【解説】SF映画「メッセージ(Arrival)」は何がすごいのか?どういう話だったのか?魅力が理解できる動画【途中からネタバレ】

今回は2016年公開デニルヌーブ監督の SF映画メッセージを徹底解説していき たいと思います。この映画は公開から10 年近く経ちますが、非常にクオリティの 高いSF映画だと評価されている映画なん ですよね。SFはサイエンスフィクション 、つまり科学的なものに基づいた フィクションですが、このメッセージは それを見事に映像化していて、とっても 深い感情を与えてくれる映画だと思ってい ます。ですが、ま、あまりに深すぎる故え 、え、かなり難しい映画でもあります。 すでに干渉された方でもなんかわけわから んし退屈という感想を持った方もいるかも しれません。ということで、この動画では 映画メッセージをより魅力的に味わえる ようにこの映画に込められている様子を 解説していこうと思います。なのでまず 最初はまだこの映画を見たことがない方 向けにネタバレ要素なしで魅力を紹介した 後ネタバレ込みで解説していきたいと思い ます。ちょっとね、熱意がこもるあまり ものすごく長い動画になってしまいました ので、ま、まずはネタバレなしパートだけ でもいいので見てみてください。映画は 現在のところUNEXTとかAmazon プライムビデオなどで見放題配信されてい ます。Unexであれば概要欄のリンク から初回加入して31日間の無料 トライアル期間の間に無料で見てしまうと いうこともま、できなくはないのでまずは ねこの動画の前半だけ見てから必ず映画 本編を見ましょう。 それでは映画メッセージの魅力を映画の 序盤で分かること以上のネタバレなしで 語っていきたいと思います。まずこの映画 は突然宇宙から謎の飛行線と共に謎の生命 体がやってくるというところから始まり ます。俗に言うファーストコンタクトもと 呼ばれるタイプの映画ですね。そしてこの ファーストコンタクトをこれ以上ないほど リアルに描いています。人類が宇宙人と 退治するというSFは山のようにあります が、この映画はかなり独特で、いわゆる アクションシーンとかそういうのは ほとんどなくて、とても静かな雰囲気で 進みます。そして宇宙人との極めて知的で 深い対話から世界の味方を変えていくと いう物語です。なので、ま、派手な アクションシーンとかね、そういうものを 期待すると少し片すかしを食らうかもしれ ませんが、そのし付けさの中にこの映画の 価値があると言えます。SFとしての骨組 もすごくしっかりしていて、なんと映画の 科学交渉として理論物理学者の スティーブンウルフラムが監修しています 。マセマティカとかウルフラムアルファと かを作ってるあのウルフラムですね。 そんなにがっちりとSFを作り込んでる上 で映像の絵作りと色遣いもめちゃめちゃ いいんですよね。未知のものに対する異質 感というか、あ、そこがね、めちゃめちゃ 美しいです。個人的にはあのめっちゃこう うとしてるような映像と色のセンスが たまらないですよね。撮影監督曰く撮影の 際のコンセプトはダーティS-FI薄汚れ たSFということでさえない火曜日の朝と いう感じで撮影を目指していたそうです。 そしてもう1つ今作を特別なものにして いる点があります。それは地球外生命体の 到来という全世界的な大事件をあくまで 1人の主人公の極めて個人的で主観的な 視点から描いていることですね。ここは他 のSF映画と違っているところと言えるか もしれません。本作の主人公は2人いまし て、1人目は言語学者のルイーズバンクス 。そして2人目が物理学者の イアンドネリーです。言語学と物理学、 そして未知の生物と地球の人類。これらが どう絡まり合うのか。そこがとても知的 好奇心くすぐられる内容となっています。 この映画で特に重要な要素は言語と時間 です。なぜそんなに言語にこだわるのか。 そしてなんで時間が関係してくるのか。 人類はこのような状況でどう立ち回れば いいのか。ここがポイントになります。 ここに関連して知っておいた方がより 楽しめる2つの様素を紹介します。1つが サピアウォーフ仮説という言語学の仮説。 そしてもう1つが変分原理という物理学の 原理です。細かい話は動画の後半に回すと してまずざっくりとお話ししていきます。 サピアオフは語は人間の思考やの仕方に影響を与えるとい説です。私たち人間は言語を使うことができるし、事を複雑に思考することもできます。語行というのは強く結びついているよねというところに着目した仮説です。 に何かについて頭の中で考える思考をする 時に何かしらの言語が嫌でも浮かんでくる 気がします。一切の言語を取り除いた思考 ってよくよく考えると難しいんですよね。 考え事をするにしても、妄想をするにして も、夢を見るにしても必ず言語がどこかに は突きまとってしまいます。この動画を見 ている人9割以上がまあ日本語を習得して いる方だと思うんですが、何かを考えたり 夢を見る時が自然に浮かんでると思うん ですよね。逆にアメリカ生まれ、アメリカ 育ちのアメリカ人なら頭の中の考え事ごと には英語が突きまとうことだろうと思い ます。そして日本語と英語って、ま、結構 違いますよね。順も違えば言い回しも違う し文の中で着目する部分も違うということ は人それぞれの考え方思考の仕方妄想の 仕方の見方はその言語によって影響される つまり言語によって世界の見え方や感じ方 が変わる可能性があるんじゃないかという ことなんです。そんな大げさなと思うかも しれませんがこれを見てみてください。 この信号の色は何色ですか?青信号ですよ ね。これは青りんごですよね。これらは 英語ではグリーンライト、グリーン アップルと呼びます。緑信号を緑リンゴと いうことですよね。青ではないんですよ。 これはそもそも古代の日本語には、あ、色 を示す言葉が少なかったという歴史的な 理由があるそうです。ただもちろん現代を 生きる私たちが青と緑の区別がつけられ ないから緑色のものを青信号と呼んでいる わけではないですよね。でもどう見ても青 ではなくって緑色のものを差しながら青と 呼ぶことに違和感を覚えないというのは 言語が私たちの認識に少なからず影響を 与えている1つの証拠だと言えます。この 青と緑をどう言葉で表現しているのかと いうのは、あ、実は色々な言語で違いが あるそうです。で、英語だとブルーと グリーンは完全に別カテゴリーとして扱わ れているそうで、青信号を見てブルー ライトという言葉が浮かぶことはまずない そうです。私たちの物の味方、世界の味方 は言語に引っ張られているという意味合い がなんとなく納得できるんではない でしょうか。このサビアウォーフ仮説が 映画メッセージを作り上げるベースの概念 にもなっています。もちろん映画 メッセージはSFフィクションなので、 このサピアウォーフ仮説を森に持って すごく飛躍させて、え、使っちゃってる 部分ではあるんですけどね。 そしてもう1つ物理学の文原理です。これ は映画の中では出てこないんですが、この 物語が生まれるベースになっている重要な アイデアでもあります。私たちが物理的な 現象、例えばボールを投げたら放物線を 描いて地面に落ちるとか、あ、そういった 現象を見たり考えたりする時、普通は時間 の経過に沿って物事を考えます。