福島第1原発の構内では、依然、大勢の方が作業に当たっていたが、対照的に、その周辺の福島・双葉町、大熊町などの帰還困難区域では、当然ながら人の姿はなく、すれ違うのも作業関係の車ばかりだった。
国道沿いの電光掲示板も、気温などではなくて、毎時の放射線量を指し示していた。
今回、榎並大二郎アナウンサーが、取材で特に気になったのが、防潮堤の設置が進んでいないという点。
2020年9月にできた防潮堤は、全長は600メートルの鉄筋コンクリート製の壁で、高さは1.7メートルほどと、人の背丈ほど。
この防潮堤は、かさ上げした造成地の上に作られているため、海からの高さは11メートルになる。
ただ、10年前にここを襲った津波の高さは、およそ15メートル。
そのレベルには、高さが足らない。
東京電力は今後、2023年度までに、高さが最大16メートルになる防潮堤を建設する方針だが、2月も大きな揺れに襲われただけに完成が急がれる。
そして今回、福島第1原発を取材して、廃炉までの道のりが、まだ遠いことを示す3つの数字がある。
まず、4,000人。
これは、福島第1原発で作業をしている人数。
コロナ禍でも、依然、1日4,000人にのぼる。
これだけの人が毎日、作業に当たっても、廃炉作業にかかる期間は、最長で40年とされている。
そして、4%。
構内では、今は一般の作業服で活動できるエリアが96%と、立ち入る場所が増えたこと、自由度が増したことで、取材もとてもしやすかった。
ただ、それによって、手が付けられないでいる、残る4%。
この原子炉建屋周辺の過酷な現状が、より際立った。
全身、防護服を着た瞬間に、あらためて重大な事故を引き起こした原発内に、今、自分はいるんだ、という緊張感をことさら強く覚えた。
今回の取材で、前に進んだ部分も見えたが、今、この瞬間も出続けている、汚染水の最終的な処理をどうするのか。
そして、デブリの取り出しに、いつ着手できるのか。
廃炉までの道のりの険しさ、果てしなさについては、7年前の取材で感じたものと全く同じ感覚に襲われた。
加藤綾子キャスター「柳澤さん、10年という月がたっても、原発事故は、まだまだ終わりが見えないことをあらためて感じますね」
柳澤秀夫氏「今、榎並さんのリポートを聞いていても、先が見通せない特に厄介なのはデブリ。これについては一体、廃炉がどうなるのかなということですが、もう1つは、やっぱりトリチウムを含む処理水ですよね。科学的に安全だという説明があっても、それを受け止める人というのはさまざまで、やっぱり放射線という理科の線量ではなくて、1人ひとりの心の線量として受け止めなきゃなかなか、納得が得られるものではないと、われわれは考えなきゃいけないし。もう1つ、福島の原発の問題を語る時に、『福島に寄り添う』という言葉があるんですけど、僕は正直、違和感を感じるんです。福島の問題ではなくて、1人ひとりの問題だという意識を持てれば、単に福島の厄介な問題で、この先どうなるかではなくて、自分の問題だと考えてもらえるようにならないかなということを実感しますね」
加藤綾子キャスター「寄り添うという言葉だと、ひとごとっていうね」
柳澤秀夫氏「優しい言葉ではあるけれどもでも、ひとごとのような響きがどこかにあって。そうじゃなくて、1人ひとりの問題なんだよということを考えてほしいなと思いますね」
加藤綾子キャスター「日本全体の問題と捉えたほうがいいですよね」
#東日本大震災
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