には全部 出っちあげん。俺が真実を話せばお前の親 はどう思うだろうな。私は俯いたまま方を 振わせていた。両親の前で泣きながら嘘を ついた自分を思い出して吐き怪我した。夫 はさらに続けたけど俺は言わないよ。言わ ない代わりに慰謝料500万。 財産分与なし。それで終わりにしよう。俺 はお前から慰謝料をもらって早いところ さっぱり終わればそれでいい。自分の娘が 浮気して追い出されて離婚になったなんて 知ったらお前の親は悲しむぞ。お前は自分 の親すら騙しているんだ。それを俺が ばらそうか。嫌なら慰謝料を払えよう。 払ったら本当のことは言わないでおいて やる。 夫の言葉はどこまでも現実的でそして残酷 だった。でも不思議とその中に優しさの ようなものも感じた。俺は悪者のままで 構わないよ。これ以上親を悲しませるな。 その言葉に私は膝から力が抜けた。夫は ただ現実を見せつけてきた。私は黙って 請求所にサインをした。ペンを持つ手が 震えていた。目の前が2人で文字が歪んで 見えた。私は一言も発さなかった。何かを 言い出せる言葉はなかった。離婚届けに サインしたその日、私は再び実家に戻った 。玄関を開けた瞬間、母が小さく息を飲ん だのが分かった。私は目を合わせられ なかったけれど何も言わず母は私を 迎え入れてくれた。いつものリビングが こんなにも狭く感じたのは初めてだった。 翌朝私は自分から父に話を切り出した。 お父さんお願いがあるの。食卓の向い側に 座る父は腕を組んだまま黙って私を見つめ ていた。母は何も言わずにお茶を置き、 少し離れた席に座った。まるでさかれるの を待つ被告人のような気分だった。お金が 必要なの。500万 言葉にするだけで喉が焼けるように痛かっ た。父の眉がびくりと動いた。その顔には 怒りよりも失望が浮かんでいた。なんだ それは?何に使う金だ?冷たい声だった。 私は俯いたまま必死に言葉を選んだ。でも 本当の理由、浮気、嘘、慰謝料を言える はずもなかった。離婚したのでも条件が あってそれでどうしても必要なの。父は しばらく何も言わなかった。空気が 張り詰めて母の湯みを置く音だけが耳に 響いた。お前、あの男からDVを受けてい た立場のお前がなぜ払う側なんだ?あの男 に払うのか?まさかお前何かやらかしたの か?それとも何か騙されてんのか?私は 震える手で膝を握りしめた。逃げたかった 。でも逃げられなかった。 全部私が悪かった。説明はできない。でも 助けてほしい。これが最後だから父の表情 は凍ったままだった。母は一瞬私の方を見 たけれど、すぐに目をそらした。しばらく の沈黙の後、父は母と何かを話して外へ 出かけていった。しばらくして父が戻って きた時、手にしていたのは1つの封筒だっ た。俺たちにもそこまでの蓄えはない。 これが限界だ。お前がこれからどう生きる かは知らんが、少なくとも俺たちは何も 聞かん。その言葉に私は顔をあげることが できなかった。ありがとう。もごめん なさい。も喉の奥でつって声にならなかっ た。封筒を両手で受け取った瞬間手が震え た。ものすごく重く感じた。部屋に戻ると 私は崩れるように畳の上に座り込んだ。 封筒の中にはきっちり揃えられた 100万円の束が3つ。それが私が父から もらう愛情だと思った。そして私は自分の 車を売ることに決めた。以前元夫と相談し て買った子小型SUV 乗るたびに元夫の姿を思い出してしまい そうだったから手放すことに何の迷いも なかった。中古業者に見積もりを出しなん とか120万円で引き取ってもらえた。 そのお金に手元に残っていたわずかな貯金 を足して合計で200万円。こうして 500万円が揃った。私はすぐに振り込み に行った。銀行の窓口で手続きを済ませた 時、係かり院に名義は急制で間違いあり ませんと確認された。その瞬が締めつけ られた。画面に移ったのは私の救世。もう 元夫の妻ではない。ただ人生を台無しにし た女の名前だった。振り込みが完了した後 、控えを握りしめて外に出た。冷たい風が ほを撫でた。涙が出るかと思った。でも出 なかった。私にはもう何も残っていなかっ た。翌日の昼過ぎ、元夫から一通の メッセージが届いた。ちなみにお前の浮気 相手。あいつ他の女とも寝てたらしいよ。 その一分を見た瞬間、体の中が一気に冷え た。指先が凍るように冷たくなり、胸の奥 で何かがきしむ音がした。嘘であって ほしいと思った。でもそんな希望すら 浮かばなかった。あの人は他にも女を抱い ていた。私が特別だと思っていたのは全部 私だけの思い込みだった。結局私は何だっ たの?彼にとっても私はただの1人の女に 過ぎなかった。私は特別ではなかった。 元夫に傷つけられたと思い込んでいたのは 私の勝手な被害妄想だったのかもしれない 。弟の不器用さを愛されていないと 決めつけて自分から外に逃げた。そして 自分の手で全てを壊した。あの時ホテルに 入らなければなんて今更言っても意味が なかった。女友達に嘘の証言を頼んだ瞬間 、もう戻れない場所まで来ていたのだ。私 は元夫に返信することができなかった。 画面を開いては閉じ、開いては閉じ、何も 打ち込めないマホを裏返して机に置いた。 返す言葉なんてなかった。何を言ったって 自分を正当化するだけになる。それに そんな権利すらもう私には残されてい なかった。弟が最後に送ってきたその一分 は怒りでも皮肉でもなくただ事実として 静かに私を突き刺す言葉だった。私は本当 に1人になった。両親はお金は貸してくれ たけど心までは寄せてくれなかった。女 友達ももう私のそばにはいなかった。