例えば こういうボールをこういう風に投げたら何 秒後にはどこにあって何秒後にはどこに 落ちるのかそういった考え方をしますよね 。そういう考え方を元に1600年ぐらい にニュートンという賢い人はニュートン力 学という物理学を作り上げていったんです 。とても直感的というか、ある意味 当たり前な考え方です。ですが時代は進ん で1800年ぐらいにはこれとは違う考え 方、違う切り口の力学が生まれています。 変文原理という原理が元になって生まれた 解析力学と呼ばれるものです。これは ニュートン力学で表せる物理現象を ちょっと違う視点から考える力学です。 ボールがこの場所から投げられ、この場所 に落ちるとした時にボールはどういった 飛び方をしようとするのかという考え方で 現象を理解しようとします。要するに最初 と最後を決めた上でそうなるためにはどう いう運動をするべきなのかという切り口 です。つまり物理現象を時間の流れに沿っ て追っていってその経路を知るというわけ ではなく最初と最後の状態からそれ が辿どるべき経路を見つけ出すという考え 方です。この変分文原理は現代の物理学の ベースになっている考え方で解析力学だけ ではなく量子力学とか相対性理論とかそう いう最新の物理学には必ず顔を出す考え方 です。時間の流れに沿って前から順番に 出来事を考えていくニュートン力学的な 考え方と最初と最後の出来事からそこに 至る経路を考える変分原理的な考え方。 どちらも同じ現象を計算できるんですが、 そのスタンスは大きく違います。同じもの を別の切り口で考えているということです ね。こんな物理学の話が映画とどうむのか 、言語とどうのか、この視点はこの後の 解説パートを見ていただければと思います 。 ところでこの映画のタイトルなんですが、 砲題日本語タイトルはメッセージとつけ られているんですが、元々のアメリカ版の 現代はアライバルです。アライバルは到着 とか到達という意味合いがあります。なの で、ま、現代の方がよりこの映画が何を 言おうとしているのか伝わるかもしれない ですね。日本語タイトルはこれを訳して 例えば到達というタイトルが本来しっくり くると思います。到達というのは宇宙人が 地球に到達したということを当然さして いるんですが、主人公や人類も新たな領域 に到達することも実は含まれているという 結構ね、深いタイトルなんです。とは言っ ても砲題のメッセージも、ま、正直そんな 悪くないとは思っていて、誰から誰への メッセージなのか、この辺りを考えさせ られるところがポイントです。また実は この映画原作小説がありまして小説家 テッドちゃんが書いたあなたの人生の 物語ストーリー オブユyourlifeフというものが元 になっています。こっちはこっちで タイトルがね、だいぶ毛色が違うというか 、あ、なんか全然雰囲気が違うんですが、 こちらでは主人公による語りかけで構成さ れているため砲題のメッセージという タイトルは、あ、どっちかと言うとこちら の原作小説のタイトルの雰囲気をより 色濃く表したものだと言えるかと思います 。私は過去コンタクトというSF映画とか テネットインターステラというSF映画の 解説動画を公開しています。この メッセージはコンタクト、テネット、 インターステラーが好きなら間違いなく 刺さることかと思います。ということで ネタバレなしで言えるのはこのくらいとし て、ここからはネタバレありって詳しく 解説していきたいと思います。映画本編を 見てないという方は今すぐですね、ユne 、Amazonプライムビデオなどで見て みてください。UNEXTであれば概要欄 のリンクから初回加入して31日間であれ ば無料トライアルになってるのでその間に 無料で見るということもできます。概要欄 にリンクを貼っているので見てみて ください。ということでここからは ネタバレありで映画の内容を詳しく解説し ていきます。 先ほどこの映画のタイトルはアライバル 到達だという話をしていました。では一体 何がどこに到達したのか。もちろん宇宙線 宇宙人が地球に到達したという意味合いが あります。映画のポスタービジュアルで こうデーンと構えてるこいつですよね。 この宇宙線は通称シェルと呼ばれています 。このシェルの姿が初めて明らかになる シーン。これですね。こうめっちゃ質感が あって本当に個人的にはね、1番こう興奮 するところです。裏話なんですがこの映像 右から流れる雲みたいな部分があるんです けども、ここね、実はCGじゃなくて実写 素材なんですよね。CG加工してるのは 本当にこのシェルの部分とあとね、車とか そういうそのテントとかそういうところ だけです。ちなみに日本ではこの宇宙線 シェルの形状がとあるお菓子の形に非常に 似ているということで当時話題になりまし て、なんとドニビルヌーブ監督がそれを 認めるコメントをねYouTubeで出 すっていう、そういうネタがバカ受けした ことがあるんですが、ま、これはあくまで リップサービスでですね、実際には海洋星 の近くにある長細多い形のハウメアという ものがあるんですが、それをモチーフにし で、人類が想像する宇宙線とは全く似てい なくて、どんな材料、どんな技術でできて いるのか全く分からない異質なものという デザインコンセプトで出来上がったもの です。ちなみにね、個人的にはバカ受け よりは鍵の種っぽいなと思ってます。この デザインについてはその捜作家程を紹介し たメイキングボンアート&サイエンス オブセージという本に色々載っています。 これもね、概要欄に貼っておきます。 ちなみに印刷版の書籍は2500分の限定 販売らしいので、気になった方はお早めに どうぞ。電子書籍版もあります。で、 こんな何でできていて、どういう原理で 動いているのかも全く分からない宇宙線が 地球上に12隻突然現れる、アライバル、 到達するというところから話が始まります 。この騒動に巻き込まれることになるのが 過去に米軍と仕事をした経験があるという ことで今回宇宙人とコミュニケーションを 取る任務を任される言語学者のルイーズ バンクス博士です。そしてこの映画は徹底 的にルイーズの主観を通じて描かれます。 ルイーズにとっての世界の捉え方、世界の 見え方が映像化されてるんですね。ルイズ は、あ、宇宙人足が7本あるので ヘプタポッドと劇中では呼ばれますが、 このヘプタポッドの言語を学び習得して いく中で世界の捉え方がだんだんと ヘプタポットよりになっていきます。この 後触れていきますが、ヘプタポッドは時間 の捉え方が人間のそれとは大きく違います 。人間にとって時間は過去、現在未来に 一直線に流れるもの。つまり先形リニアな 捉え方をしますが、ヘプタポットにとって は時間は流れるものではなく、出来事の 切り口でしかありません。要するに時間は 非戦形ノンリニアなものだったということ です。雪中時折りルイーズの娘である ハンナとのエピソードが海層シーンのよう に挟まります。時間を先形リニアにしか 捉えていない私たちはこれがあ過去を 思い出している海装シーンフラッシュ バックなのかなと思いがちなんですが後に なってその前提が覆返されます。