新型コロナウイルスに感染して入院しているアメリカのトランプ大統領は、突然、病院から車で外出して病院前にいる支持者に手を振ってアピールしました。ただ、完治していない状態での、この行動は決して褒められるものではありません。CNNは「シークレットサービスは大統領を守るために命を危険にさらす仕事だが、コロナに感染している大統領と窓を閉めたまま車に乗るとは思っていなかっただろう」と報じました。トランプ大統領が入院している病院の医師も「マスク着用の有無に関係なく、完全密閉された車内にいれば、ウイルスが拡散して、車内の全員を危険にさらしかねない。外出は常識的とは言えない。不当な威圧がない限り、医師団が許可することはなかったはず」と話しています。
トランプ大統領が退屈しているせいなのか理由はわかりませんが、5日は「銃規制に反対なら投票を」「宇宙軍に賛成なら投票を」「人工妊娠中絶に反対なら投票を」「大幅減税に賛成なら投票を」といった18のツイートを連投しています。トランプ大統領が感染した経路はわかっていませんが、ホワイトハウスで開かれた連邦最高裁判所の新判事の候補を紹介した行事がクラスターにつながったとの見方が強まっています。これまでにメラニア夫人など、参加者7人の感染が明らかになりました。トランプ大統領の感染については、さまざまな疑惑が出ています。例えば感染が公表されたのは、1回目の検査後ではなく、2回目の検査が終わった後だったのではないかや、入院前にホワイトハウスで酸素吸入をすでに受けていて、症状は重かったのではないかといったものです。
トランプ大統領の治療には、一般的に広く使われている『レムデシビル』に加え、重症患者に使用される『デキサメタゾン』、さらに未承認薬の『抗体カクテル』などが用いられています。『抗体カクテル』は、メーカーでの臨床試験が6月に始まったばかりですが、大統領の主治医から、未承認薬の人道的使用を認める“コンパッショネート使用”の要請があったといいます。「大統領をモルモット扱いするな」という意見も出ていますが、本人は「私がここで受けている治療薬で、一部はまもなく発売されるが、はっきり言って、まさに奇跡の薬だ」と賞賛しています。トランプ大統領は近いうちに退院し、治療場所をホワイトハウスに移したい考えです。トランプ大統領は「これまでの体験は非常に興味深く、新型コロナ感染症について多くを学んだ。非常に興味深い体験で、これから皆さんにも話していきたい」と述べるなど、新型コロナウイルスを軽視するようなことや、「中国ウイルス」という差別表現も、今のところは使っていません。
◆テレビ朝日・ワシントン支局の布施哲記者からの報告です。
※感染したトランプ大統領の体調について、さまざまな情報が錯綜しています。何が起きているのでしょうか。
主治医はアメリカ海軍の中佐であり、軍の最高司令官を治療している形となり、通常の患者と医師の関係とは大きく異なります。軍の上官、しかも最高司令官を治療しているわけですから、当然、最高司令官であるトランプ大統領から指示があれば、それに従わざるを得ない指揮命令の関係に置かれています。トランプ大統領は、入院中、写真や動画を発表するなど、「とにかく健在だ」とアピールに必死です。これまで一貫して“強い大統領”というイメージにこだわってきただけに、大統領選を目前にして、そのイメージを維持したいという思惑があるように見えます。トランプ大統領が主治医に対して「大袈裟に説明するな」「退院させろ」と言えば、断りにくいというのは容易に想像がつきます。どこまで正確な病状が伝えられているか、そうした疑念が消えないまま、世界最強の権力を握る人物の健康は予断を許さない状態が続いています。
[テレ朝news]