将来の海は、魚よりプラスチックの方が多くなる。
そんな衝撃的な予測をご存じでしょうか。
未来の海を守るために動き出した大学生が港町・函館市にいます。
海からの悲鳴、聞こえていますか。
函館山を望む海岸で2022年6月、あるものが見つかりました。
大量の注射器、その数200本以上。ロシアから漂着したとみられています。
函館市民:「もう帰ります。そういう話を聞いたら怖いので」
心配なのは注射針だけではありません。
海を漂うプラスチックゴミは細かくなり直径5ミリ以下の「マイクロプラスチック」になります。
魚の体内でも見つかっています。
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「拾えました? すごいいっぱい拾えたね」
そんな海の悲鳴に耳を澄ませる、子どもたち。楽しみながら海を守る、港町で始まった挑戦です。
2022年8月、函館市が小学生を対象に開いたある催し。先生役として協力したのが環境問題に取り組む大学生のグループです。
浜に向かい、海の宝さがしが始まります。漂着物を集める「ビーチコーミング」とも呼ばれる取り組み。
代表の高橋あかりさん。
楽しみながら海のゴミ問題を知ってもらおうと、この宝さがしを続けています。
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「未来の地球を守るために、何か動くきっかけになってくれたらいいと思うので」
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「ここらへんすごいなぁ。ゴミばっかり。めっちゃゴミ」
中でも子どもたちの目を引いたのは。
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「ここらへんありそう」
これはシーグラス。
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「瓶が海に流れて、波で削られ丸くなって岸に流れ着いたのがシーグラス。もとはゴミなので、海にあってはいけないもの」
中でも際立って多かったのがプラスチックごみ。
集まった10キロほどのごみの6割を占めました。
参加した人:「プラスチックばっかりなんですよ」
アースデイ函館高橋 あかりさん:「私もプラスチックばかり」
海に流入するプラスチックなどのゴミは年間少なくとも800万トン。
2050年の海は、魚よりプラスチックの方が多くなると言われます。
特に問題視されているのが直径5ミリ以下の「マイクロプラスチック」です。
これが海のなかを大量に漂っています。
海岸に漂着したプラスチックは紫外線などで劣化し細かく砕かれます。
これを繰り返し、5ミリ以下という目には見えづらい細かいプラスチックの粒となるのです。
海のマイクロプラスチックはこの30年間で量も範囲も大きく増え、北海道周辺にも漂流しています。
高橋さんたちのグループは回収した海洋ごみを使ってフォトフレームやコースターなどの作品を作ります。
家に帰っても海の問題を忘れないでほしいと願っています。
参加した人:「シーグラスとか好きなので、拾って作品を作れたらいいなと思って参加しました」
Q:シーグラスきれい?
参加した子ども:「うん」
参加した人:「でもごみだって先生教えてくれたね」
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「今後の海が魚よりもゴミの方が多くなってしまうということがあり、魚がごみを食べちゃって、それがいずれ人間の体にも入ってくると考えたら、海の環境を守ることで暮らしも守れるというのがあって、それをみんなに伝えたくて活動しています」
ひとり暮らしをする高橋さん。
プラスチックを使わない暮らしを心がけています。
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「みつろうラップを自分で作ったものを使っていて、手で温めるとこういうふうにお皿の形になって、密閉してくれるもの」
こちらは布にミツバチの巣から取れる「ろう」を染み込ませて作る、みつろうラップ。
洗えば何度でも使える優れものです。
高橋さんが海のゴミ問題に取り組むようになったのは高校生の時です。
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「クジラがゴミいっぱい飲み込んで、岸に打ち上げられた死がいから、大量のプラスチックゴミが出てきたというのを目にして、関わりたいという思いが強くなりました」
まずはプラスチックを使わない暮らしをしようと考えました。
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「プラスチックに頼らない生活が実現したら、すごい理想的だなと思う」
高橋さんたちはビーチコーミングで採集したものなどで作品を作り販売もしています。
この日は脱プラスチックの一歩、みつろうラップを作ります。
そして砂浜で採取したシーグラスを使ったコースターも。
アースデイ函館実行委員会 高橋 あかりさん:「まずは興味から知ってもらいたいと思っていて。通りすがりの人に興味を持ってもらうには、かわいい、きれい、珍しいものだと興味を持ってもらえる。知らないと行動に移せないと思う。知るきっかけに私たちの活動がなってくれたらいいなと思う」
迎えた販売会当日。
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「どう思います? 」
記者:「きれい、良いと思います」
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「きれいに見えます? 」
手に取ってもらえるのか、作品をどう感じてくれるのか、不安がよぎりますが…。
客:「これ何に使うの? 」
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「みつろうラップといって、繰り返し使えるラップなんです。お皿の上に乗せたら手の温度で温めるんですけど、そうすると密着して繰り返し使えるラップということで話題になっている」
客:「じゃあ、1個ずつ」
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「やったぁ、ありがとうございます」
購入した人:「繰り返し使えるラップ。SDGsということで使ってみようかな」
購入した人:「一生懸命活動している。応援したい」
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「率直に嬉しい。私たちは今あるものを…『もっと頑張ろう』と思う」
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「ごみだ。それプラスチックだ。ごみね、結構あるよ」
海洋ゴミへの関心は少しづつ高まっていると感じています。
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「子どもたち、マイクロプラスチックとか知っててすごいなぁと思いました。私は高校生のときまで知らなかったので、今の子どもたちすごい」
海は私たちの暮らしを映し出す鏡です。
魚よりゴミが多い海になると言われている30年後。
この子どもたちは40代になります。
小学生:「僕たちを大切にするために、海を大切にと書きました。海の生き物を大切にするために、海もきれいにした方がいいと思った」
小学生:「海の生き物がかわいそうだと思った。(このままだと)魚よりごみの方が多くなると思った」
アースデイ函館 高橋 あかりさん:「(ビーチコーミングは)こうやって拾うことによって、海がいかに人工物で溢れているかを身に染みて実感できると思う。これを機に自分の生活を見直したり、それを親にも伝えてもらって、プラスチックをごみにしない生活を送ってもらえるようになったらいい」
この美しい海を未来につなげていくために。
私たちが拾い集めて作るのは、北海道の未来図です。