どうやら これは過去を思い出しているのではなく、 未来を思い出しているものだったという ことが分かってくるわけですね。 フラッシュバックではなく、むしろ フラッシュフォワードだったというのが ドで返し的な要素になっています。 ルイーズはヘプタポット後の習得によって 人類とは全く違った時間の捉え方を身に つけ、その結果ある境地にアライバル到達 したわけです。ルイズにとっては過去、 現在、未来というリニアな時間はもはや 存在せず、全ての出来事が等しい存在で ただ受け入れてただ噛しめるものになり ました。そこには究極のテーマ、自由意思 は存在するのか。もし自由意思がなかった としたらどうやってそのことを受け入れる のかという1つの回答と言えるものがあり ます。そういった意味でこの映画が表現し ていることを一言で言うなら決定論と自由 意思の両立ということになるかと思います 。原作小説のあなたの人生の物語ではその 境地に到達して人生の全てが見えている ルイーズによる娘への語りかけとして進む 構成になっています。 では、なんでルイーズはこんな境地に至っ てしまったんでしょうか?ここからはその アイデアを詳しく見ていくとします。 まずは言語学という視点からですね。主人 公ルイーズは言語学者ですし、 ヘプタポットの言語を習得していく過程が 物語の核になっています。制作人の こだわりは筋入りで、例えば撮影で使う カチンコメイキング映像から分かるんです が、このデザインも言語額の公文解析を モチーフにしたものなんですよね。映画 政策にあたっては本物の言語学者の協力も 入っていて、脚本の中にはその意見も反映 されているということです。私たって日々 当たり前のように言語を使いながら案外 言語について深く考えることってないです よね。私の個人的な話をすると、大学生の 時に一般共容科目として英語言語学入門 っていうものを選択したんですけど、それ まで英語は英語でしょみたいな感覚だった ものが地域によってアクセントが違って いるということだったり、時代によって 発音が全然違っていたとか、そういう深い 世界があるんだっていう返んだっていうの が記憶に残ってますね。今だと例えば ネイムという単語とかホームっていう単語 こういう風に発音すると思うんですが 600年ぐらい昔はそれぞれめとかいう 発音だったんですよね。その後数百年 ぐらいの期間で一気に綴りと発音がずれて いく大部員という現象が起こったっていう そういうことを初めて知ったりですね。 結構興味深かったんです。ちょっと話が それましたが、宇宙人が急に地球に来た時 にどうやって意思疎通をするのか。それは もし宇宙人が本当にやってきたことを想定 するとまず第1のそして最大の課題となる はずですよね。他のね、宇宙人がやって くる経緯のSFだと、ま、いろんな理由を つけてすに人間の言葉がなんか分かってる 状態になっていてくれたり、テレパシー的 な能力で意思疎通させてくれたり、 そもそも言語を一切使わなかったり、ま、 そういう意思疎通の問題は、あ、誤まかさ れるというか、省略される部分も多いわけ ですが、このメッセージではそこに しっかり向き合うアプローチが描かれます 。 映画ではほぼ省略されてるんですが、原作 ではヘプタポットの話言葉をヘプタポット A、ヘプタポットの書き言葉を ヘプタポットBと呼んでいます。そして そこでだんだん分かるのがヘプタポットA とヘプタポットBという2つの言葉、 話言葉と書き言葉が全く繋がりがない。 もっと言うと全く違う言語のようだという ことなんですね。これは人間の言語には 当てはまらないんですよね。人間の言語で は話言葉と書き言葉は基本的に1つの言語 の2つの側面です。私は人間ですという音 、話言葉を文字に起こすとこういう文字に なりますが、これって同じ言語の表現方法 の違いに過ぎないですよね。この文字を 読み上げるとそのまま私は人間ですという 音に戻ります。英語だってそうです。 アイアムヒューマンという音はこの文字に 対応していて文法も一緒です。話言葉と 書き言葉は音と文字の対応であって根本的 に同じ言語だと言えます。まあ、ただ ちょっと日本って実は特殊で古代の日本に おいては書き言葉は看文つまり中国語で 書いて話言葉は大和言葉つまり日本語で 話していた時代もあったわけなんですが、 ま、これだったとしても君というものを 使って君読していて実際には日本語として 理解していましたので根本的には書き言葉 と話し言葉は同一同じ枠組だったわけです 。一方、ヘプタポットAとヘプタポットB は根本から違う文法であることがルイーズ の調査から分かってきます。音と文字で 全くの別言語を使ってるんですね。これは 要するにヘプタポットの話言葉を文字に 起こすことはできないし、ヘプタポットの 書き言葉を発音することもできないという ことです。これって人間目線だとかなり 異様ですよね。なんでこんな使い分をし てるんだというところからヘプタポットの 時間の認識の仕方が人間とは根本的に 異なっているということが分かってくると いうことなんですね。話言葉の ペプタポットAで分かっていることはどう やらご順というものが全くなく完全に自由 だということで単語をどんな順番に並べて も特に問題がないという特徴があります。 これはわけわからん特徴ですよね。そして 書き言葉の方のヘプタポットBも人間の 文字とは全然性質が違っていて文章が たった1文字で表されるんですよね。輪家 みたいな1文字でどこから読み始めるのか も分からないしそもそも書き順もない。 人間が書く文字はアルファベットとか ひらがカタカナのような文字と音が対応し てるようなものを標文字と言います。一方 漢字のように文字そのものに意味がある ような文字を表異文字と言います。一方彼 らの描く文字はさっき話した通りそもそも 発音が存在しないので表音文字ではないし 表異文字ともちょっと違う独特な表現です 。劇中では表語文字ロゴグラムと呼ばれ たり、原作小説では表義文字セマグラムと 呼ばれます。 そこには誰がどうしたのような守護術語と いうような関係性がありません。これも わけわからん言語なんですよね。でもこの 2つの言語から分かることがあります。彼 らの言葉には因果関係を表すものがないん です。 話言葉には誤順がない。書き言葉には守護 術語という関係がない。彼らの言葉の中に 因果関係を表す手段がないということは彼 らにとっては因果関係は必要ない。もっと 言えば彼らの中には因果関係など存在し ないということですよね。私たちは出来事 を理解するためには必ず因果関係が必要 です。原因と結果。これをしたからこう なった。因果関係には必ず時間の流れが 伴います。原因は先に起こり、その結果が 後に続くという時間的な順序が必須だから です。原因は結果より過去にあるし、結果 は原因より未来にあるはずです。この考え 方は時間を過去から未来に一直線で流れる ものとして捉えているということを表して います。つまり私たちは時間を先形リニア に捉えている。でも彼らにとって因果関係 が必要ないということは時間というものを 一直線のものとして認識していない。 つまり時間を非にノンリニアに捉えている ということになります。それが文字の性質 にも現れています。