<3曲聴き比べ>短調と長調で同じメロディーが繰り返される職人芸に何度も聴きたくなる。38年前の今日発売、南野陽子「秋のIndication」〜「秋のIndication」x2、「カナリア」
南野陽子「秋のIndication」
作詞:許瑛子、作・編曲:萩田光雄
① 00:16 「秋のIndication」
② 04:40 「カナリア」(作詞:戸沢暢美)
③ 08:33 「秋のIndication」(一部歌詞違い)
「秋のIndication」はまず作品の構成の奇抜さが目を引く。一度だけ出てくるサビ以外は同じメロディーに繰り返しという点。それがマイナーコードとメジャーコードで繰り返されることで、違うメロディーに聴かせるという技巧が用いられていている点が最大のポイントだ。また、マイナーコードの部分はクリシェによって移ろう気持ちを表しているのも聴きどころ。
歌手本人の好き嫌いは別として純粋に職人芸がキラリと光る音楽として楽しんでほしい。3曲通して聴いても飽きがこない名曲だ。
「秋のIndication」アナログレコード再生
1987年9月23日に発売された9枚目のシングル。
人気絶頂の頃で、タイトル通り秋の気配を感じる季節のほろ苦い青春と少女の成長を歌っている。
この曲は萩田光雄が作曲および編曲を手がけているが、最大の特徴はAメロとA’メロが同じメロディー
でありながら短調と長調で繰り返す点。一聴すると聴き流してしまうが、気づくとその技巧に驚く。
2コーラス目はAとA’を繰り返し、ブリッジのようなサビが一回あって、Aに戻り終わる、というとても
変則的な構成をされている。ナンノの歌唱により爽やかで前向きな別れの歌になっている。
萩田光雄が得意とするクラシカルな雰囲気漂うアレンジによって、ストリングスやA・ギターの音色が
秋っぽさを演出し、品の良い作品に仕上がっている。
オリコン1位、売上約19万枚を記録した。
「カナリア」アナログレコード再生
1987年11月1日に発売された4枚目のアルバム『GARLAND』に収録された曲。
シングル「秋のIndication」のアルバムバージョンの位置付けだが、歌詞はまったく違うものが
つけられた。シングル同様別れを歌っているが、自分をカナリアに見立ててさよならを乗り越えて
大人になると歌っている。「秋のIndication」よりも少し大人っぽい歌詞。
イントロとアウトロがシングルとは違う点と2コーラス目に入る前に印象的なA・ギターが差し込ま
れていること以外は基本は同じアレンジ。ただアウトロは最初に聴くと驚くであろう、ぶつ切り。
マスターテープのミスかと思うほどだが、これが正しい終わり方だとわかるとなぜ?という疑問も
湧いてくる。ちなみにイントロはシングルを作る際にイメージとしてナンノがプロデューサーに
渡した「花のささやき(In un fiore)」のイントロがオマージュとして使われているようだ。
アルバムはオリコンチャートで初めて1位を獲得しているが、全体的にコンセプチュアルで
クオリティが高い。
「秋のIndication」(一部歌詞違い)CD再生
1988年3月21日に発売されたナンノ初の
ベストアルバム『NANNO Singles』に収録された。
歌詞の違いはサビの♪ルルル、が♪きっとに変わっている点。ライナーノーツには「企画上の都合に
より、シングルおよびシングル・カセットと一部歌詞が違います」と記載されている。
想像するに、作詞を担当した許瑛子は「きっと」という言葉を使いたかったのだが、セシルチョコレート
のCMソングのこの曲は、キャッチフレーズ「とけ味、ルルル…」と決まっていたので、最初から歌詞は
ルルルを使わなければいけなかったということではないか、なので作家として、せめて自分なりの言葉
を世に出したかったのではないか、と。このベスト・アルバムとその後のシングルCDのみ、このバージョン
が使われ、現在出ているCDやアナログでは元に戻っている。
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