連絡 は来なくなったし私から連絡することも できなかった。 そして彼も私のことを本気で思っていた わけではなかった。何ひつ私を救うものは 残らなかった。惨じめだった。本当に ција目だった。でもそれが私の代償 だった。選んだのは私自身だった。だから これからどうなってもそれを誰かのせいに してはいけない。私は今ようやくそのこと を本当の意味で受け入れ始めていた。離婚 してから少し時間が経った頃だった。私は 新しい仕事を始め、毎日実家と職場を往復 するだけの静かで平坦な日々を送っていた 。誰とも深く関わらず必要最低限の会話 だけをこなすようなそんな生活。あのこと を完全に忘れたわけじゃない。でも見て みぬふりをしていた。私は彼に騙されてい た。元夫が言っていた。彼は私の他にも 浮気相手がいたということ。でももう1つ 知らなかったことがあった。それは彼には 家庭があったということ。それも子供まで いる立派な家庭。彼が既婚者だということ は交際中からどこかで薄う気づいていた ことだった。私にはその事実が現実として 迫ってきた瞬間があった。ある1突然彼の 妻本人が私の前に現れたのだ。私が職場 から家に帰る時待ち伏せされていたのだ。 あなたの浮気相手の妻ですと言われた時、 驚きすぎて声も出なかった。静かな喫茶店 まで連れてかれ、落ち着いた口調で彼女は ただ淡々と話し始めた。あなたと夫のこと を全部知っています。もう逃げも隠れもし ないでください。冷たい目をしているのに どこか傷ついているのがわかる。その姿に 私は自分の心のどこかが崩れていくのを 感じた。私はもう彼を夫としては見てい ません。でもあの人は娘の父親です。彼女 はそう言った。言葉が1つ1つしっかりと 私の心に突き刺さってきた。娘には父親の 裏の顔なんて知らないままでいて欲しいん です。あの子の笑顔を壊したくない。それ だけです。その瞬間私は思わず目をそらし てしまった。私は何を守ってきた?いく人 もの人を傷つけてまで何を得た?子供が いることなんて知らなかった。それを知っ ていたら私は違う選択をしていただろうか 。慰謝料は500万円を請求します。 こちらで手続きします。あなたにも責任は 取っていただきます。既然とした口調だっ た。 なかった。責められなかった。のしけさが 恐ろしかった。そして彼女は最後にこう 言った。あのク男にはこれから一生ただ娘 の父親として家畜のように働いてもらう だけです。私は何も言えなかった。その 言葉は罵当でもなくただ1人の母親の覚悟 だった。を許すわけでもなく切り捨てる わけでもなく彼をただ生かす彼を生殺しに するすごい覚悟だと思った。母として彼女 は現実を真正面から見つめていた。私は ただ弱いだけだった。帰り道自分が 情けなくて涙が出た。慰謝料がさらに 500万円の仕掛かってきたということ だけではない。ただ胸の奥が鈍く重くて 吐き怪気我するような痛みだけが残ってい た。私は自分がどれほど朝墓だったのかを 彼女の静かな強さに突きつけられた。それ から数ヶ月経った頃、私は急制に戻った 通帳をぼんやりと眺めていた。振り込みの 記録だけがそこに現実として残っていた。 元夫へ送った500万円、彼女に支払って いく500万円の分割支払いの振り込み 記載。これらの金額の重みと自分の犯した ことの重さが重なって胸の奥は締めつけ られていた。私は本当に何をしてしまった んだろう。結婚して笑い合って支え合って 生きていくはずだった。それがいつの間に か浮気相手に癒しを求めて嘘を積み重ねて 最後には全てを壊した。今は何ひつのって いない。私は空っぽの存在だった。ふと 元夫とのことを思った。今どうしているの だろうか。きっともう前を向いて歩いて いる。1人になっても自分の足でまっすぐ に。私は嘘をついた。裏切った。その事実 は消えないしもできない。でも元夫は私を 怒鳴りつけることもなく暴露することも なく静かに終わらせてくれた。俺は悪者の ままで構わない。そういった元夫の声が今 も耳に残っている。離婚してからずっと あの時ああすれば戻れたかもしれないと 意味のないことを繰り返し考えていた。だ けど戻れなかった。戻ろうとしなかったの は自分だった。今更何を食いても誰にも 届かない。誰にも許されない。だけどそれ が私のバツなのだと思った。私はようやく 前後が終わったことを全て受け入れようと していた。過去は戻らないけれど自分のし たことだけは忘れてはいけない。それが私 が1人で生きていく上で背負うもの。 そしてたった1つ残された責任なのかも しれないと思えた。

穏やかで幸せな結婚生活。しかし、心のどこかに生まれた些細な寂しさが、私を禁断の恋へと駆り立てました。それは、親友の婚約者との「ちょっとした出来心」。この過ちが、私の人生を根底から破壊する地獄の始まりになるとは、あの時は知る由もありませんでした。

夫からの突然の離婚宣言、両家の親族の前で暴かれる裏切りの証拠、そして元夫と親友から突きつけられた合計1000万円もの慰謝料請求…。逃げ場を失い、嘘を重ねた果てに待っていたのは、誰からも見放された孤独な現実でした。私が自分の手で壊してしまった、穏やかだったはずの幸せ。これは、一つの過ちが招いた、一人の女の壮絶な崩壊の物語です。

この物語の結末を、ぜひ最後まで見届けてください。そして、あなたの感想をコメントで教えていただけると嬉しいです。動画が心に響いたら、チャンネル登録と高評価をよろしくお願いします。
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