私たちは複数の文字を 並べていって意味のある文を作ります。 横書きかもしれないし、縦書きかもしれ ませんが、必ず並べるという作業が必要 です。つまりこれは時間の流れです。人間 の言語では時間の流れから逃れられません 。一方、ヘプタポットBは文章全体を 一文字で表します。そして書き始めと書き 終わりの区別がありません。読む順番も ありません。つまり文字を並べるという 作業から解放されていて完成像を同時に 把握して1度に文章を完成させています。 ということはどういうことか? ヘプタポットBを習得するためには思考 回路そのものが変化しないといけません。 時間の流れをリニアに捉えて因果関係を 意識しているような人間的な思考回路では ヘプタポットBは書けないということです 。 ここで冒頭でも紹介したサピアウォーフ 仮説が絡んできます。サピアウォーフ仮説 は1930年あたりに生まれただいぶ 古い仮説で研究者がホピという部族が話す ホピ語という言語を研究する中でそこには 英語にあるような自性とか時間の表現の 仕方が全然違うということに気づきでは ホピの時間の思考概念そのものが違うので はないかもっと言えばその言語に存在し ない概念は思行こすらできないのではない かという仮説から始まっています。この 仮説は強いサピアウォーフ仮説と言われて いるものなんですが、ま、実は現代になっ て様々な実験が進められたり価格技術の 発展で、ま、今はね、脳の血流の量とかを リアルタイムで見ることもできますから、 そういった事実からもどうやら言語にない 概念が理解できないといったことはないっ ていうのは、ま、分かってきたので、今と なってはこの強い仮説というのはほぼ否定 されています。ただその代わり言語が思考 内容を完全に決定づけるまではいかない ものの言語の違いが思考の仕方や認知の 仕組みに少なからず影響を与えていると いう弱いサピアウォーフ仮説は今も一定の 指示があります。冒頭に紹介していた色の カテゴリーの教界に言語が影響を与えて いるような例は弱い仮説の一例と言えます 。ですがこの映画メッセージではこの仮説 を大胆に拡張して言語が思考や時間の認識 そのものを変えるという、ま、ちょっと SF的な設定に消化させています。これは まあ言うなれば超強い仮説と言える でしょう。この超強いサピアウォーフ仮説 においてはヘプタポットが扱う言語を習得 することで思考回路そのものそして世界の 捉え方そのものがヘプタポットよりになっ ていくと言えます。その結果、 ヘプタポット語を習得したルイーズの思考 回路は人間的な因果関係を意識したような リニアな時間認識から因果関係などない ノンリニアな時間認識へと変化し、過去、 現在、未来を一体として捉える能力を獲得 したということになります。 つまりルイーズにとっては過去とか未来と いう区別は意味がないことであり、未来に 原因があって過去に結果があるような因果 関係も特に問題ではないということなん ですね。劇中自系列的には未来で得た情報 を元に過去で行動をしているように見える ことがあります。映画では海装シーンが とても重要なキーになっているシーンと いうのが何個か出てくるんですけど、1つ は非ゼロアゲーム、ノンゼロサムゲームと いう単語を思い出すシーン。もう1つは シャン上昇の電話番号と電話内容を 思い出すシーンです。自系列に整理すると 、ま、こういう図になります。ノン ゼロサムゲームの下りは過去にイアンから ノンゼロサムゲームという単語を聞いた ことを思い出し、未来でハン那にそれを 伝えるという過去に原因があって未来に 結果があるといういわゆる普通の因果関係 を表しているシーンです。もう1つは未来 でシン上昇に戦争行動を止めさせるための 電話をする下りです。こっちは18ヶ月後 の未来の式典イベント中にシャン上昇を じき々に電話番号と内容を聞いたことを 過去のルイーズが思い出しその通りに電話 するということをしています。つまり未来 に原因があって過去に結果があるような 逆転した因果関係を表しているシーンです 。これね、この映画見ながら何というか 因果関係がおかしいじゃないかと感じ させるシーンではあるんですが、それは 私たちが時間は過去から未来の1方向に 流れて因果関係が成立しているという常識 に凝り固まっているからおかしいと思う わけですよね。時間は流れるものではない と考えれば別に先に結果が起こってで原因 が後にあっても特におかしくないという ことになります。例えばですが めちゃめちゃ弱かった主人公が練習に練習 を重ねて強いやつを倒すっていう、ま、 感動スポーツ映画があったとします。練習 を頑張ったから強いやつを倒せたという 原因と結果があるわけですが、この映画を 逆再生してみたとします。そうすると いきなり強いやつを倒してるわけですよね 。そしてその原因を作りに行くかのように 練習をするというように見えるはずです。 じゃあこの映画はストーリーが破綻した めちゃめちゃなクソ映画なんでしょうか? そうではないですよね。1つの作品につい て見る方向を変えてるだけです。ルイーズ にとっては時間はもはや1方向に流れる ものではないわけで、未来を思い出して 過去でそれを利用するということもただ 切り口を変えただけで特におかしいことで はないということですよね。よく時間が 絡むようなSF作品だとタイム パラドックスとか因果のループだとかが キーになったりしますが、この作品では そもそも時間に対する認識を変えてしまえ ばパラドックスなどは存在しないという 考えでこれを解決してるということですよ ね。ここがメッセージが唯一無理の傑作で ある理由の1つだと言っていいでしょう。 さて、ここまででいわゆる言語学的な観点 からこの映画を解説してきました。ただ実 はこの物語は物理学的な観点でもすごく 重要な見方をすることができます。では ここからは映画の中に隠されているすごく 重要な物理学的な視点についてお話して いきましょう。もう1人の主人公である イアンドネリーは理論物理学者です。 ルイーズが言語学的な観点で宇宙人と コミュニケーションを試みる傍原イアンは 物理学的な観点で宇宙人のことをしろうと しているわけですよね。先ほど ヘプタポットたちはどうやら時間を1方向 に捉えていないということをお話ししまし たがなぜそんな思考回路しているのかと いうところには物理学的に重要な背景が あります。劇中では慰安側の研究はだいぶ とカットされていますが、小説版ではこの 辺りの内容が詳しく記載されています。 実際原作小説の作者テッドチャンはこの 物語のひらめきの元は物理学だと言ってい ますので、そういう意味ではこちらの方が アイデアの中心点でもあり、え、重要な ところではあるんですよね。中にて研究 チームの物理学者たちは当初彼らの物理学 的なものの見方を知るためにいわゆる単純 な物理学を使って意思疎通しようとしてい ました。言ってしまえば中学生高校生 レベルの物理です。しかしヘプタポット たちはどうやらそんな単純な物理学が理解 できない様子でした。意外と彼らは頭が 悪いのかとすら思い始めていたんですね。 ですが、光の屈折の原理を使ってついに ヘプタポットと意思疎通することができた んですよね。光というものは私たちが普段 から触れ合っている日常的なものです。光 は基本的に空間をまっすぐ進みますが、別 の物質に入る時進む方向を変えるという 現象が知られています。これを屈折と言い ます。複雑な物理学は知らなかったとして も、光の屈折現象自体はいろんなところで 目にしたことがあるはずです。物質には 屈折率というものがあって、その屈折率と 光が曲がる角度にはどうやらここに示す ような関係があるようだという複折の法則 が発見され知られるようになりました。 ただ曲がることは分かったんだけども、 じゃあなんでそもそも曲がるのという疑問 が湧くわけですけど、物理学者の ホイヘンスは光が波であるというところに 注目して光の速度から光の屈折がなぜ 起こるのかを解明しました。ホイヘンスの 原理と呼ばれます。ホイヘンスは光は波の 集合体で波から波が生まれるように伝わっ ていくという考え方をしました。そして その波は物質ごとに例えば空気中と水中で は伝わる速度が違うということが分かって います。光の波は空気中より水中の方が 遅く進むんですよね。そう考えると空気中 で斜め方向からやってきた光は水に ぶつかるとそこから次の波が生まれていく わけですが光の遅さのせいで全体で見ると 角度が変わっているように見えるという 理屈です。この考え方で屈折という現象が どうやって起きるのかというのをほぼ完全 に説明できます。つまり光の波が伝わる 速度が物質によって違うから光が物質に 差しかかった時に結果的に光が曲がって いったということですよね。で、この理論 ってすごく因果関係を意識した因果論的な ものの見方をしている理論なんですよね。 瞬間瞬間ごとに原因と結果を考えていく ものの見方です。空気中を進む光の波たち は次の瞬間に別の物質である水にぶつかっ て、そして新しい波が生まれる。その波が 広がって結果的に光が曲がっているという 流れです。つまり過去に起きたことが原因 でその結果である未来が生まれていく因果 関係を見ていくものの味方なんです。 ちょっと光を擬人化して考えてみましょう 。空気中を進んでいる光はまだこの先何が 起こるかを知りません。進んでいって 初めて水にぶつかります。ぶつかって 初めてあ、自分は別の物質にぶつかったん だということを知るわけですね。そして 新しい波を作ります。水中はどうやら進み にくい。あまり早くは進めません。進み にくいながらもその波に沿って光は進んで いきふとある時過去を振り返るとあ自分は 曲がった経路を辿どってきたんだなと 初めて知ることができます。そういうこと ですよね。一方でこの光の屈折現象を別の 視点から説明する理論もあります。それが フェルマーの原理というものです。 フェルマーの原理というのは光はある地点 AからBに進む時最短時間で到達する経路 を必ず選ぶというものです。さっきの屈折 の図を見てみましょう。空気中にある点A から出発した光が水で屈折して水中にある 点Bに到着したという図ですよね。この時 点Aから点Bまでの進み方でもし他の経路 を取ったとしたらどうなるのか考えてみ ましょう。例えばこのように直線的に進む 経路を考えてみます。でもこの経路だと 水中を進む距離が増えて水中だと光は遅い ので結局元の経路より時間が長くかかって しまいます。じゃあこのような経路を考え てみます。これだと水中を進む距離は最短 ですが、その分空気中を進む距離が長く なるので、結局元の経路より時間が長く かかってしまいます。このように他の経路 を考えると元の経路が1番最短時間でBに たどり着ける経路だということがわかり ます。これがフェルマーの原理です。この フェルマーの原理でも光の屈折の現象を 正しく説明できます。フェルマーの原理 から言えることは光は常に最短の近道を 通る性質を持っているということです。 言い方を変えると光は目的地に対して常に 近道を選ぼうとするということです。でも ここでちょっと考えてみてください。目的 地を知らない状態で近道を選ぶことって できないですよね。だって近いかどうかは 目的地が決まっていてで出発点と目的地 までの間にあるものの情報が全部分かって いて初めて分かることじゃないですか? 例えば自分の家から駅まで最短経路で歩い てくださいと言われば土地感があるし地図 が頭の中に入っているので歩けますよね。 でも全く知らない土地で地図もない状況で ここから駅まで最短経路で歩いてください と言われてもそれはもう無理じゃないです か?でも光は常に最短経路を通ります。こ れって擬人化して考えると光はこの先何が あり、何が起こるかどこに到着するのかを 知った上で近道になるような経路を選んで いるという言い方もできます。だって さっきの屈折の図だとAからBに向かう時 にこうやって折れ曲がるルートが最短経路 だったわけですけど、もしここに水が なかったとしたら当然ABを直線で結ぶ このルートが最短経路になります。という ことは光はAを出発した瞬間にこの先に水 があることを知っているかのように経路を 選んでいるように見えるんですね。光を 擬人化して考える限り光は未来を知って いるかのようです。これはなぜ光はこの 角度で曲がるんですか?という問に対して それが最も早く目的地につく方法だからだ というある種の目的が物理法則を組み立て ていると捉えることができます。さっきの ホイヘンスの原理では過去からの積み重ね から次に何が起こるかというインガロン的 な考え方で光の振る舞いを説明したのに 対してこちらのフェルマーの原理は光は なぜこの経路を選ぼうとするのか目的地に 最短でたどり着くにはどういう経路を選ぶ べきなのかという目的な考え方で光の 振る舞いを説明しています。これはどちら も光の屈折という物理現象に対する正しい 説明です。でも切り口が違う。1つの真実 を異なる表現方法で説明しているという ことです。どのようにしてこの経路になる のかというインガ論的な考え方で説明 しようとしたホイヘンスの原理となぜこの 経路を選ぶのかという目的な考え方で説明 しようとしたフェルマーの原理です。とし てメッセージ作中の物理学チームの研究 結果ではどうやらヘプタポットは ホイヘンスの原理のような因果論的な考え 方が理解できずフェルマーの原理のような 目的的な物理学であれば理解して意思疎通 することができました。彼らは物理現象が インガ論的に見えておらずそのような理解 もしていないということです。これは彼ら の言語の中に因果関係を表現する手段が ないことにもつがりますよね。因果関係を 意識していないから因果関係を表現できる ような言語を作る必要がないんです。この フェルマーの原理を光に限らず物理学全体 に広げたものが冒頭に紹介した変分原理と 呼ばれるものです。 原理は物理的な現象は最初と最後の状態 からそれが辿どるべき最も適切な経路を 通るように起こるという考え方です。ここ で言う経路というのは作用英語では アクションと呼ばれていてSという文字を 使ってこういう数式で表されます。この中 にあるLという文字はラグランジュという 物理学者が考えたのでラグランジアンと 呼ばれていてものすごく噛み砕いて言えば 物理現象の性質を数式化したようなもの です。tが時間でLがtによる積分の記号 で囲まれているのでここで言う作用Sは 始まりから終わりまでの時間の間の物理 現象の性質の合計だと言えます。 変分原理というのは物理現象はこの作用S が必ず最小になるように起こるという原理 です。少し哲学的な言い方をするとこの 世界は作用Sが最小になるように物理現象 を起こそうとしているということもできる かもしれません。もっと極端な言い方を すると、この世界は作用Sを最小にする 目的を持っていると言ってもいいかもしれ ません。先ほどの光の屈折の例だとSは その経路を進むのにかかる時間です。変分 原理によるとこの世界は作用Sつまりその 経路を進むのにかかる時間を最小にすると いう目的を持っている。そのためにはどう いう道乗りで光は進めばいいのか、それを 達成できる経路はこのようになるという 説明ができます。例えばニュートン力額で も変分原理で考えることができます。 ニュートン力額はf=maという方程式で 表されていて、この数式が言いたいことは 物体を押せば物体は動くという物理現象の 説明です。つまりこれはすごくインガロン 的な見方なんですよね。物体を押すという 原因があるから物体が動くという結果が 生まれるんだという意味になるからですね 。例えばこんな感じにボールを投げるよう な運動を考えます。この時ボールを擬人化 して考えてみましょう。ボールが投げ られる瞬間ボールは自分自身がどの速度で 投げられたのかを知ります。ボールは今 この瞬間のことだけが分かっている状態 です。そしてほんの少し先の未来例えば 0.1秒後にはどうなっているのかという ことを考えます。要するに今この瞬間を 原因にしてほんの少し先の未来を結果と 考えているんですね。そして0.1秒経つ と確かに自分はその予想をした結果通りの 場所にいます。として今この瞬間を原因に してまたほんの少し先の未来の結果を考え ます。そしてまた0.1秒経ってその予想 した結果通りの場所にいます。これを 繰り返して今この瞬間からほんの少し先の 未来を考えるという繰り返しをしていって ボールは自分自身の経路を知っていくと いうイメージです。で、最終的に地面に ぶつかって初めて自分はこういう経路を 辿ったんだなということを知ります。一方 、変分原理的な考え方だとこうなります。 ボールはここから投げられ、ここに落ちる ということが決まっているとして、自分は どういう経路で飛ぶべきなんだろうかと いうものを考えます。最初と最後が決まっ ているとして、その間の経路というのは 可能性としてはいくらでもあります。最初 と最後がこれだったら別にいいわけです からね。全く自由に飛んでいいんだよって 言われたらどういう経路もありますよね。 でもこの世界は変分原理というルールに 沿って作用を最小にするようにしなければ ならないという目的があります。 ニュートン方程式の変分原理版は実は次の ような方程式になります。これに従うよう に飛ぶことがボールの目的だと言えるん ですね。この目的を叶えるための唯一の 経路が放物線だったという話です。 実際結局これを解くとニュートン方程式に なるので結果としてはニュートン方程式で 考えたものと同じになります。つまり作用 を最小にするという目的に沿って飛ぶべき 経路を考えた結果、事実としては同じ事実 にたどり着いたわけですね。この変分原理 は実は現代物理学の根換をなす考え方で 物理学のほとんどの方程式、ニュトン力学 、電磁学、相対性理論、量子力学の方程式 などを変分原理から導き出すことができ ます。ちょっと派手な言い方をすると、 この世界、この宇宙は変分原理に基づいて 作られていると言ってもいいかもしれませ ん。変分原理は根感にある最も根本的な 概念なんですよね。 ではここでニュートン方程式とその変分 原理版の方程式を見比べてみましょう。 ニュートン方程式に沿った物理は高校性 レベル。シンプルなものだったら中学性 レベルで理解ができます。シンプルな シチュエーションだったら多算と掛け算 だけで計算ができますからね。一方変分 原理の方程式は微分方程式という大学 レベルの数学を理解する必要があります。 小説版にはこの辺りの描写があるんですが 、ヘプタポットはなんと上のニュートン 方程式を理解できませんでした。その一方 で下の変分原理の方程式は彼らにとっては 簡単なようでした。つまり彼らにとっては 足し算掛け算は理解できないほど難しい ものである一方、微分方程式は簡単で シンプルで直感的なものなんです。 言い換えるとヘプタポットたちにとっては 目的論的な変原理が基礎であり常識でした 。ということは彼らが私たち人間よりも はるかに本質的で統一的な視点で宇宙を 理解していることも示唆しています。彼ら は物事を1つ1つの原因と結果の連鎖とし て追いかけるのではなく、まるで時空の上 から俯瞰しているように宇宙の法則を把握 しているとそういうことなんですよね。 映画版ではこの辺りの掘り下げはほとんど カットされてますが、この内容の名残りと してイアンが他国の物理学者との会議で彼 らは簡単な台数ができないのに高度な数学 を理解しているという話をしているシーン がありますね。変文原理という言葉は出て こないものの、彼らの物理的な世界の捉え 方は人間のそれとはちょっと違うという ことを端的に示しているシーンです。の 始まりと終わりを知った上で最適な経路を 導き出すという変分原理的な目線は彼らの 言葉の構造にも見事に一致します。 思い出してください。ヘプタポットの 書き言葉は私たちが単語を1つ1つ並べて いくのとは違い複雑な円形の文字を全体を 1度に書き上げます。これはつまり彼らが 文章を書き始める前に伝えたいことの全体 像、つまり文の始まりから終わりまでを 完全に把握しているということです。彼ら は私たちのように逐次的な認識をしておら ず同時的なんです。分原理とヘプタポット の関係性なんとなく分かってもらえた でしょうか?ということでここまでで物理 学的な視点でなぜヘプタポットは未来を 見ることができるのかという点について 解説してきました。この変分原理という 考え方は、ま、実際哲学的な考え方の余地 があります。過去にはね、なんか物理学者 の間でこういう論争とか実際してたみたい ですからね。ただ今回はSF解説なので、 ま、少々SFよりになるようにちょっと 擬人化して考えたりとかしましたが、実際 に光とかボールに意思とか目的があ るっていうわけではないです。ただこの 世界そのものが作用を最小にしようとして いるということを前提に考えると物理現象 が全部説明できるようになるというのも これは事実です。ちなみにこの変分文原理 の考え方はファインマンという物理学者に よって量子力学の世界の理解に応用される ようになりました。ファインマン経路積分 というものです。量子力学についてここで 説明し出すともう動画が終わらなくなって しまうので量子力学って何ということに ついて解説した動画については別動画にし ているので是非見てみてください。で、え 、その動画を見た前提にはなってしまうん ですが、量子力学において物質の状態と いうのは複数の可能性が重なり合うことが できると考えます。そして実際に観測さ れる状態はそのうちの1つです。パイン マンは変分文原理の考え方を量子力学の 世界でさらに拡張して作用を最小にする 経路ただ1つが選ばれてるんではなく 取りる全ての経路が同時に重なっていると いうアイデアに到達しました。これは作用 Sという経路をあらゆる可能性において 重ね合わせるという意味合いの数式になり ますが、作用が最小になる経路が1番 重ね合わせ確率が高いので、最終的に観測 される確率が最も高い経路は作用が最小に なる経路に結局なるという意味合いにも なります。なので量子力学的な可能性の 重なり合いというものを考えても変分原理 という考え方はそのまま成立するという ことになりますね。実はさっきの フェルマーの原理で光は未来を知っている かのようだみたいな言い方をしましたが、 もうちょっと深く言うと光は全ての経路を 通る可能性が重なっていて、観測確率が 1番高い経路が最短時間の経路だったと いうことが量子力学まで含めた最新の考え 方だと言えます。 さて、映画の内容に戻りますが、ルイーズ はヘプタポット5を習得したおかげで変分 原理的な世界の味方ができるようになり ました。つまり最初と最後は決まっており その間の作用を最小にする経路が見えて いるということです。これは人間的な感覚 で言うと未来を完全に見通しているという ことですよね。ルイーズのこの感覚は小説 ではこのように語られています。一部を 引用します。ペプタポットBを習得して後 の新たな記憶はそれぞれが数年単位の期間 に相当する巨大なブロック軍がバラバラと 所定の場所に落ちてきたようなもので順序 だって到来したとか連続的に到着したとか ではないもののそれらはすぐに50年に 及ぶ期間の記憶を形成した。これは私が ヘプタポットBをそれで物を考えられる までに就することを含む期間であり ヘプタポットとの面談の最中に始まって私 の死を持って終わる。つまりルイーズに とっての変分原理の視点はヘプタポットと の面談の瞬間、終点は自分の死の瞬間と いうことですよね。この間の作用の最小 経路としての未来がすに見えているという ことです。その未来は最小経路なのでそれ を変えることもできないわけです。つまり これはいわゆる決定論的な世界観ですよね 。ルイーズはこれから起こることを全て 知った上でその通りに行動するしか なくなったわけです。これね、個人的には めっちゃ嫌ですけどね。その通りになる しかない未来が見えていて、その通りの 行動しか取れないということは、ある意味 で自由意思を失うということですからね。 ルイーズはこれからイアンと結婚し、 ハンナという娘を生み、そしてイアンと 離婚して娘は病気で死ぬという未来が全て 見えていても、なおその行動を取るのかと いう究極の問に立たされています。 ルイーズの結論はどの瞬間も大切にすると いう答えでした。決定論と自由意思を両立 するという境地に到達アライバルしたん ですね。 さて、これまで言語学と物理学という2つ の観点から映画メッセージで描かれた メインテーマ、決定論と自由意思の両立と いう内容を解説してきました。ここが 分かってくると映画の中で何が起こってい て、なんでそうなったのかというところが 見えてきますし、時間という未だに謎が 多い概念について考えさせられるような そんな気分になりますよね。この映画は 極めてルイーズ個人的な部分を描いてい ますが、サブテーマとして人類全体の意思 疎通というドラマも描かれます。劇中では ある種のターニングポイントとなるシーン がありました。そのシーンを境に物語が ぐっと動き出すところです。ルイーズの娘 ハンナがある単語が分からなくって ルイーズに聞きに来るというところですよ ね。その後イアンがノンゼロサムゲームと 言っていたのを思い出すというシーンです 。これは数学の1分野ゲーム理論という 分野専門用語です。ゲーム理論は一言で 言うと意思決定戦略を数学的に表して分析 しようという学問です。ここで言うゲーム というのは各々の行動が互いの結果に影響 を与えるようなそういう戦略的な状況の ことです。なので将棋とかチェスとかも ゲームですし、それに限らずこの世の色々 な状況、例えば企業間の価格競争とか世界 経済、国家官の対立関係とかそういうもの もゲーム的な状況だと考えています。ここ では単純なゲームとしてじゃんけをゲーム 理論的に考えてみましょう。AさんとB さんがじゃんけする時、次のような表が かけます。表の中の数字はAさんの点数と Bさんの点数の組です。勝ちなら+1点、 負けなら-1点、愛子なら0点です。この 点数のことを離得と言います。どれぐらい 得をするかということですよね。例えばA さんがグを出してBさんがチ期を出したら Aさんは+1点、Bさんは-1点の離得が あるってことですよね。じゃんけンって ゲームの構造的にどちらかが勝つ時必ず どちらかが負けますよね。こういう構造の ゲームってそれぞれの離得を足すと必ず ゼロになるという性質があります。この ようなゲームをゼロサムゲームと言います 。自分の得は相手の損。自分の損は相手の 得になっているということです。やるか やられるか。勝ち負けが存在するゲームは 基本的にゼロサムゲームだと言えます。で はこんなゲームを考えてみましょう。 鹿狩りゲームというものです。これは2人 のハンターが鹿とうさギのどっちを借りに 行くのかというのを意思決定するゲーム です。鹿を枯れれば離得は2点。うさギを 枯れれば離得は1点です。ただし大きな 獲物の鹿を狩るためには2人同時に協力を して狩をしないと捕まえることができませ ん。Aさんがし鹿がりに行ったのにBさん がうさギ狩りに行くとするとAさんは仮に 失敗して何も手に入れることができません 。でも2人で仕がりに行けば2人とも2点 をゲットできます。そういうような状況の ゲームを考えましょう。こういうゲームは 離得を足しても0になりません。戦略に よってはどちらも特をするということが ありえます。こういうゲームを ノンゼロサムゲームと言います。映画 メッセージでは特に映画後半にかけて ゲーム理論的な構造を意識したストーリー になっています。敵中ではルイーズと イアン以外は軍人だということもあって、 常にヘプタポットに対してはやるかやら れるかというゼロサムゲーム的な考えをし ています。ゼロサムゲームにおいては相手 の得は常に自分の損だということを意味し ています。なので相手の得になることは できるだけしないことが最適な戦略になっ てしまっています。終盤以降言葉の意味を 取り違えて緊張状態になった中国のシャン 上昇もこの状況をゼロサムゲームだと理解 し、ヘプタポットが特をするということは 人類や中国は損をするということになるの でそれを防ぐために強姿勢を取ることに なります。でもルイーズとイアンラだけは 人類とヘプタポットの関係がゼロサムで あることを信じていませんでした。でも そこに水を刺すように過激な意見に感化さ れた一部の軍人がヘプタポットに対して 攻撃を仕掛けてしまいます。もし人類と ヘプタポットのゲームがゼロサムだった 場合、この攻撃で人類は特をし、 ヘプタポットは損をしたわけなので、次は ヘプタポットが報復するということになり ます。でもどうやらそうはしていません。 ヘプタポットは何もしなかったんです。 ここでルイーズとイアンはこのゲームは ノンゼロサムゲームだと気づきます。 さっきのしがりゲームとよく似ていますよ ね。戦略によってはどちらも特が可能です 。問題なのはこのゲームは3000年 かかるゲームだということです。今人類に 変分原理的な言語という武器を与え、 そして3000年後にその恩を返して もらう。ヘプタポットは今だけではなく 3000年後までの未来の時間全部を含め てゲームを考えていたんですね。劇中で ルイーズはシャン上昇に対して中国語の 電話をかけます。その時の台本もアート& サイエンスブメッセージに記載されてい ます。そこから引用をするとルイーズが 電話で話した内容は戦争は英雄など生ま ない。のは個人と未亡人だけだという内容 になります。戦争は国家対国家の目線で 見れば勝った国が特をし、負けた国が損を するというゼロサムゲームかもしれません が、それに借り出される兵士の目線で見れ ば誰も特をしないゲームノンゼロサムで ありマイナスサムゲームです。これは つまりあなたはゲームのルールを吐き違え ていますよという意味になります。 ルイーズは時間の流れから解き放たれ、 因果関係からも解き放たれているので、 もはやゲームのプレイヤーの立場では なくなり、その上を俯俯瞰する位置になり ました。明らかにゲームの構造を超えて いる人物からの電話で冷静になったシャン は武装を解除して人類とヘプタポットの ノンゼロサムゲームをクリアしたという ことになります。 そういったところからこの映画は意思疎通 がもう1つのテーマだと言えるでしょう。 これは原作小説にはなかった要素です。 例えばエイリアン2体の名前なんですが、 映画ではアボットとコステローという名前 になっていましたですが、原作小説では実 はフラッパーとラズベリーという名前に なっていました。多分ですね、これは彼ら の声というか音のイメージからつけられた 名前だろうと思います。原作では彼らの声 はめき 英語ではフラッターと表現されていて、 おそらくそのイメージからフラッパーと いう風に名前をつけたんだろうと。そして ラズベリーというのは英語のスラングで ブーという音を意味していますので、 ラズベリーと名付けたんだろうなと思い ます。一方映画版ではアボットとコステロ という名前になっていますが、アボットと コステロは1940年代頃に活躍した アメリカのコメディアンの名前です。彼ら の有名な持ちネタにフーズonastと いうネタがあります。これは意思疎通の 失敗をネタにしたもので、野球チームの 選手に変なニックネームをつけたせいで 2人の会話が全く噛み合わないという ところが面白いネタなんですよね。まさに 今回のテーマにぴったりということで多分 この名前が選ばれたんだろうなと思います 。他にも何かと人類が分かり合えない様子 が描かれていますよね。途中過激思想に 感下されてエイリアンに攻撃を仕掛けよう とした軍人も描かれましたがあれ自分がね 1番エイリアンと近い位置にいるのに完全 な部害者なのにネットで適当なことを言っ てるだけの過激YouTuberみたいな のを信じちゃうとかあれもねめちゃめちゃ 皮肉ですよね。こうした人類の愚かさとか コミュニケーションの断絶といった意思 疎通の失敗要素は原作にはない映画 オリジナルのものです。それは映画として のエンタメ性を高める戦略であると同時に この物語に社会性を与えていてただのSF ではない当事者意識を持たせてくれるよう な物語として作品のレベルをめちゃめちゃ 高いものにしてるとそう思うんですよね。 ここはね、もう脚本化の力ですよね。 ということでここまでで映画メッセージで 描かれたメインテーマ決定論と自由意思の 両立を言語学と物理学という2つの観点 から解説しました。そしてサブテーマとし て意思疎通についてゲーム理論の観点から 解説してみました。実は音楽に関しても 作曲家ヨハンヨハンソンは始まりも終わり もないという構造を意識して音楽を作って いてピアノの音やボーカルを何十にも重ね て音の始まりと終わりが曖昧になるように したそうです。この奇妙なサントラも映画 を美しく仕上げるすごく重要な要素ですよ ね。これだけの濃厚要素をあれだけ アーティスティックに仕上げてくるって マジですごいですよね。ただそのせいで めちゃめちゃ分かりにくくて癖のある映画 になっているというのも、ま、事実です。 ただね、そのよくわからないせいで評価が 下がっちゃうというのもちょっと悲しい話 なのでね。ま、なのでこの動画でその辺り を解説してさらに味わい深くすることが できればいいなという思いで解説してみ ました。是非ね、もう1回映画見てみて くださいよね。さらに味わい深くなると 信じています。で、これでね、味わい深く なったよという方は映画のBluレイay に付属している特典映像とか、あと最初に 紹介していたメイキングボンですね。 アート&サイエンスオブメッセージ。これ もめっちゃおすめです。原作小説を読み たくなった方は概要欄にリンクを貼って おくので是非読んでみてください。皆さん はこの映画を見てそしてこの解説を見て どう思われましたでしょうか?是非 コメント欄でお聞かせください。高評価と 拡散もお願いします。ということでこの 動画は以上です。このチャンネルでは映画 の解説や考察、映像技術のお話や ガジェットレビュー、自作PCの話をして いくので登録お願いします。それでは次回 でお会いしましょう。 ご視聴ありがとうございました。 うん。

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AI解説動画 https://youtu.be/buweV-p_ZAs

■目次
00:00:00 メッセージ
00:01:34 メッセージのコンセプト
00:04:48 より面白くなる2つの要素:サピアウォーフ仮説
00:08:15 より面白くなる2つの要素:変分原理
00:11:02 タイトルについて
00:13:31 Arrival~到達~
00:18:57 言語学がモチーフのSF
00:21:20 ヘプタポッドの2つの言語
00:25:28 因果関係の認識
00:27:54 サピアウォーフ仮説
00:30:34 ノンリニアな時間認識
00:34:17 物理学的な背景
00:36:19 光の屈折
00:37:21 ホイヘンスの原理
00:39:59 フェルマーの原理
00:43:39 なぜ光は屈折するのか
00:45:33 変分原理
00:47:27 ニュートン力学と変分原理
00:51:08 高度な数学とは
00:53:09 変分原理的な世界のとらえ方
00:54:48 量子力学と変分原理
00:56:41 決定論と自由意志
00:59:17 この映画のサブテーマ
01:00:07 ゲーム理論
01:01:01 ゼロサムゲーム
01:02:13 ノンゼロサムゲーム
01:03:11 ゲーム理論的なストーリー構成
01:06:36 意思疎通
01:09:04 メッセージ/Arrival

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